第11話〜歓迎②〜
「ふふ、お困りですね。うつつ様。」
「まゆりさぁぁん!!」
マスターの手伝いで配膳をしていたまゆりさんが、
料理を持ってこちらへ来た。
あまりのタイミングの良さに、
まゆりさんの背後に後光が見えた気がした。
かなうさんが、まゆりさんのことを
好きになる理由がわかる。私も好きかもしれない…。
「海老とイカのマリネサラダと"フィッツフライ"です。」
「フィッツフライ……?」
聞いたことの無いその料理は、
一口サイズの揚げ物のように見える。
「白身魚を解してナッツを混ぜ、一口サイズに
小さく丸めたら、パン粉・小麦粉・卵を絡めて揚げた
マスターオリジナルのおつまみです。
お好みで、甘辛ソースか塩コショウをかけて
食べてくださいね。」
「俺これ好きー!」
そう言い、実くんはフィッツフライを一つ手に取り
ソースをつけて食べていた。
「うつつ様もぜひどうぞ。」
お言葉に甘えて、一つフォークに刺して食べてみた。
「美味しい……!!」
白身魚がふわふわで優しい味だからこそ、
このカシューナッツの少しカリッとしたアクセントが
効いていて凄く合う!
フライの衣もサクサクで、好みで味変も出来る。
本当におつまみにピッタリだ。
酔ってるかなうさんも、パクパク食べている。
「あ……可愛い……」
カシャ__
はい、今撮りました。
この人、かなうさんのパクパクショット頂いてるよ。
しかも、苦丁茶サイダーで自爆して倒れ、
映り込んでしまった紫雨さんを
消しゴムマジックで消してます。
「……消してる……。」
しっかり者ではあるが、まゆりさんもまゆりさんで
中々にパンチの強いキャラの濃さである。
「はっ……!忘れていました、わっさんの事でしたよね。
すみません……珍しい姿のかなう様に興奮して、つい。」
「あ、いえ……。」
珍しいなら仕方ない行動だ。
かなうさん、あまり人前でお酒飲まなそうだしなぁ〜。
「腹減ったぞ、かなう。俺の飯は何処だ。」
実くんの手の中にいた"わっさん"という名の魔物は
いつの間にか、かなうさんの頭の上に乗っかっていた。
「この子はかなう様の相棒です。
この世界では、攻撃性のない無害な魔物は
申請手続きすることで、ペットとして飼えるんです。」
先程、うつつ様が行かれた集会所で手続き出来ます。と
まゆりさんが説明してくれた。
移住登録申請と"不思議な契約"を結んだところか。
「そうなんですね。」
なんでも、ここでの出来事やゲームシステムを
未プレイの第三者へ話す事は禁じられているみたい。
その中には、SNSでの呟きも禁止されている。
ネタバレ防止のためなのかな……?
手元にあるスマホで
ファントム・ストーリーのホーム画面を確認すると、
私が普段使用しているChuitterアイコンもあるが
タイムラインへの呟き機能は使えなくなっていた。
__完全に見る専用だ。
少しモヤっとした。
今日も沢山嫌なことがあった。
私にとっての精神安定剤が突然失くなれば、
気も狂いそうだった。
「わっさんは、かなう様の相棒でありながら
彼女の心の支え。かなう様がそう教えてくれました。
魔獣使いでは無い私達まで、わっさんとの会話が
出来るのもきっと何かあるのだと思います。」
「俺は特別な魔物なんだ。だから話せる。」
口癖なのか、
わっさんはずっと特別な魔物だと主張している。
「そういえば……今日、華毒蜘蛛を倒した時も、
最後魔物が喋ったんです。」
「華毒蜘蛛を倒したんですか?!1人で!!?
しかも喋った?!詳しくお願いします…!」
食い気味に私へと体を詰め寄るまゆりさん、
その手にはメモとペン。
「え……と…そのなんというか…。
スキルが発動したんです。」
私は、スキルのことも話した。
露の雫、使い方はよく分からなかったけど
スキルが発動したら魔物が浄化するように消え、
最後消え切る前に「ありがとう」と聞こえたこと。
「ありがとう……不思議ですね。
倒されているはずなのに、違和感があります。」
考え出したら止まらないわ!とマスターの手伝いも忘れて
会話に夢中になってしまっているまゆりさん。
追加できた大量の骨付き肉を、
美味い美味いとモグモグ頬張るかなうさんと実くん。
……そしてわっさん。
気絶して倒れたまま、ずっと放置されている紫雨さん。
なんだかもうカオスな歓迎会だった……。
でも、そんな空気感が
私の孤独だった心を埋めてくれるくらいには
__とても居心地が良かった。




