家族会議
今回は思ったように筆が進まなかったです。なんでだろう?
ユイキリ「会議を始めるわよ〜」
一同「「「「はーい」」」」
長方形状の木のテーブルを5人が囲む。
時計回りでユイキリ、ジヒナ、シェード、シオサの順だ。
アオサはユイキリの膝に座って頭のワカメをクルクルといじられている。
ユイキリ「まずはアオサちゃん」
アオサ「はいっ」
ユイキリ「サンドバッグになるってどういう事かしらぁ〜?」
アオサ「えっとね、私が一定の強さに達するとね、女神さまが私を半分ちぎって持っていくらしいの」
ユイキリ「ならいいわ」
ジヒナ「いいのかよ」
静かなツッコミだ。
シオサ「半分なら問題ないですからね」
シェード「そういうものなの?」
ユイキリ「次はジヒナ、船の改造はできそうかしら?」
ジヒナ「うーん、動力も外装も正直どうすればいいか……パワーインフレしすぎて船体がとても耐えられそうにないんだよ」
シオサ「船に心臓移植すればいいんですよ」
ジヒナ「それだ!」
どうやら心臓移植で全て解決するようだ。
ユイキリ「シオサちゃんはどうかしら、これ以上の戦力強化はできそうかしら?」
シオサ「手がかりはあります。1ヶ月あればなんとか間に合うでしょう」
ユイキリ「あらあら〜、楽しみに待っているわ〜」
アオサ「さすがシオサ」
アオサはニコニコしている。
ユイキリ「アオサ、シェード、貴女たちはどうするのかしら〜?」
アオサ「うーん、とりあえず、片っ端から心臓移植かな?」
シェード「確かに戦力は多いほうが心強いの」
ユイキリ「あらあら〜、頑張るのよ〜?」
アオサ「はーい」
シェード「はいなのー」
ユイキリ「そうだわ、お隣さんにも伝えないと。シェードちゃんも来なさい」
シェード「あたしなの?」
ユイキリ「じゃあ行って来るわよ〜」
シュン!
ユイキリは背後からシェードの肩を掴んで姿を消す。
ジヒナ「それじゃあ私は船の所にいるからなー」
シュン!
シオサ「宇宙を漂って来ます」
シュン!
アオサ「あー……とりあえず世界一周しますか」
シュン!
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世界が滅亡するまで1ヶ月。
これはただの1ヶ月ではない。
無限の速度を持つ者にとって、通常の1ヶ月は無限の時に等しい。
0秒間に何度無限の時を埋め込んだとしても、アオサ達には関係ない。
そこで『ターン』だ。
1ターン1分とすると、
1日1440ターン、
1ヶ月43200ターン。
基本的に1ターンには1回行動が入る。
気分や感情によっては2回、3回と行動回数が増えるのだ。
さて、少しだけ危機感を持ったアオサ達の行動は……?
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ジヒナ「せいっ」
ズポポポポポポポ
ズポポポポポポポ
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ジヒナ丸(シオサ命名)の左舷にへばりつき、田植えのように赤い肉片を突っ込む。
そう、心臓移植をしているのだ。
パーティー会場のシャンデリア、大浴場のライオンの顔、カジノのパチンコ玉、バーのジョッキ、野外プールの排水溝にまで心臓を植え付けるのだ。
いつか旅した異世界も、今は蜂で溢れている。
キラキラした宇宙の小道も蜂とワカメで溢れている。
ジヒナ「なるほどな、この無限に増えるワカメを燃料にすればいいんだな」
白い船尾にワカメを差し込み準備完了。これでいつでも出発できるぞ!
〜ここまで4ターン〜
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(シオサ視点)
ウィィィィン!
キュィィィン!
