キミの言葉で、元気でたよ
「よろしくー!」
前はそういう声が聞こえた。
前と言ってもオタクになる前の話。まだ私がファンで正常だった頃の。だけどハマりすぎてしまった。
「結月ちゃんってウザくない?」
「分かる。オタク強調しすぎでしょ」
「それな」
一学期の終わり頃、そんな声を聞くようになった。
「大丈夫だよ。そんな声、気にしないで普通に生きよう」
私の〈元〉味方だった由美が言った言葉だ。
私は昔と違って「ウザい」という言葉だけで病む。最近は相手の目を気にする。
「普通」って何だろう。
推しを推して、推しの動画を見て、推し活を楽しむことが私の普通。
相手の目を気にせず、陰口も無視するのが普通? よく分からない。
二学期の中間くらいには悪口ばかり聞こえた。いや、悪口しか聞こえなかった。
「うわ……今日も来たよ」
「来ないでくれるかな?」
辛い。助けて。味方が欲しい。
「大丈夫だよ」
そっと私の背中を撫でた由美の声が懐かしい。だけどその由美はもう、敵だ。味方なんて誰もいない。
由美が敵になった日──
「…………………これはどうかな?」
「由美、天才か?」
「えへへ。大体結月ちゃんの事は知ってるから」
「由美がいて良かった。あいつ、由美が敵になってどんな反応するかな?」
「噂をすればあいつ」
「由美、おはよう」
由美は私から離れていった。
「ナイス、騙し」
ああ。由美は前から敵だったのか。じゃあ、私は味方がいなくなる。あいつらに勝てない。
辛い。
一番信用してた友達が裏切るなんて。
誰か。誰でもいいから助けて。
最初からやり直したい。
オタクにならなければ良かった。
「はっ!」
目が覚めた。嫌な夢だ。元の世界にいた頃の。
何か顔の辺りが冷たいな、と思い、顔を触った。
「あ……」
泣いていたんだ。
私はすぐに涙を拭い、着替えて、朝食を食べて外へ出た。
今日はあまり乗り気ではない。
元の世界の出来事を思い出してしまったからだ。
戻ったとしてもまた辛い日々の繰り返し。
本当にどっちが良いのだろう。戻ったら家族とまた楽しめる。だけど学校は辛くなる。頭が混乱してきた。
あれ? 私、何考えてるのだろう。ここはどこだろう。
その時、「結月、おはよう。大丈夫か?」と慎二くんが心配してくれた。
その言葉で私は現実に戻された。
「あ、おはよ。大丈夫。気にしないで」と私はあははと笑った。自分でも分かるくらい嘘っぽさが出ている。
「そうか……ならいいけど……」そう慎二くんが言いかけた時、私は「本当は、違うんだ。戻って良いのか考えていたら混乱してきて」と本当の事を話した。
慎二くんは一回黙り込んで「先の事は考えない。暗くなるだろ?」と言った。
「うん。そうだね」
慎二くんの言葉で少し励まされた気がしたが、授業内容が頭に入ってこない。
「先のことは考えるな」と言われたけれど気になる。
私は戻れるのか。もし、戻れたらどのような生活をするのだろうか。
何も考えずに黒板をぼーっと見つめていると、チャイムの音がした。
もう、六時間目なのか。時間の流れって本当に早い。
本格的な冬になったので、帰りも凍え死ぬのではないかという程寒い。
私は大きなため息を吐く。息が白くなる。
「今日は昨日よりすごく寒いな……」と私は誰にともなく呟いた。
すると「そうだな」と後ろから慎二くんの声が聞こえた。
「え⁈」
びっくりした。
「ごめん。脅かすつもりはなかったんだ」
「大丈夫。独り言、聞いてたの?」
「ちょっとだけ」
慎二くんはウインクしながら親指と人差し指で“ちょっと”を表していた。
独り言を慎二くんに聞かれてた⁈ 恥ずかしい内容ではないのに恥ずかしく感じる。私は顔が真っ赤になった。
「大丈夫?」
「大丈夫。え、えっと……話が変わるけど、一日って早いね」
「そうだな」
会話が終わった。
何話せばいいのだろう。
やはりネタが無い。
日が沈む。
そうだ! こうすれば良いんだ!
学校……めんど
まだ始まらないけど




