ありがとう
今日は訳あってぼっち飯。何があったのかと言うと由依ちゃんが休み。遥ちゃんは先生に呼び出しを受けたからだ。
男子と食べるのは気まずいのでひとり、木陰で食べることにした。
母が愛情を込めて作ったお弁当。だけど味が薄い。アニメや漫画でしか見た事がなかったぼっち飯。一人で食べるってこんなにも味がしないし、寂しいんだ。と感じた。
屋上には慎二くん達がいる。
私はそこをぼうっと見た。
「あ」
慎二くんと目が合った。私は思わず目を逸らした。
*
目が合った。
あれは、きっと結月だ。何故一人で食べているのだろうか。淋しくないのだろうか。
「ごめん! 抜ける!」と俺は言った。
「何で?」と淳司に言われた。本当の事を言う訳にはいかない。いや、言ったら言ったで気まずいし。
「えーっと、用事を思い出した」と誤魔化した。
上手く誤魔化せただろうか。少し不安に思ったがそれどころではない。結月が……
「大事なんだろ? 今すぐ行って来なよ」と光は俺の用事の内容を分かっている言い方をした。
*
「結月!」
「慎二くん……? なぜここに?」
まさか、私が一人で食べているところを見たから……?
「それはこっちの台詞」と慎二くんは言った。
「色々事情があって……」
私は由依ちゃんと遥ちゃんがいないことを話した。
「そっか。だったら一緒に食べよう」
この会話を光くんと淳司くんが見て、聞いていた。
私は「うん。ありがとう」と言い、「好き……」とぼそっと呟いた。
「聞こえてる」と慎二くんは微笑みながら言った。
私は辺りの景色を見ていた。すると「いただきっ」と慎二くんは、私の弁当に入っていたエビフライを箸でつまんだ。
「ちょっと。それ、大好物なんだよ」と慎二くんの弁当に入っていたミートボールを食べた。
「食べ物交換だな」
「うん」
私と慎二くんは笑いながら言った。
テストが返された。
休み時間、私は慎二くんの席に行き、今回のテストについて話した。
「やば……あこれ怒られる系かも……慎二くんは?」
慎二くんは何も言わなかったが、やばそうな顔をしていた。
「勉強しないと……だけどやる気が出ないんだよねー」
「勉強会開く?」と慎二くんが提案してくれた。
すると、その話を盗み聞きしたのか「おっ。いーなー!」と光くんが話に入ってきた。
「勝手に会話に入るな」と淳司くんが止めた。
「ごめん。ごめん。じゃっ、二人で楽しんでねー」と光くんは自分の席に戻ろうとした。
すると、慎二くんが光くんの肩をぐいっと引き「光。勉強会なんだからもっと人数必要だろ。嫌ならいいけど入って」と言った。
「いいのか? 本当に」
「うん」慎二くんは笑った。
慎二くんの笑顔は前よりも自然な笑顔だった。
今日はテスト勉強会だ。まず数学がとてもひどい。
見たくない数字だ。
全体順位は二桁取ると母と約束したのに。
はあ。だるいけど推しである慎二くんの笑顔でどうにかなるだろう。
タイミングよく、慎二くんが来た。
「結月。おはよう」
「おはよー。あのさ、テストの結果見せて」
少し気になった。
「え、あ、うん。いいよ」
全体順位も男女別順位も二桁で、上位。凄すぎる。
「すご……」と私は声を漏らした。
「そうか?」




