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異世界チート対策局  作者: BWG
3/7

三番隊出動

『コルタナより緊急支援要請! 三番隊直ちに出動せよ!』


異世界チート対策局本部、三番隊の隊舎内にアラームが鳴り響く。


「コルタナかー。こりゃまた遠いっスね」


事務室で書類整理をしていた青年は手を止め、頭を掻いた。彼の呼び名は、セオ。金髪碧眼で中性的な顔立ちをしていた。


「たしか剣の異世界だっけ? 私あそこの紅茶好きなんだよねー」


同じく書類仕事をしていた黒髪ポニーテールの女性が相槌を打つ。


「飲む時間があれば良いっスけど」


「絶対に飲むから!」


セオは肩をすくめた。


「一さんは仕事人間だからな~。チーターをBANしたら、今回も直帰だろうな」


「いや、ほんとあの人あり得ないから。直帰だけならまだしも、訓練する時もあるし。せっかく異世界に行ったってのに、観光させてよ!」


シオンはセオに詰め寄り、肩を揺らした。


「いや、俺に言われても困るっス。隊長に言ってください」


セオの指摘をシオンは黙殺した。そして、意味深にニヤリと笑う。


「この支援要請、絶対わざとだと思わない?」


「わざと?」


「局長とテスラ様が意図的に三番隊に回したとしか思えない」


「なんで、三番隊に?」


「この前言われたじゃない。あのワーカホリックの隊長にそれとなく息抜きさせてあげてって」


「ああ~。確かにそんなこと言われた気もするっス。無理だなって思って、聞き流してたっス」


 シオンは呆れ顔になるが、すぐに真剣な顔つきへと戻った。


「いい? セオ。コルタナはとても遠いわ。そして、今回の出動は緊急支援要請。だから、きっとあなたのチートで瞬間移動するはず。だから、疲れたふりをするの」


「はぁ?」


「現地について、チーターをBANしたあと、疲れたふりをして、次に能力を使えるまで二、三日休みをもらえれば、私は観光ができる」


「絶対に無理っス」


セオは引き攣った笑みを浮かべる。そして、発案した当のシオンも、そう言われて困り顔となり、


「たしかに。鍛錬が足りない! とか言われて、鍛錬させられるのがオチかもね」


と苦笑した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 三番隊の出動前の集合場所へと到着したセオとシオン。


「あれ? 一さんは?」


 セオは隊長がいないことに気づく。


「お疲れ様です! 副隊長! 隊長はトレーニングルームにいらっしゃるようなので、ルリさんが呼びに行っております」


 隊員の一人が妹尾の問いかけに答える。


「了解」


 そして、彼らの到着からほんの少し後、異世界チート対策局三番隊の隊長一ノ瀬一と副隊長ルリが現れた。


「「「お疲れ様です! 隊長!!」」」


 一の姿を見て、三番隊の隊員は一糸乱れず、気をつけの体勢となる。


「おい、お前ら。その挨拶、いつもやめろって言ってるよな? ただでさえ、三番隊は軍隊だってからかわれてんのに」


一は、鋭い眼光で一同を見回した。


「まあまあ、一さんを見てたらビシッとするのもわかりますよ」


セオはニヤニヤしながら、一を見た。


 長くもなく短くもない癖毛のある黒髪に、精悍な顔つき。鍛え上げた身体は、ピッタリとしたトレーニングウェアを着ているせいで強調されていた。身長は百七十五センチメートルでそれほど高いわけではないが、存在感と威圧感がある。


「セオ、お前はもう少しビシッとしろ」


一がチョップをくれてやると、


「いってー」


とセオは大袈裟に痛がる。


 その様子に隊員一同は笑った。セオは副隊長という立場についているが、日頃の言動は少し子供っぽいところがあり、チョップした一自身も、彼の仕草に口の端を弛める。


「隊長、装備です」


 もう一人の副隊長のルリが一へと刀を手渡す。局員が持つ神の力を宿した武器。これで倒されたものは輪廻転生、一度死に生まれ変わることになる。転生するとチート能力は失われるので、チートの過剰使用、そして、注意しても改善の見られない者には、一たちACOの人間が実力行使で止めるのである。なお、武器は個人で好きなモノを選べる。一は刀を使っていた。


「ああ、悪いな」


「いえ、これくらい当然のことです」


 ルリはピシッとお辞儀をする。


 浅黒い肌に、銀髪のロングで、プロポーションも顔立ちも抜群の彼女は、出来る大人の女性像そのものだ。


 頼りになる副隊長だが、一からすれば少し固すぎる感じが否めなかった。もしかすると、ルリの俺への態度を見て、隊員も真似しているのかもしれないと一は思った。


 ブォンという電子音が鳴り、壁に掛けたモニターが起動する。モニターに映ったのは、山のようにごつい男。


「副長代理、副長助勤、三番隊隊長一ノ瀬一。出動準備はできたか?」


「毎度ながら長い肩書きっすね、一さん」


 セオが茶化した。


「一が副長に就任すればスッキリするのだがな」


 モニターに映るごつめの男が不満を露わにする。


「局長、役職を全部言う必要ないでしょう」


「お前が副長に就任するまで言い続けるさ」


 異世界チート対策局局長の武は、がっはっはと豪快に笑った。


「他にも適任はいるでしょう」


「強さだけなら、お前に匹敵するものもいるが、強さだけでは副長は務まらん」


「俺も、強さにしか興味がない人間ですが」


「まあ、そうかもな」


 武は意味ありげな微笑みを浮かべた。


 一は武の態度に引っかかったものの特に指摘はせず、


「そろそろ行きます」


「ああ、お前なら問題ないと思うが気をつけてな」


 一はペコリと頭を下げる。


「出動する! 少し遠いが、セオ、お前の瞬間移動で行けるか?」


 セオはチラリとシオンを見た。彼女の目は、言えと訴えかけている。無論、転移先での休みのことだ。


 彼はため息をつく。言い出しづらく、鼓動がバクバクと速くなる。


「ギリギリっすね。……行きで使ったら、帰りにまた使うのに、二、三日欲しいかなーなんて、思ったり思わなかったりしてるっす」


「まあ、仕方がないか」


 一は渋々といった様子で了承した。セオはホッと胸を撫で下ろし、シオンの方を横目で見ると、グッと小さく親指を立てているのが見えた。


「じゃあ、行きまーす!」


 解放感から、少し大きめにセオは全員へと声をかける。


「テレポート!」


 セオのチート能力の瞬間移動が、三番隊全員を対象とし、要請場所コルタナへと転移した。


 こういった長距離のテレポート直後は、急な場所の変化や、前後不覚により、セオでさえ慣れるまで数秒はかかる。


 しかし、一はいつもコンマ何秒で、適応する。そして、それは今回も同じようで、


「まずいな」


と到着するなり、瞬時に状況を把握した一は駆け出したのだった。


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