ワーカホリック
全属性魔法使いのチーター木讃岐との一戦の次の日。
「たっだいまー」
手に大量の荷物を持ったシオンが三人、ACOコルタナ支部の宿舎へと戻ってきた。
三人とも軽い足取り。服装は隊服ではなく、一人目はジーンズにTシャツ。二人目は、コルタナの人々の間で流行っている装いで、ロングのスカートに上はゆったりとした半袖。三人目は、コルタナの伝統的な衣装で、煌びやかな踊り子のようだ。
「満喫しすぎっス、シオン。つか、何に分身のチートを使ってんスか」
宿舎で本を読んでいたセオが、シオンの様子にあきれる。
「チートでも使わないと、三日じゃ行きたいとこ全部行けないじゃん。あんたこそ、移動に最適のチート持ってんのに、なんで籠って本ばっか読んでんのよ」
「別に本が好きだから読んでるだけっスよ。大体、俺がチートを使わなかったおかげで、今があることを忘れてないっスか?」
「そういえば、そうだった。グッジョブ、引きこもり君」
はぁ、とセオはため息をつく。
「まあまあ、ご飯でも奢ってあげるから。隊長とルリさんを誘って行こーよ」
シオンは分身をもう一体増やした。
「私達は荷物置いてくるから。分身で隊長たちに声かけてくる。隊長たち、どこにいるかわかる?」
「一さんとルリさんは、執務中っス」
困ったような顔のセオ。シオンは絶叫した。
「えーーーーーーーー! ありえん! あの男! 朝、私が出かける頃には既に執務室で仕事してたよ!」
加えて言うと、シオンが起きる二時間も前に一は起き、日課の鍛練をこなした後、執務をしている所を彼女は見たのだった。
「仕事熱心で尊敬すべき上司じゃないっスか」
「あれは中毒っていうの。付き合わされてるルリさんが可哀想ー」
「ああ」
二人は、完全無欠の超絶美女を思い浮かべる。彼女は、隊長の補佐は副隊長の務めといい、ワーカホリックの一にいつも付き合っていた。
「まあ、ルリさんもルリさんっスけどね」
「いや、隊長が全部悪い。とりあえず、私は文句を言ってくる。セオは出かける準備して待ってなさい」
シオンはそう言って、執務室へと向かったのだった。