第13話〜わっさん〜
わっさんの指示通りに進み、
辿り着いた場所は海近くの展望塔だった。
ここまで来るのに徒歩で1時間かかった……。
しかし、歩いた達成感というか…
ここからの景色は最高だった。
海も街も広く見渡せ、リブリー・マージュには
どんな施設や建物があるかもひと目で分かる。
「凄い……!!!わっさん見て!あそこ!」
私は、海で跳ねているイルカを指差した。
「あれは、角海獣だな。
よく見てみるといい。角が生えてる。」
「ほんとだ…!」
「アイツらも害はない。
ただ、環境を破壊されると凶暴化する。」
凶暴化……夜猫冥神を思い出す…。
技術化がどんどん進むにつれ、環境破壊で苦しむ自然。
今ある自然だけでも、自分は大切にしていこうと思った。
「あの大きい建物は何?」
「あれは、学校だな。」
学校……?
現実でも学校はあるのに、ゲームで何を学ぶんだ?
「アストラニア・アカデミー。
魔法学や剣術を学ぶところだ。かなうも通っていた。」
なるほど……そういう学校なのね。納得した。
詳しく聞くと、1年で卒業できる超短期制の学校。
金さえあれば誰でも入学できるよう。
学科はなく、共通の授業を
毎週火曜日か土曜日のどちらかに3時間受けるらしい。
「通っておくとスキルや資格の獲得、
クエスト討伐時の"報酬額アップ"も目指せる。」
報酬額アップ……!!聞き捨てならない言葉であった。
「ただ、今は募集終わってる。
来年の1月からの募集に申し込むしかないな……。」
そっかぁ……。
残念だと思いながら、私は隣の建物を指差した。
「あれは?コロッセオみたいな作りの建物」
「そのまんまだ。闘技場。
半年に1回"ギルド対抗戦"があって、そこで行われる。
あと、音楽フェスとかもたまに。」
ギルド対抗戦かぁ。
AYAKASHIの皆さんの連携技凄かったし、
優勝とかしてそう。
「真ん中にあるのが広場で
その左右にも建物を挟んで一つずつ広場がある。
祭りの時は、全部の広場が使われて大賑わいだ。」
へぇ…!お祭り…楽しそう!
「あそこが俺たちのいたアトリエ……かなうの家。」
「うんうん。」
私あそこから歩いてきたんだ……。
近いようで遠かったなぁ。
「アトリエから左に行ったところに、鳥居が見えるのわかるか?」
「周りが木で囲まれているところ?」
「そうだ。あそこは、まゆりの拠点。巫神社だ。」
「まゆりさんの…!」
ここからは見えないけれど、
敷地内には露天風呂もあるらしい。
「かなうも俺もダメな時は、まゆりを頼る。
それがいい。アイツは信頼できる。」
「分かった。」
まゆりさんとは同い年みたいだし、
これから仲良くなれたら良いな。
あ、霧香さんとも仲良くなりたいな……。
名前はよく聞くけど会ったことはない。
アトリエの地下に居るみたいだし、
これから私は同じ拠点の同居人として
霧香さんにもお世話になる身……いつか会えるかな?
「あそこは、ライブ会場で……あっちは公園。」
わっさんがリブリー・マージュ区域にある
色んな場所を展望塔から私に教えてくれた。
景色や人間関係、魔物の存在。
知れば知るほど、私はこの世界の魅力に
ハマっていく感覚がした。
「素敵な景色だね。」
しかし、この街かなり広い。
ちゃんとマップ覚えなきゃ迷子になりそうだ。
「ここも良いが、俺の住んでたところも良い。」
わっさんは、集会所側にある海を差した。
そっか、区域はリブリー・マージュだけでは無いんだ。
「あの奥にボンヤリと島がみえるだろ。」
「うん。見えるよ。あそこにいたの?」
「ああ。かなうに見つけて"もらえた"。」
私は少し、わっさんの言葉に引っかかった。
見つけて"もらった"ではなく、
見つけ"もらえた"と言ったのだ。
それはまるで、かなうさんに見つけてもらうのを
待ってたかのような発言だ。
「でも、俺のせいで……。」
「……?」
そこから先、わっさんは何も話さなかった。
何があったのだろう__
気になりはしたけど、かなうさんとわっさんの
プライベートな話なのかもしれない。
わっさんに何も聞くことは出来なかった。
そのうち話してくれたら良いな……なんて。
「風が強くなってきたね。降りようか。」
わっさんを抱えたその時、私の帽子が空へ舞った。
帽子を掴もうと手すりに足をかけ、必死に手を伸ばす。
「よし…!取れたっぁあ……っあ……!?」
「あ……俺もダメか……」
まずい……そう思った時にはもう落下していた。
責めてわっさんだけでもと思い、守ろうとするが、
突然私の腕からすり抜け、私の下に飛び降りた。
そんなことしたら、わっさんが潰れちゃう……!!
「膨張風船」
ボフッ__
「へ……?」
わっさんが風船のように大きく膨らみ、
落下した私の身体をクッションのように受け止めた。
「ええええええぇ?!!!」
大きくなった……?!!!!
「俺にも一応魔力はある。
魔物だからな。だが、初めて使った。」
攻撃性がないって聞いてたから、
てっきり魔法も使えないものだと……。
それより、まずはお礼だよね。
「ありがとう、わっさん。助けてくれて。」
「どうってことない。うつつも俺を守ろうとしてくれた。
だから、試してみたんだ。」
わっさんは、気にするなと言った。
「俺は攻撃魔法は使えないが、
目の前の命を見捨てることはしない。
__俺は失う怖さが分かるオスだ。」
いやいや、この魔物カッコよすぎるだろ。
飼い主に似るというか……
発言もどこかかなうさんみたい。
「かっこいいよ。ありがとう。」
私は降りて、わっさんの背中を撫でた。
「ところでうつつ、腹が減らないか?」
ギュルルルルというお腹の音と共に、
元の大きさへと戻っていくわっさん。
「ふふっ。そうだね!ご飯屋さん探しに行こうか!」
道案内お願いねと、私は再びわっさんを腕に抱えた。
「この辺の海の家は、夏しかやってないから
広場の方へ行こう。」
そうして私達は空腹に耐えながら、
この後また1時間歩いた。




