アオサの夢
ユイキリ:「どうかしら?」
ジヒナ:「あー、あー。うん、大丈夫」
ユイキリ:「こっちは…」
シェード:「大丈夫なの!」
ユイキリは青白いオーラに囚われて、本性が剥き出しになっている。
このオーラは負の心。おほしさまが今まで食べた人の悪い気持ちの集合体。
ジヒナ:「シェード♪」ナデナデ
シェード:「はいなのー♪」ナデナデ
ジヒナとシェードは毛細血管で繋がれれ、遠隔操作されている。
ユイキリの操作によって、2人は抱き合ってナデナデさせられる。
ジヒナ:「はうぅぅぅ♪」ナデナデ
シェード:「あはは〜♪」ナデナデ
嫉妬の炎は鎮火して、フワフワした幸福感に包まれてしまった。
ユイキリ:「シオサちゃん?」
シオサ:「はい。」
ユイキリ:「貴女は抵抗しないのかしら〜」
シオサ:「私はアオサの娘ですよ。ママさんに従うのが一番の幸せなのです。」
ユイキリ:「あらあら〜、嬉しいわ! でもママさんは止めなさい」
シオサ:「はい。ユイさん♪」
シオサを抱き寄せて頬ずり。満面の笑顔でナデナデ。
ユイキリ:「シオサちゃ〜ん、これからどうしましょう?」
シオサ:「お腹の中のママが迷宮になっています。そして泣いています。」
ユイキリ:「あらあら〜、すぐに行くわよ」
心臓に意識を集中させる。
心臓と、世界が、裏返る!
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(反転世界)
ユイキリ:「あらあら〜?」
シオサ:「これは、ママの気配がします」
そこには異様な光景が広がっていた。
豊かな森に囲まれたと思ったら、近未来の鉄色メトロポリス。
ファンタジーな王都が見えたら、現代の物流倉庫が目に入る。
連続的に、周囲の景色が移ろう。
ビルが裏返って樹木が生えて、枯れ木が裂けてお菓子の家が飛び出す。
ザァァァァァァァァ!!
天気は雨。
黒灰色の空からどしゃ降りの雨粒、突風に乗って冷たく肌に突き刺さる。
雨粒が地面に着くと、反射して空へと登る。
雨粒の挟み撃ちだ。
シオサ:「涙の味がしますね」
ユイキリ:「アオサちゃーん! ママよー! 会いに来たわー!」
雲が消えて一瞬で晴れ渡る。
青い髪と長ズボンの少女が、両手を広げて飛行機のように一直線!
アオサ:「ママー♪」
そして、ママの胸へ、顔面ダイブ!
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ユイキリ:「アオサちゃ〜ん♪」
アオサ:「ママー♪」
「「あはははは〜♪」」
抱き合ってくるくる回り、見つめ合う。
恋人のように、軽くついばむようなキス。
アオサ:「ママ、久しぶりだね」
ユイキリ:「ああ、アオサちゃん、会いたかったわ!」
アオサ:「ママのお腹の中、とっても温かかったよ」
ユイキリ:「まあ嬉しいわ〜」
おほしさまソウルの青いオーラで理性は吹き飛んでいる。
本心が剥き出しになって、ひたすらに甘い空間が出来上がってしまったのだ。
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アオサ:「ところで、どうして3人ともじっとしてるの?」
ユイキリの背後には、シェードとジヒナが満面の笑顔を貼りつけている。
シオサは自然な表情だ。
ユイキリ:「それはね〜、みんな私のお人形さんになっちゃったの〜♪」
アオサ:「ええっ!?」
ユイキリ:「ハーレムはダメよ〜アオサちゃ〜ん♪ ちゃんと私だけを見るのよ〜♪」
アオサ:「待ってママ、急にどうしたの!?」
ユイキリ:「待たないわ〜」ナデナデ
後頭部をポンポンしながら優しく髪に指を這わせていく。
アオサ:「あ、ママぁ♪」
ユイキリ:「そう。アオサちゃんはもう立派に成長したのよ〜」ナデナデ
青白いオーラがアオサを包んでいく。
ユイキリ:「後はママに任せなさい。もう旅は終わりよ〜」ナデナデ
アオサ:「で、でも…」
嫁と娘への未練、アオサの理性をつなぎ止める。
ユイキリ:「アオサ、貴女が本当に大切なものは何?」ナデナデ
アオサ:「大切?」
ユイキリ:「ようやく気づいたの。アオサ、貴女さえいればいいのよ。他には何にも要らないわ!」ナデナデ
アオサ:「ママぁ♪」
何かが弾ける音がする。
青白いオーラがアオサの心臓へ流れ込む。
アオサ:「あ、ママの気持ちが流れ込んで来る」
ユイキリ:「アオサちゃんの愛が伝わるわ〜」
負のオーラを交換し合い、愛を確かめ合う。
独占欲と嫉妬の嵐で周囲の景色は無に帰してしまう。
アオサ:「今までごめんなさい。ママ。一生ママだけ愛するよ」
ユイキリ:「ありがとうアオサちゃん♪ 一生面倒見てあげるわ〜♪」
アオサ:「えへへ♪」
ユイキリ:「うふふ♪」
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名も知らぬカフェ、木のテーブルに並んで座る親子。
指を絡めて肩を寄せ、ほっぺたを重ねる。
外では草とそよ風の音がする。
小さなケーキとジュースを2人で分ける。
アオサ:「ママ、あーん♪」
ユイキリ:「あーん♪」
アオサのフォークにしゃぶりつく。
イチゴとクリームと、アオサの味が広がる。
アオサ:「…んへへ」
ユイキリ:「…うふふ♪」
穴が開くほど互いの瞳を見つめあう。
見つめ合いながら、アオサは左手で蜂をいじくり回す。
アオサの肩には30センチの蜂、シェードだ。
アオサの首には錨のネックレス、ジヒナだ。
アオサの膝には緑髪のお人形、シオサだ。
蜂をナデナデして、ネックレスを指でこすり、人形の服を着せ替える。
一通りスキンシップをした後、
アオサ:「ママー、これからどうする?」
ユイキリ:「そうね〜……」
アオサ:「え、なになにシオサ?」
シオサ人形を耳に当てる。
アオサ:「え、女神さまが来る?」
ガッシャァァァァン!!!!!
