ごめんね、
「ついてきて」と私は慎二くんの腕をぐいっと引っ張った。
「え? あ、うん」
たったったと軽い二人の足音が、日が沈む中で聞こえる。
「ここ」
「へぇ。すごい。こんな所にあったんだな」
私達が来た場所は夕日が見やすい丘だ。
「見せられてよかった」と私はにこりと笑った。
「暗くなっちゃうから、早く帰ろう」
「そうだな」
たったったとまた足音が聞こえる。
今まで辛かった日々が何も無かったかのようにさーっと綺麗に消えた。
次の日、慎二くんが欠席した。
昨日、寒い中で夕日を見たから風邪ひいたのだろうか。
自分が最低に見えてきた。寒い中、夕日を見るだけに連れて行った自分が。
次の日もまた次の日も慎二くんは欠席した。
「自分って、最低な人間だな」
帰り道、夕日を見た所に行った。
一人で見る夕日は少し寂しい。
もう少しで日が沈む。その時、「いた。結月」と慎二くんの声が聞こえ、私は振り返った。
「し、慎二くん⁈ か、風邪は大丈夫なの?」と私は早口で言った。
「風邪はもう良くなったから心配しなくて大丈夫」と慎二くんは言い、私の隣に座った。
「よかった」と私は微笑んだ。
日が沈み、辺りが暗くなった。
「暗くなったから帰ろうか」
「うん」
「風邪でもひくと困るからな」
次の日、慎二くんは復帰した。
平和な日常が続く。元の世界でもこんな日が続けばいのに。温かい人がいればいいのに。
もう、帰らなくてもいいかも、と思いながら廊下を歩いた。
「あれ? 何で廊下にいるんだっけ? 何をしようとしたんだっけ?」と呟く。
私のあるあるだ。思い出そうと教室に急いで戻ろうとし、方向転換しようと思ったその時、ドンっと人にぶつかった。
やばい。人にぶつかってしまった。今すぐ謝らないと。
「ごめんなさいっ」と深く頭を下げた後、顔を上げると慎二くんだった。
「大丈夫だよ」と慎二くんは微笑んで言った。
私の顔は真っ赤になった。
「じゃあっ!」と一礼し、咄嗟にその場から離れた。
家に帰り、私は「慎二くんめっちゃいい匂いしたけどどんな洗剤使ってるのかな」と、ひとり呟いた。
話は変わるが、前までは学校行きたくないと思っていたが、今は学校にとても行きたくなっている。しかも慎二くんのことを“推し”ではなく、“好きな人”だと思っている気がする。
すると、「結月ー。洗剤切れたから買ってきて」と母に頼まれた。
私は近くの店に向かった。
「あれ? どこだっけ?」ときょろきょろしながら歩く。
探しながら歩いていると、目の前にあった。
「あった! これだ!」
その先には慎二くんらしき人がいた。
バレないように行こうと思い、そろりそろりと歩く。
後ろを通ろうとした時、「あれ? 結月」と普通にバレてしまった。
私が後ろを通ろうとした時、それと同時に慎二くんが立ち上がり、振り向いたら私が。という感じだ。
あ、そうだ。廊下でぶつかった件の事をしっかり謝らないと、と思い、「廊下の時、逃げちゃってごめん」とうつむいて謝った。
「いや、大丈夫だよ」と慎二くんはいつもの笑みを浮かべた。
……
この時間が気まずい
「それより、結月はなぜここにいるんだ?」
「親に頼まれて」
「俺も」と慎二くんはにやりと笑う。
「そうなんだ。じゃあ。また明日」と私は話を切り上げた。
慎二くんは戸惑っていた。




