リリー・ダイヤモンド
戦火に燃える街。病院の大人たちは必死に子供達を避難させていた。
「みんなこっち!早く!」
途中でこけて泣き喚く子供は誰かが担いで一緒に逃げる。
常識革命。それは全てを変える炎に包まれた出来事だ。
足を怪我して病室の扉にもたれかかる私は、己の死期を悟った。
床頭台に置いてあった『なりたいもの』の絵と母の手作りであるウサギのぬいぐるみを抱いて大きく息を吐いた。
その時。
「ダイヤちゃん!」
顔を上げると、窓の向こうの炎の中で母が私に向かって手を広げていた。
ママ…ママ!
私は痛む足を押さえて必死に立ち上がった。
「ママ、ママ!」
「ダイヤちゃん、こっちに来ちゃダメ!早く逃げなさい!」
ママ、会いたかった。私、何年もここで生きてきたよ。どうして突き放すの?一緒にいるって約束したじゃん。
今思えば、あれは幻覚だったのだろう。あの都市伝説も嘘ではなかった。
しかし頭がやられた私はふらふらと窓に近づく。
「ずっと…会いたかった!」
窓枠を踏みつけて、私は病院の最上階から、炎目掛けて飛び込んだ。
目が覚めると、そこは薄く水の張った不思議な空間だった。
見渡す限り宇宙の真ん中にいる感じ。
光の粒子でできた花の上で起き上がると、右の方から声がした。
振り向くと、光の粒子でできた三人の人影が見える。
「リリー!」
…そっか。私、こっち側に来たんだった。
ふらふらと立ち上がり、人影に向かってゆっくりと歩みを進める。
人影に近づくにつれて、三人を模っていた光の粒子はボロボロと崩壊し…やがて一つの大きな人影が生まれた。
私より幾分か背が高い女の人。そうだ。彼女の名前は…バーベナ・ダイヤモンド。
「ダイヤちゃん。」
ダイヤモンドという姓が好きで、母は私のことを名前ではなく『ダイヤちゃん』と呼び続けてくれていた。
病院ではみんなリリーって呼ぶから、母の気持ちを忘れないように、私は母が誕生日プレゼントにくれたウサギのぬいぐるみに『ダイヤちゃん』と名前を付けて可愛がっていたのだ。
「ママ。」
光の粒子で溢れる宇宙空間の中、私は母とハグをした。




