表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の後継者: 覇者の覚醒  作者: Hideo
偉大な旅の始まり
7/220

7 – すべてを変えた選択

「少年たち、我々が用意したテストは、簡単にクリアできるものだ」シゲルは門の前に立つ少年たちに向かって言った。


「彼の『簡単』って、絶対にほとんど不可能なことだよな」ハルトが冗談めかして言った。


「何か言ったか?」シゲルが問いかけた。


「いや、何も…」ハルトはとぼけた。


「市の中央にある大きな城が見えるか?そこには二つの旗が、それぞれ最も高い塔に置かれている。その旗を取って、私のところに持ってくるのが目的だ。制限時間は日没までだ」シゲルは説明した。


「今回は間違って考えてたみたいだ」ハルトが言った。


「一見簡単に思えるが、途中にはいくつかの障害を設けている。そして、時間は決して余裕があるわけじゃない」シゲルは言った。


「さっきの発言、全部取り消しだ…」ハルトが言った。


「早く行く方法、何かアドバイスはあるか?」カツキはリクシスに尋ねた。


「ちょっと待って…」リクシスが答えた。


「ヒントをあげるな。彼らは自分たちで成し遂げるべきだ」シゲルがリクシスに言った。


「わかったわ…頑張って、二人とも!」リクシスは笑顔で言った。


「ありがとう」カツキが答えた。


「準備はいいか?」シゲルが尋ねた。


「はい!」カツキとハルトは同時に答えた。


「行け!」シゲルが叫んだ。


そして二人は全速力で街の中へ駆け込んだ。

「二人とも本当に速いわね」リクシスは少し驚いた様子で言った。


「私の弟子たちを侮るな」シゲルは胸を張って言った。


「ところで、一つ聞きたいことがあるんだが。玉座の間に現れたあの大きな箱、まだそこにあるのか?」シゲルが質問した。


「ええ、驚いたことに、ドワーフたちでさえ開けられなかったのよ。昨夜、あなたたちと会う直前、その箱が奇妙な音を立てていたの。何か声みたいだったけど、何を言っているのかはわからなかったわ」リクシスは昨夜の出来事を思い出しながら言った。


「変だな。そのことを六王国の評議会に報告したのか?」シゲルが尋ねた。


「いいえ。誰かに報告しようとした時、偶然あなたたちに会ってしまって、そのことで頭がいっぱいになって、すっかり忘れてたわ」リクシスはシゲルの視線を避けながら言った。


「やっぱりな。あの箱を彼らが見つけないことを祈るしかないな…」シゲルは不安そうに言った。


「エルフの魔法で封印されている扉を見つけられるとは思わないわ。ただの少年たちがその封印を解くことなんてできないわよ」リクシスはあまり心配そうではなく言った。


「そうだといいが…」シゲルは遠くにいる少年たちを見ながら答えた。



しばらくして、カツキとハルトは最初の障害に遭遇する。

「これ、何だ?」カツキが尋ねた。


「どうやってこんな大きな裂け目を町の中に作ったんだ?」ハルトが疑問を呈した。


「反対側までかなり距離があるし、跳んで越えるのは無理だろう」カツキが言った。


「どうやって渡ればいいんだ…?」カツキは考え込んだ。


「回り道をする?」ハルトが提案した。


「町と裂け目の広さを考えると、そんな時間はないと思う」カツキが答えた。



数時間後:

「くそ、どうやってこれを越えるんだ?」ハルトが叫んだ。


すると、ハルトが石を裂け目に向かって蹴った時、すべてが幻覚であることに気づいた。

「信じられない!」ハルトが叫んだ。


「行こう、まだ時間がある。急ごう!」カツキが言った。


二人はその後、他の罠を全力で突破し、城にたどり着いた。

「この場所、思ってたよりも大きいな…」ハルトが言った。


「ここで別れるぞ、ハルト。健闘を祈る!」カツキが言った。


「頑張ろう。外でまた会おうな!」ハルトも城に入って行った。


こうして二人は分かれた。


「城の中に入れば何か道が見つかるかもな」カツキはそう思い、城の横にある割れた窓から中に入った。



「カツキ…」柔らかな声が響いた。


「何だ?誰が呼んでるんだ?それにどうして俺の名前を知ってる?」カツキは周囲を見渡しながら尋ねた。


「こっちだよ」その声が答えた。


「その奇妙な声はあの方向から聞こえてくる…なら、反対側に行こう」カツキはそう考えた。


「(予想通り)」声は小さく呟いた。



カツキは城の廊下を走り続けた。そこには重要そうな人々の肖像画が飾られていた。彼が曲がるたびに、城は終わりがないかのように広がり、あの不気味な声を避けながら進んでいた。しかし、彼は最終的に奇妙な場所にたどり着いた。


