迫真幼馴染部 下校の裏技_mp.2
今日も、学校にポッチャマは現れなかった。
いつものように明るい女子高生の姿の彼女がいるだけだった。
「お待たせ。オッスオッス!」
校門を出たところで待っていると、彼女に声をかけられた。
「今日も学校楽しかったな〜。早く帰って宿題しなきゃ」
字に起こすなら普通なのだが、イントネーションとか間の取り方が、知っている人間には何を意識しているか分かる。
「まだみんないるんだから、ここじゃやめた方が良いんじゃないかな」
「へーきへーき。へーきだから。汚いのは使わないから大丈夫だって安心しろよ〜」
場をわきまえているのかいないのか、よく分からない。
出来ることなら、場をわきまえたままでいて欲しかった。
学校に幽閉したら、綺麗な彼女のままでいてくれるかな。とか、変なことまで考え出してしまう。
「ほらほら、置いてくよ? 甥の木村加速します! 」
何も知らなければ、テンション高めな女子にしか見えない。実際は、同性愛ポルノの台詞を連呼するような人だけど。
「……待って」
俺は小走りで、暴走する彼女の背中を追いかける。
どうして俺はこんな子に惚れてしまったんだろう。俺が何をしたというのだ。
『恋の障害はあるほど燃える』みたいなのを聞いたことがあるけれど、まさかうんこの壁が立ち塞がるだなんて夢にも思わなかった。
「クリスマス・イヴは三日間くらいあるといいんだよね。だってさぁ!」
また変な呪文を唱え始めた。きっと、見たばかりの動画に影響されているに違いない。
これが覚えたての言葉を使う赤ん坊だったら、どんなに可愛いかっただろうか。
「……そうだね」
適当に相槌を打つ。正しい答え方なんて知ったこっちゃない。彼女は、そんなノリの悪い俺の様子を見て少しだけ不機嫌そうな顔をした。
知りもしない男娼の日記の内容をダラダラと聞かされていると、いつの間にか家の前まで来ていた。
「じゃ、また」
「あっ、おい、待てい」
彼女は俺を引き止めた。一体なんだと言うのだ。
「肝心なこと洗い忘れてるぞ」
肝心なことって何だ。俺は彼女の言葉の意図を汲み取ることが出来ず、首を傾げる。
「や、く、そ、く。しただろぉ」
「え?」
約束……?必死に記憶を探るも、彼女が答えを出す方が早かった。
「ポッチャマと遊ぶっていう」
マジで?今朝のアレ、本気だったの?
「それ、本気で言ってたの?」
「当たり前だよなぁ〜。ホモと違ってポッチャマは嘘つかないぞ」
彼女は悪戯っぽく笑った。その笑顔は、俺が好きになった彼女そのものだった。
俺はこの笑顔を前にして断るなんて出来ない。
「分かったよ。俺も約束は破らないから」
「よう言うた。それでこそ男や! じゃけん、早速行きましょうね〜」