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現実的ファンタジア〜綺麗で完璧な世界で、私たちは闇と向き合う〜  作者: KAИАU
第1章【ようこそ"綺麗"で"嘘"だらけの世界へ】
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第7話〜蠱毒〜※蜘蛛苦手な方注意

あの時、私は好奇心が抑えられず

かなうさんの手を離してしまった。


その選択が間違えてたなんて


「誰も思わないじゃん!!!」


グァァァア゙ァ゙……


今度は巨大な蜘蛛の背中の上で捕まっている。

きっとこれから蜘蛛の巣窟に連れてかれ、

捕食されるんだろう。


「うぅ…生き延びてもトラウマになりそう。」


蜘蛛を見る度に思い出しそうな程の

緻密なデザインと気味の悪さだった。

 

夜猫冥神(フェリノクス)と違って

花の甘い香りがして、見た目も綺麗なんだけど……

蜘蛛の形をしているのが良くないわ……。


「誰かァァーーー!!!!!」


洞窟の中ではよく声が響くが、ただそれだけ。

誰も来ない。


身体を蜘蛛の糸で丸められ、

雪だるまのような姿にされた私はとても惨めだ。


身動きも取れないし、どうすれば……。


帽子も洞窟の前に落としてしまったし……。


「なんだか……クラクラしてきた。」


絶望的な状況で新たな絶望が重なり始める。


この甘い臭いのせい__?



かなうさんの言うことちゃんと聞いとけばよかった。

このまま私、誰にも見つからずに死ぬのかな……。


そしてクラクラは、グラグラに近い感覚になってきた。


蜘蛛の糸で丸くなってるからバランスが取りにくい……!けど!この道、出口の方に向かって下り勾配になってる!


糸がクッションになってるし、

このまま蜘蛛の背中から横に倒れながら降りれば……!


「うおぉぉああ!!転がったぁぁぁぁ!!!!!!」


待て待て、これ止まれる?!!?


思考はギリ働くが、目が回りすぎて

まともに周囲を見ることは出来ない。


ただ、どんどん加速していく私の体にどうやら

巨大蜘蛛も追いつけていない様子ではある。


「吐きそお゙お゙ぉぉぉぉ」


こんなに回転したのは人生で初めてだ。

 

しばらく回り続けていると、

薄暗い洞窟から外へ出た気配がした。

 

洞窟出ても転がり続ける私の身体。

少し気を強く張り、回った目で周囲を見渡すと


連矢(ラピッド・ショット)

 

ピュンピュンピュン__

私に向かって3本の矢が飛んできた。


「ひぃぃぃ!!!!!!!」


暗殺……!!!!??


なんでこんなに狙われてるの????

一体どんな確率で私は不運を招き入れてるんだ……。

 

弓が突き刺ささるまであと数センチ__


私は痛みに備えて目をぎゅっと瞑る。



「……。」


そうだ、これはゲームだったんだ。

私は冷静に考えた。


刺さったとしても、痛みがあるはずなんてないよなと

恐る恐る目を開いた。


「いや、刺さってないっ……!!!」


なんやねん!!と思わず芸人顔負けレベルの

渋い顔でツッコんでしまった。


飛んできた三本の矢は、私の身体の手前の地面に

突き刺してあるようで、身体の回転も止まっている。


これは……助かった……?


いや、まだだ。

蜘蛛の糸を何とかして解かなければ。


グァァァア゙ァ゙……ア゙ア゙ァァァア゙ァ゙!!!!!


「来たか。華毒蜘蛛(エリクランチュラ)。」


何処かから聞こえる人の声。

中性的で綺麗な声をしている。


ア゙ア゙ァァァ!!!!!


……それより、さっきの巨大蜘蛛!!!

もう追いついて来たの……?


蛇牙一閃(スネーク・ショット)


蛇のようにも見える一本の矢が、鋭く蜘蛛を刺した。

 

「猛毒には猛毒__

"蠱毒(孤独)な"魔物によく似合う。」


ア゙ァ゙ァァ!アアゥゥア……グッ……!!!


矢が刺さった華毒蜘蛛(エリクランチュラ)の身体から煙が出た。

その身体に咲いている綺麗な花達も枯れ始めている。


謎の声が言ってる言葉の意味はよく分からないが、

放った矢は巨大蜘蛛によく効いているようだった。


「持久戦は嫌いじゃない。」


……私も、この謎の人物の独特な雰囲気

嫌いじゃないかも。


敵か味方かは置いといて、今の私は華毒蜘蛛(エリクランチュラ)

倒してもらえればそれで良いと思ってる。


早くこの慣れない緊張感から解放されたい……。


ヴァァア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!!!!


華毒蜘蛛(エリクランチュラ)は痛みに耐えるように

大きく叫ぶと、糸を吐き出し、私の事を捕まえた。


「ちょっと?!!!!」


こっちは油断の前に身動きもとれないというのに……!!人質にするなんて卑怯すぎる!!!!


まるで、道徳から外れ

"退廃した人の心"を映し出したような行動。


この蜘蛛……感情があるように見える……!


「あぁぁぁ!!!折角止まったのに……!!」


捕まえた私を大きくブンブンと振り回す。

衝撃でまた吐きそうだ。


それと…この臭い……煙が出てるところから

アンモニアのような刺激臭がする。

あの甘い臭いは何処へ。


そのキツい匂いのせいか、目も染みる……。

 

「その煙、毒だから気をつけた方がいい。」


未だに姿を現さない声の主が言った。


「それ先に言って?!!!!!」

「すまん。」


今日は散々な一日だ。いや、今日もか。


あー……しんどすぎて涙出てきたわ。

ううん、違う。これは毒のせいかもしれない。


[スキル:露の雫(デュー・ドロップ)を解放しました]


直接脳に語りかけられるように、

スキル解放が告げられた。



そんなこと言われたって……どう使えば良いかも、

何の効果があるのかも分からないのに。


でも……やらないよりはマシか。


露の雫(デュー・ドロップ)っっ!!!!!!!」


もうどうにでもなれ!!!!


目が染みて止まらない涙を零しながら

私も皆と同じようにスキル名を叫んだ。


ポチャン__


「……え。」


巨大蜘蛛の身体に落ちた涙が、

少しずつ蜘蛛の身体を光の雨で浄化していった。


私の身体に巻き付いていた蜘蛛の糸も

解けるように消えていく。


グァァァ……アァ……あ


自分でも信じられない光景に呆然とするしかなかった。


「……あり……が、と……う」


姿が消え切る前に、蜘蛛が寂しそうに……

でも、どこか嬉しそうに喋った。


その言葉を聞いて、私はまた涙を一つ零す。


「倒されて消えてるのに

ありがとうって意味わかんないよっ……!!!」


そんな私の叫びは、華毒蜘蛛(エリクランチュラ)にはもう届かない。


こだまとなって洞窟の中へと吸い込まれて消えてった。

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