「この扉…なんで魔法陣が描かれてるんだ?それに鍵がかかってる…?」カツキは考えた。


「カツキ!」またあの声が聞こえた。


「またお前か?そんなに俺に会いたいなら、後悔しないでよ?」カツキは少しの勇気を感じながら答えた。



カツキはその声の方向へ進んだ。しばらく廊下を進むと、整った部屋にたどり着いた。暖炉が燃え、廃墟と化した城とは対照的に、その部屋は誰かが住んでいるようだった。

「何もないのか…?でも、誰かの部屋みたいだ」カツキは考えた。


突然、目の前の暖炉が開き、そこからさらに広い部屋が現れた。


「これは…玉座か?それに、この前にある巨大な箱は一体何だ?他の道を探して戻るべきか…まだ時間があるはずだ」カツキが振り返ると、先ほどの部屋は消え去り、壁だけが残っていた。


「くそ…進むしか道はないか」カツキは苛立ちながら言った。


「— ようやく来たか…」部屋の中央にある箱の中から謎の声が聞こえた。


「— 何だって?」とカツキは状況が理解できずに言った。


彼が気付かないうちに、目の前の箱が輝き始め、消えていった。そして、その中から威圧感のある人物が現れた。その人物は白髪で、夜のように青い目を持ち、その瞳孔は蛇のように細かった。すると、空気が重くなり、カツキは下へ押しつけられるような感覚に襲われ、生存本能が全開になった。ただその人物の存在だけで、自分が床に押し潰されて殺されそうだと感じた。


「— お前は誰だ?」とカツキは尋ねた。「— 早くここを出なければ」とカツキは考えた。


「— 俺か?俺の名はザギルス、竜の主だ。そして、俺はお前をずっと前から知っているよ、坊主」とザギルスは椅子に座りながらカツキの目をじっと見つめて言った。


「— 竜の主だと?信じがたいな。見たところただの人間に見えるが...頭に角があるが」とカツキは部屋全体を見回しながら、素早くここから出る方法を考えていた。


「— この人間の姿は、ただコミュニケーションを取るための便利な形だ」とザギルスは言った。


「— そういうなら…だが、どうして俺を知っているんだ?」とカツキは時間稼ぎのために尋ねた。


「— 長い話だが…いや、今はその話をするには良くない時だ」とザギルスは椅子から立ち上がりながら言った。


ザギルスがカツキの前に立つと、その冷たい視線は刀のようにカツキを貫いた。たった一人であっても、彼の存在感は部屋を狭くし、息苦しいほどだった。


「— くそ、時間がない…」とカツキは考えた。「— 何が望みだ?」とカツキはザギルスに尋ねた。


「— お前は今この部屋で不快に感じているようだな。俺の存在がその原因だろう。無意識にそうしてしまった、すまない」とザギルスは謝罪した。


「— 何とか少しは楽になったが、まだ早くここを出たい」とカツキは考えた。


「— お前に提案がある、坊主」とザギルスは言った。


「— 何の提案だ?」とカツキは尋ねた。


「— 契約を結ぼう」


「— 契約だと?契約が何なのかよくわからないが、俺は断る」とカツキは即座に答えた。


「— それは選択肢にない。受け入れるしか道はない。さもなくば…」とザギルスは真剣な口調で言った。


「— さもなくば?」とカツキは尋ねた。


「— お前はここで死ぬ。俺には一切の悔いはない。任務を果たすのが俺の最優先だからだ」とザギルスは冷たく言った。


「— 任務?いや、ここで死ぬわけにはいかない」とカツキは考えた。「— 俺に何の得があるんだ?」とカツキは尋ねた。


「— それは、いずれ分かる。お前のためだ」とザギルスは答えた。


「— どうすればいい?どうすれば…」とカツキは焦りながら考えた。


「— さあ、選択をしろ」とザギルスは問いかけた。


「— これまで得たもの、友達を失うわけにはいかない。どうなるかわからないが…」とカツキは考えた。「— 俺は受け入れる」とカツキは宣言した。


「— よろしい、手を差し出せ」とザギルスはカツキに近づきながら言った。


ザギルスが近づくと、腰から短剣を取り出し、自分の手とカツキの手を切った。そして、二人はお互いの前腕を握り合わせ、その場所に血が混ざり合ったところに紋章が浮かび上がった。


「— この紋章は何だ?」とカツキは尋ねた。


「— これは俺の家の紋章だ、もしくは、その残り物だ。家の主だけが持つものだ」とザギルスは説明した。「— これが、お前の眠れる力を呼び覚ます」


「— 家?力?お前も別の紋章を持っているが、違う形だ」とカツキは混乱して言った。


「— この紋章か?これはお前の家の紋章だ。お前の父が亡くなった時にお前に受け継がれたものだ。混血であっても、その権利はある」とザギルスは答えた。「— こうして、我々の家は繋がった。まるで家族のように。千年が過ぎても、我々の種族の中で、この契約を結んだ者は少ない」とザギルスは説明した。


