第19話〜職業試験②〜
ウィィーン__
私は仮想トレーニングルームへ入った。
さっきとはまた違ったタイプの部屋だ……。
これ、本当にさっきと同じ施設内なの?
全自動の扉に、真っ白で広い空間。
正面から入って見える壁の上部には、
デジタル時計が0の状態で表示されている。
「これは……武器?」
扉を入ってすぐのところに
立派な武器が3つ、白いテーブルの上に置かれていた。
[これから、身体測定を行います。
まずは、お好きな武器を1つお選びください。]
武器の種類は、剣・銃・杖だった。
「ど、どれも使ったことない……。」
いきなり選べと言われても……。
そもそも使い方知らないし……
どの武器が私に向いてるかを知るために
この試験受けに来たんだけど……!!?
「好きなの選べはないだろ……!!」
[直感で構いません。10秒以内にお選びください。]
私の叫びが聞こえているのか、
催促のアナウンスが流れる。
見られてる……?
いや、そりゃそうか……。
試験だし、試験監督が居るのは当たり前か。
何も不思議に思うことは無いよね……。
[10、9、8……]
テンカウントが始まる。
どうしよう……この剣は私の力じゃ振れそうにないし
銃は空砲みたいだけど
狙って急所を撃てるか分からない……。
[7、6……]
刻一刻と時間が迫る。
杖?杖ってどう使うんだ?
[5、4、3……]
なんでこんなに焦らせるの……!!!?
[2、1……]
あぁぁぁ!!もう!!!
「コレで!!」
私は、わけも分からずに"杖"を手に取った。
[これより、討伐模擬試験を開始します。
3分以内に悪天竺を倒してください。]
ブォォン__
部屋の中心に現れた巨大なモルモットのような魔物。
鋼のように硬そうなグレーの身体に赤い眼。
巨大っていうだけでも恐ろしいのに、
見た目もメカニックでかなりヤバい。
「杖でどうやって……倒すのよ。」
カチッ、カチッ__
2分58秒……壁の時計が動き出した。
キーキー!!!!!!!!
「わっ……!!!!!こっち来ないでぇぇ!!!!」
私の存在に気付いたモルモットが、
突進するように向かってきた。
と、とりあえず逃げる!!!!
「こう見えて……足は速いんだからねっ!!!!!」
私は、追いつかれないように逃げ回る。
小学生の頃は、毎年マラソン大会で1位を取っていた。
陸上の長距離でも県大会へ行けるくらいの
実力はあった。
まぁ……中学2年からは走る機会がなかったから
今はそんなに速くはないかもしれないけど……。
チラりと時計を見た。
「2分30秒か……。」
このまま、時間ギリギリまで走ろう。
武器の使い方が分からないなら、使わなければいい。
キーキーギィィィギィィィ!!!!
悪天竺が加速してきた。
コイツかなり速い!!!
追いつかれそう……。
でも、まだ。もう少し!!
後、20秒は耐えたい……!
残り時間は1分を切った__
私の心拍数と息も徐々に上がり始める。
「はぁ……っ……はぁ。」
技術もない、力もない私が勝つ方法はただ一つ。
私は、壁の前まで来てピタリと止まった__
「それだけ加速したら止まれないですよね…?
坂道みたいに……っ!!!!」
壁に向かって走ってくる悪天竺を私は避けた。
ドゴォォォン__
部屋中に大きな音が響く。
「私の方がまだ賢かったね。」
壁にめり込み、意識を失った悪天竺。
その鋼の身体にはヒビが入っていた。
加速でさらに圧力がかかった自分の重みに
耐えられなかったのだろう。
ピピピピッ__
丁度3分のタイマーも鳴り、悪天竺は消えた。
「ふぅ……。」
力が抜け、ペタンと私もその場に座り込んだ。
武器も扱えない状態で、急に討伐模擬試験と言われて
どうしようかと思ったけど……。
何とか機転が利いて助かった……。
華毒蜘蛛と対面してたおかげだね……。
あの一件が無ければ、こんな方法は思いつかなかった。
加速しきった身体は、障害物が無い限り止まれない。
あの巨体なら、壁にぶつけて衝撃を与えれば
倒せると思った。
「君のおかげだよ。ありがとう……。」
私はポーチから、お守りに加工した白い花を取り出した。
[以上で職業試験を終了とさせていただきます。
お疲れ様でした。使用した武器を戻し、
1階の受付にて結果通知をお受け取りください。]
最後のアナウンスが流れ、
仮想トレーニングルームの扉が開いた。
壁大丈夫かな?
少し心配になり、部屋を出る前に確認したが
何事も無かったかのように綺麗に修復されていた。
「……なんでもありじゃん。」
この世の技術は、果てなど無いくらいに進化していた。