ユイキリ:「あらあら〜?」
アオサ:「なになに!?」
メリメリ、どっひゅーん!
突風で木造のカフェがもぎ取られてしまった。
裏返ってくるくる回って飛んで行く
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空から港町が生えて、下方の大空から雷が打ち上がる。
そして前方には、巨大なドラゴン!
黒金の皮と白銀の逆鱗。あれは……
ギスラヴァール:「はーっはっはっは。久しぶりだなアオサ」
アオサ:「ギスラヴァール!?」
ユイキリ:「あらあら初めまして」
ギスラヴァール:「む? 仲間がいるのか。まあ良い。女神さまに復活させてもらったのだ!」
アオサ:「なんだよ、せっかくの楽しいひとときを邪魔してさ」
ギスラヴァール:「む? それはすまなかったな」
女神:「アオサちゃん、久しぶりですねー」
アオサ:「女神さま!」
女神:「元気そうで何よりです」
アオサ:「うん、元気だよ…イテテ」
ユイキリの指がアオサの肩にめり込む。
女神:「本当に貴女は想定外の塊ですよ」
アオサ:「想定外?」
女神:「
おほしさまと戦うと思ったら、何故か融合。
融合しても、アオサちゃんは暴走しない。
シオサさんは暴走せずに爆発。
ユイキリさんは別ベクトルに暴走
」
アオサ:「あー」
女神:「やはり、ナデナデは不味かったですね」
腕を広げて肩を落とす。
女神:「ナデナデは私の腕、『肉体』『魂』『心』『存在』全てを自分の思い通りに塗り替える」
アオサ:「!?」
女神:「本当は心臓や赤血球なんかよりよっぽど危険な代物。今まで熱い戦いを演じる事ができたのは、相手をナデナデしなかったから」
アオサ:「ほえー…」
目を丸くする。
女神:「アオサちゃん、貴女の腕は私の腕。ほら…」
アオサ:「あっ!」
女神が右手を挙げると、アオサの右手も勝手に挙がる。
そのまま自分の頭をナデナデ。
アオサ:「女神さまぁ♪」
ユイキリ:「アオサ!」
女神:「ほら、こんな簡単に変わってしまうんです」ぺちん
アオサ:「!?」
ユイキリの胸に顔を埋めてナデナデしてもらう。
ユイキリ:「あらあら〜、女神さまは戦いを見たいのね〜」
女神:「そうですよ。だから、彼を復活させてみたんです!」
ギスラヴァール:「まあ命じられずとも自ら戦いに行くがな、はっはっは」
高らかに笑うドラゴン。以前のような圧倒的な威圧感は発していない。
しかし、体内、皮膚、ウロコ、どれを取っても以前と比較にならないパワーが詰まっている。
雷と竜巻をバックに、アオサは決意を抱く。
女神:「アオサ、貴女の不思議な不思議な冒険は、終わりを迎えます。最後にふさわしい戦いを期待していますよ」
アオサ:「分かったよ。全力で行くよ」
ユイキリ:「うふふ、一緒に戦うのは初めてね〜♪」
既に置き去りになった時間を到達不能の彼方まで引き離し、最後の戦いが幕を開ける!
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シオサ:「女神さま、失礼します」
女神:「あら、シオサさん、どうしました?」
いつの間にかシオサはニンゲン形態に戻っている。
戦いを他所に、女神に歩み寄る。
シオサ:「・・・」
女神:「・・・」
無言で見つめあう2人。
不意にシオサが拳を握る。
スパァァァァァン!
ゴキィ…
女神:「・・・」
左の頬に右ストレート。それにより首が180度回る。
女神:「あ は は ♪」
もう一つの戦いが始まってしまった!
ようやくボス戦です!