「— 俺の父…どういうことだ?」とカツキは全く理解できずに言った。


短剣が肌を切ると、熱い痛みが走った。しかし、その後に来たのはさらに強烈な痛みだった。激痛が腕を突き抜け、体全体に広がっていく。何かが目覚めた感覚、古代の力がカツキの中で沸き上がり、彼の体を震わせた。紋章が光を放つと、一瞬視界がぼやけた。カツキは荒い息を吐き、体の内側が炎に包まれるような感覚に襲われた。


「— これは…何が起きているんだ?」とカツキは立っている力も残っていない状態で尋ねた。


「— ああ、そうだ。今思い出したが、彼らはお前が契約を結んだ際にこの反応を示すかもしれないと俺に言っていたな」とザギルスは何かを思い出したように言った。


「— どんな反応だ?」とカツキは苦しみながら尋ねた。


「— お前は混血であり、完全な竜ではないため、エルフの側が防御反応を示して、お前の力の活性化を拒んでいる。ちょうど熱が出た時のような感じだろう。恐らく、お前の母親が成人するまでそうなるように施したのだろう」とザギルスは説明した。


「— エルフの側?どうすればこの痛みが止まるんだ?」とカツキは痛みに耐えながら尋ねた。


「— 瞑想し、自分の二つの側面のバランスを取るんだ」とザギルスは答えた。


「— 瞑想だと?冗談だろう?」とカツキは言った。


「聞かないでください。これはそうなった時にあなたに伝えるように言われていただけです。実際、私もどうすればいいのか分かりません。これを見るのは初めてです。」とザギルスは答えた。


「くそ、あまり選択肢がないようだな。」とカツキは言った。


そしてカツキは座り、両手を組んで瞑想を始め、ザギルスが言ったようにバランスを取ろうとした。数分後、彼は完全に落ち着いていて、まるで今まで起こっていたことが幻であったかのようだった。


「この少年は私が思っていた以上だ。」とザギルスは思った。


その瞬間、カツキの体から黒い炎が現れ、彼の全身を包み込んだ。しかし、カツキはまったく動じておらず、炎が彼に害を与えることはないかのようだった。そして、彼は目を開き、こう言った。


「言っていたバランスを見つけたみたいだ。」とカツキは落ち着いて言った。


「よくやった、少年。それで、どうやってそのバランスにたどり着いたんだ?」とザギルスは尋ねた。


「今の家族のことを思っていただけだ。彼らを失いたくないって。」とカツキは答えた。


「なるほど、どうやら思っていたよりも簡単だったようだ。」とザギルスは言った。「さて、そろそろここから出た方がいいだろう。お前は答えを求めているのは分かっているから、一つ名前を教えてやる。『イミッド』を探せ。彼が、お前の探している答えを教えてくれるだろう。彼は獣人の国にいるはずだ。未来でまた会おう。」とザギルスは別れを告げた。


その後、ザギルスはカツキに魔法をかけ、少しの間眠らせた。


「そうだ、あいつと友達がここで何を求めていたか思い出した。少し手助けしてやるか。後であいつには借りができるだろう。」とザギルスは言った。


一時間後:

「何だ?あれは現実だったのか?そしてここは城の外だ。これは、俺が望んでいた旗じゃないか。でもどうして?」とカツキは混乱しながら言った。「このシンボル...全て現実だったようだ。そして、まだ日が沈んでいない。どうやらあいつが俺を手助けして試験を終わらせてくれたようだな...結果的に俺はあいつに借りができたかもな。急がないと。」とカツキは続けた。


こうしてカツキは試験を終わらせるために街の門に向かって走り、遠くにシゲルの姿を見つけた。


「どうやらやり遂げたようだな、坊主。だが、どうしてあの方向から来た?門から出ればよかったのに。」とシゲルは尋ねた。


「門から少し遠くにいたから、壁のところに小さな門が見えたんだ。それで通り抜けた。」とカツキは答えた。


「なるほど。ハルトはもうずいぶん前に到着している。どうやら期限内に試験を終えることができたようだ。これは祝う価値があるな、ははは!」とシゲルは大喜びした。


「祝いは街に戻ってからにしましょう。ヒデオさんがこの結果を聞くのを楽しみにしているでしょうから。」とハルトは言った。


「その通りだ。じゃあ、食べて休もう。明日には帰りの旅が待っている。」とシゲルは言った。


「リクシスはどこにいるんだ、シゲルさん?」とカツキは尋ねた。

「彼女は数時間前に出発した。大事な用事があるそうだ。」とシゲルは答えた。


「そうか。彼女が無事であることを願っているよ。」とハルトは言った。

読んでいただきありがとうございます。お友達と共有してください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