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結託

「なんかサルビアと仲良くなったよ。」

そう切り出してきたカサブランカに思わず「え!?」と聞き返してしまった。と同時に頭の傷が痛む。

「別に、僕が君の看病していることは伝えてない。ただただ共通の話題で仲良くなったんだ。」

「へぇ…ちなみにその共通の話題って…。」

「君のことだ。」

看病してもらってる以上文句を言える立場ではないが、もう「はぁ?」しか出てこない。

「私のこと?変なこと話してないよね?」

「そうやって他人の話に首突っ込むから襲われたんだよ、どーせ。」

ペットボトル飲料を私に向かって投げつけた。見事にキャッチしたが、外したら顔面ヒットは免れなかっただろう。

「…あ、カサブランカ。」

「ん?」

「そろそろ夜明けの晩がくる時期だよね?」

「え?あぁ、もうそんな時期か。」

「次の夜明けの晩でいいんだけど、この手紙を面会室の仮面の人に渡しておいてほしいの。」

そう言って、シーリングスタンプの貼られた手紙を机上に置いた。

「勝手に中身見ないでね。」

「元郵便会社の配達員だぞ?成功する僕みたいなヤツはお客様の手紙を勝手に見たりなんてしないよ。」

随分と調子のいいことを言っているが、この手紙の内容は本当に見られるわけにはいかない。

というのも、この前サルビアと会った時に得た彼女のデータが全て詰められている。

これをカサブランカに届けさせるのは、元配達員である彼を信頼しての依頼だった。

「にしても、やたら分厚いな。本当に何が入ってるんだ。」

「何でもないって。本当に見ないでよ?」

「そんなに信用できないならカリスにでも頼めよ。どうせ看病の関係で君の仲間は僕かカリスかアスの三人くらいしか候補いないんだし。僕なんかよりカリスやアスの方が、君としての信用も高いだろう。」

「いや悪かったって。次の夜明けの晩までには届けてほしいの。そのまま届けてくれたら、それでいいから。」

「はァ…分かったよ。やっておく。」




昨晩。

「あなたがカサブランカさん?」

振り返ると、そこには黒フードの妖怪みたいな人が立っていた。手には鋭利な影が。

「…違うと言ったらどうする?」

「月明りであなたの顔が良く見える。写真と一致してる。カサブランカで間違いないでしょう?」

屋上。柵にもたれかかる僕に、彼女は何の話を持ってきたのだろう。

「逆に訊こう。君は何者かな。」

「私はナハツェーラを殺害する為にゲームに参加した者よ。」

「サルビアっていう人物をふと思い出したんだけど、君かい?」

影は少し黙る。しかし数秒置いて、その大きなフードを外した。

「話が早くて助かるわ。私はサルビア。カサブランカ、あなたに話があって来たの。」

「監視の目を盗んで夜中の二時にここに?暇人だね。」

「あなたこそ。」

そう言ってサルビアは僕に一歩近づく。

「巡視員の通りが少ない道があるんだ。そこを通って、毎晩ここに夜風を当たりに来てる。」

「へぇ、毎晩来てるんだ。じゃぁこの時間にここに来たら、あなたに会えるのね?」

変な情報を渡してしまった…が、そんな困るほどではない。

「で、要件があるならさっさと話せよ。」

背後から足跡が近づいてくる。刺されるかと思ったが…違った。

彼女は後ろから僕を抱きしめた。ゼロ距離で彼女は囁く。

「私、リリー・ダイヤモンドって人の情報を集めてるの。あなた、よく知ってるでしょ?」

心臓が大きく跳ねる。彼女が一呼吸するたびに、耳元に生暖かさが広がった。

「今あなたの心臓が大きく脈打った。図星でしょう?」

「…はぁ、認めるよ。僕はリリー・ダイヤモンドを知っている。で、それが?何だっていうんだ。」

リリーを看病している事実は、彼女の為にも黙っておこう。

あくまでこの状況で優先するのはリリーの安全だ。

「私ね、リリーって言う人が…只者じゃないと思ってるのよ。あなたはどう?」

「…半分賛成。」

「へぇ!なんで?詳しく聞かせて!」

彼女の、僕を抱く力が強くなる。

「僕はリリーを、純粋なプレイヤーだとは思っていない。」

「というと?」

「運営の差し金ってことさ。」

リリーの安全を優先するとは言ったが…多分この女は条件次第で僕に有利な交渉を持ち掛けてくる。リリーには悪いけど、最優先は僕の利益だ。

「運営の差し金…。それだと私と解釈が一致しないわ。」

「ほう?君の、彼女に対する解釈はどんなのさ。」

「私は、彼女をナハツェーラだと思ってる。」

反射的にサルビアを跳ね飛ばした。

「わわ!どうしたの!?」

構えを取った彼女は咄嗟に隠し持っていたナイフを僕に向けてきたが、冷静に弁明した。

「…いや、すまない。その名前を聞いたら過去のトラウマが…。」

「あぁ、なんだ。そんなことか。ナハツェーラに人生を狂わせられたの?」

「…そう。」

とりあえず頷く。すると彼女は刃物をしまって、今度は正面から僕を抱きしめた。

さっきよりも強く…純粋な優しさにあふれたハグ。

「私もナハツェーラに人生を狂わせられた…殺したいくらい、憎いの。あなたもナハツェーラを殺したいと思わない?」

「…思う。」

「じゃぁ私と結託してリリーを殺そう。」

とんでもないこと言い出したぞこの女。さすがに断るか…。

「悪いけど、僕の解釈で彼女は運営の差し金なんだ。彼女をナハツェーラとして殺害することはできない。」

「どっちにしろ構いやしないわ!仮にナハツェーラじゃなくても、運営の差し金ならそれだけで殺す理由になる。」

んんんんんんん…。悩みどころだ。僕としては、運営とつながっている彼女を利用してゲームシステムに侵入したいのだが、殺してしまうと打つ手がなくなる。

しかしここでこの交渉を断ることは、サルビアの反感を買うことに直結するだろう。この場だけでも表面上で了承しておくか…。

「いいだろう。でも、君の言うこと全てに従うつもりはない。あくまで必要最低限な関係だ。」

「うん。それでいい。ふふ、愛してるわカサブランカ。」

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