おまけ:深海のスライム茶
今度はルルリエちゃんのお話
ズィ島、アオサが住む小さな島。
その海底には島を囲むようにぽつぽつと穴が空いている。
そこから潜ること10000メートル。
光も届かない……と思いきや、光子こと【ピカビト】ちゃん達は普通に生息しているのだった。
普通に明るい海底には、たくさんの人が生息している。
エビやアンコウの【ウオビト】、ユムシやグソクムシの【ムシビト】、緑藻や紅藻の【クサビト】、ベニサンゴの【イワビト】がたくさん生息していた。
(たまにプラスチックごみの【プラビト】も混じっているのはご愛嬌。)
彼らは半球状の家を並べて海底都市を作っていたのだ。
こうしてできた海底都市のひとつ『ランランシティ』をちょっとだけ紹介しよう。
………
[ランランシティ〜藍に紅藻揺れる町〜]
ズィ島を囲んだ環状都市。
6個の都市を環状の車道で繋いでいるのだ。
ランランシティは東部に位置する。
サンゴモの生産が盛んで紅茶にして飲むのだ。
ランランシティの郊外の小高い丘に、立派な豪邸がひとつ。
立派な門がついた西洋風の豪邸だ。
ルルリエ「まあ、メイドさんがあんなに慌てています」
ネルリリーリゼ「お茶を買いに行ってるだけよ」
ルルリエ「お母さまっ♪」
ネルリリーリゼ「ルルちゃんっ♪」
ルルリエ「うふふ」
ネルリリーリゼ「うふふ」
二階のベランダから幸せが漂ってくる。今日も平和だ。
アマコウ「ワンっ!」
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[一般メイド視点]
わたしはクラゲ〜。名もなきクラゲメイド〜。
早くお嬢様がたの紅茶を用意しなきゃ〜。お茶会に遅れちゃう〜。
ゆらゆら〜
ここは直売所〜。採れたてのサンゴモがあるの〜。
スイカを割ったような建物に入りまぁ〜す。
新鮮な緑藻と紅藻がたくさん並んでまぁす。
エビ店員さんおはようございます〜。
22本腕と真っ赤な装甲には毎日ビックリ〜。
エビ店員「いらっしゃい。いいのが揃ってるよー!」
メイド「いつものロイヤルペコペコハーゲをくださ〜い」
カコン
エビ店員「はいまいどー」
チャリン♪
茶葉の缶を受け取って電子マネーで支払いを済ませま〜す。早く帰らなきゃ──
エビ店員「ところで、最近新しく入った紅茶なんだけど……」
これは、青透明? 初めて見るよぉ〜?
エビ店員「名付けて『ニュル・スララール』。ウチの最新作さ。一杯どうかな?」
メイド「毒味はメイドの仕事だよぉ〜。えいっ」ごくり
にゅるっ♪
!?!!???!!!!!
な に こ れ ! ?
メイド「買います!」
チャリン♪
エビ店員「まいどー。他にもあるよー」
メイド「スライム飴にスライムチャーハン、スライム食器、スライム手袋!!」
エビ店員「世はまさに大スライム時代だよー」
メイド「すっごぉぉい!」
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[ルルリエ視点]
ルルリエ「それで、つい買いまくってしまったと」
メイド「へへぇ、衝動が抑え切れず……こちらが新作の紅茶『ニュル・スララール』になります」
スライムです。粘度低めのスライムです。
ルルリエ「お母さまお母さま、ティーカップにスライムですよ?」
ネルリリーリゼ「ふふっ、ルルちゃん落ち着きなさい」
そうです。淑女のたしなみです。
目を閉じて、平常心。浅く深呼吸。
ルルリエ「いただきます」
にゅるり♪
にゅるっ にゅるっ
ぐいぐいぐい!!
ルルリエ「!??!!!」んぐっ
ネルリリーリゼ「喉越し爽やかですわ」
ちょっと、生きてますよ。なんですかこのスライム普通に生きてます。ピチピチの鮮魚ですか!?
食道がウゾウゾしてます!
今、胃液にドプッとダイブしました!
ネルリリーリゼ「うふふ……ルルちゃん可愛いわ」ニヤリ
ルルリエ「お、お母さまは平気なのですか?」
ネルリリーリゼ「洗脳ですわ。黙らせればいいのです」
そうです。平和ボケして忘れていました。
--ルルリエは【くすぐる】を使った。
こちょこちょこちょ♪
--体内に触手が生えてスライムをくすぐり始めた。
--スライムはクネクネしている。
ルルリエ「なるほど〜。大人しくなりました」
ネルリリーリゼ「そうですわ、クラゲと融合させましょう! そこのメイド!」
メイド「はいぃ〜!?」
ネルリリーリゼ「買ってきたのは貴女ですわね。責任取って実験台になりなさい」
メイド「ひえぇ」
ぶちょっ
ぐゆぐゆ ぐゆぐゆ
ぬるり
メイド「うーん、全身がゆるゆるする〜」
ルルリエ「ふむふむ、クラゲ触手のプルプル感が増しましたね」ツツー
ネルリリーリゼ「頭もプルプルですわ」ナデナデ
メイド「ふみゃ、ふみゃみゃみゃみゃ〜」へなへなぁ
アマコウ「ワンッ、ワンワン!」
ルルリエ「どうしましたアマコウ?」
ヒュゥゥゥゥゥゥン……
何か降ってきます。あれは……スライム!
ネルリリーリゼ「まだ海底2000メートルね」
ルルリエ「行きましょう。この町に落ちたら大変です」
ビュン!
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[スライム視点]
ここはどこ?
私はだあれ?
……
ふわぁ、分かんないや。
お水おいしいな。ゴクゴク。
ミズビト「わー、飲まれたー」
んんー、何か入ってきた?
わはー?
私はミズビト?
私は水だー。ミズミズするよー!
ルルリエ「はじめまして。早速ですがコチョコチョします」
にょろり♪
えぇ、なにそれこわい。
いや、来ないでぇぇ!!
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
コチョコチョコチョコチョ
アヒャ、あははははははは、やめ、くすぐっt、あひゃひゃっ ヒッ ふごっ ヒヒャヒャヒャヒャ
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--スライムの【せいしん】が2まで下がってしまった。
--スライムの耐性がなくなってしまった。
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待って私もしかしてピンチ?
ルルリエ「今です。ナデナデ!」
ナデナデ、ナデナデ
ぷっつん♪
スライム「お嬢様ぁ♪」
ああん、私をルルリエお嬢様が満たしていく〜。
ルルリエお嬢様のことしか考えられなぁい♪
ルルリエ「スライムちゃん、今日から貴女は私の髪の毛の一部です」
スライム「はぁい♪ お嬢様の仰せのままにぃ」
ネルリリーリゼ「私にも分けるのですよ」
にゅるにゅる
ソリュビト「あれー新入りかい?」
エレビト「仲良くしようね」
スライム「はーい」
……
こうして髪の毛に扮したクラゲ触手はスライムと融合した。
こちょこちょパワーは更なる強化を遂げ、ナデナデ、モフモフと並ぶ凶悪な能力と化した。
後に三種の神技呼ばれる【ナデナデ】【モフモフ】【こちょこちょ】が一大勢力を築いて三つ巴のじゃれあいに発展するのだが、それはまた別のお話。
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アオサ「あれ、なんだか髪がムズムズするよ」
ユイキリ「あらあら〜、ルルリエちゃんみたいになってるわ〜」
そろそろおまけパートは終わり。次は3日くらい開きそうです。