悪い日? いい日?
私は段々と眠くなってきた。
もう、限界……
私は眠気に負け、寝てしまった。
「ーーー」
慎二くんの声が遠くから聞こえるが、何を言っているのか分からなかった。
目を開けると私はおんぶされていた。
「はっ⁈」
びっくりしすぎて落ちそうだった。
「起きたか」
「うん///それはいいから降ろしてくれる?」
このままで良いのだが、流石に恥ずかしい。
大きなあくびをして「眠……」と言う。
「全然寝てなかったからな」
「まあ……ちょっと……」
今日は悪い日だ。
ぶつかったり、人間違えしたり。
「……慎二くんが出るアニメの主題歌聞こ」
誰もいない場所──プレゼント渡したあの階段の踊り場でうずくまって音楽を聴く。
すると、階段を降りる音がした。そこを見ると慎二くんがいた。
「あ。結月。何でここに?」
「色々あって」
「話、聞こうか?」
「大丈夫。特に何もないから」と私は誤魔化すように笑った。
「結月。隠すな。バレバレだ。何かあったのか?本当に」慎二くんは真面目に言った。
「……実は、人にぶつかったり、人間違えしたりしたんだよ。なんか、人に話すほど重要じゃないけど」
「大丈夫。人は間違いだってする。間違ったことのない人なんか多分いない。その間違いが成功に繋がるかもしれない。間違ってもいいんだ。だから大丈夫」と言われた。
「ありがとう」私は涙が溢れてしまった。
元の世界にはこんな優しい人なんていなかったのに。
優しく接してくれるのが嬉しくて。
「えっ……結月……泣くなって……」
慎二くんはどう接すればいいのか分からなく、あたふたしていた。
「ごめんね。最近、涙もろくて……」と私は涙を拭い、笑いながら言った。
安心したのか、慎二くんもつられて笑った。
休日「あー。なんかいい事無いかなー?」と近くにある商店街をぶらぶらと歩いていた。
すると「お客様! 運試しやりませんか?」と声をかけられた。
声がした方に目を向けると、白い台の上に真っ赤な抽選器が三つ、置いてあった。
何が当たるのかな、と見てみると、一等は温泉旅行券グループチケットが当たるらしい。
一等欲しいな、と考えていたが、誰と行くのだろうか。
やっぱり家族だろうか。慎二くん……いや、絶対無理だ。一等なんて夢のまた夢だ。
私はとりあえずやってみるか、と思い「はい! やります!」と自信満々で答えた。
がらがらがらとゆっくり回す。
出たのは……一等⁈
向こうの人がからんからんと鐘を大きく鳴らす。
「お客様おめでとうございます! 一等です!」
グループチケット。当たってしまった。
嬉しかったが、驚きでいっばいだった。
「あ……ありがとうございます……」
どうしよう。誰と行こうか。とりあえず友達を誘おうかな。
次の日、「二人で温泉行かない?」と友達に聞いた。
「行きたいけど親がダメって言うかも……」
「ダメだと思う」
「ちょっと予定が入ってて……」
友達数人に聞いてみたがダメだった。
よし、最終手段だ。慎二くんに訊いてみよう。
「ねぇ、温泉グループチケット当たったんだけど。みんなダメだって言われて……暇な人がいたら教えて欲しいんだけど」
慎二くんは嫌な顔ひとつせずに「分かった。聞いとく。」と言った。
グループチケット。最大十人まで。
誰と行くんだろう。そう考えながら毎日、ぼんやりと過ごしていた。