シオサ「おかしいですね。今までの無限とはどうも勝手が違うようです」
ステータスを強化しようとするシオサ。
シオサ「無限圧縮も無限増殖もダメ。時間や次元を増やしても無意味。上限は何故か取れない。困りましたね」
お花畑に座って目を閉じる。
風に乗って草木の香りや花粉が流れて来るが、それを気にする余裕はないようだ。
シオサ「そうだ、ルールを増やしましょう。」
何か考えが浮かんだようだ。
シオサ「この世を統べる9つの公理、外延、正則、空、対、和、置換、無限、冪、選択。それらだけではωをひたすら並べるだけが限界。ならば10個目のルールを追加できれば……」
シオサ「ルールとは何か、どうやって追加できる?」
シオサは思考の宇宙へ深く深く沈んでいく。
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ズィ島の側の海底遥か10000メートル。
立派な豪邸が建っていた。
西洋風の重厚な門の先には立派な庭。
一部は日本庭園になっている。
植生は主にワカメとサンゴなのだが……
ユイキリ「お久しぶりです」
ネルリリーリゼ「あらー久しぶりですわー」
クラゲメイドが紅茶を出して、静かにフェードアウトする。
ユイキリ「実は宇宙が滅亡するらしいのですよ〜」
ネルリリーリゼ「まあ、こわいですわねー」
ユイキリ「まあ大変。詳しく聞かせてもらえませんか」
シェード「向こうで話すの」
ユイキリ「あはは〜」
ネルリリーリゼ「うふふー」
ママ友のおしゃべりは続く。
ルルリエ「おほしさまを破壊すれば良いのですね?」
シェード「そうなの。でも女神いわく目を覚ました瞬間に宇宙滅亡らしいの」
ルルリエ「むむむ、難問、です」
シェード「みんな危機感なさすぎるのよ」
タコクッキーを頬張りながらおしゃべりは続く。
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ヒュン
ズボズボ
ズボズボ
ズボズボ
ズボズボ
ズボズボ
アオサは無作為に飛び回る。何も考えずに目についたモノ全てに心臓を埋め込んでいく。
アオサ「ふんふんふーん♪」
頭の中は混沌とした散らかりよう。ママの膝枕や今日の昼食、豚肉の残量など、まるで関係ない事が浮かんでは消えていく。
ズボズボ
全ての物質に心臓を埋め込むと、宇宙へ飛び出す。
ズボズボ
惑星まるごと素粒子レベルで心臓移植をして、ついでに男が絶滅する。
争いのない平和な世界になった。
ズボズボ
異世界まるごと魔素レベルで心臓移植をして、ついでに男が絶滅する。
勇者と魔王が突然恋に落ちた。
ズボズボ
神も悪魔もスライムも、目についたモノには全部心臓を埋め込んでしまった。
みんな幸せな気持ちになった。
ズボズボ
何もない空間にも心臓移植をして幸せで満たしてあげる。
ズボズボ
とりあえず時間や空間、その他思いつく限りの概念にも心臓移植をする。
アオサ「うーん、これで全部かな?……あっ、【反転世界】を忘れてた」
懐かしのギスラヴァール。
彼と一緒に食べた世界は今どうなっているのだろうか?
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久しぶりの反転世界。
静かだ。
生命がひとつもない。
自然豊かで無機質な場所。
土に触れてもどこか余所余所しい。
無性に逆立ちをしたくなる違和感に襲われる。
逆立ちしてみる。
しっくりした。
心音センサーを使う。
ドクンッ!
広い。
宇宙と全く同じ大きさ。
宇宙は外に広がるけど、反転世界は内側へ広がっている。
じゃあ外側は?……私の心臓だ。
すごい事になってるね。
心臓の裏から宇宙が生えているみたい。
……
ここには何もないようだ。戻ろう。
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シェード「あらアオサ、おかえりなの」
アオサ「ただいまー」
ユイキリ「アオサちゃ〜ん、昼ごはんはガーリックライスよ〜」
アオサ「わーい」
まるで危機感なくスプーンを握り、ライスを口へ掻き込んでいくアオサ。
宇宙滅亡まであと29日。まだまだ時間は残っているが……?
今思うと『8つの公理』とか言ってそれぞれのボスに何か能力もたせれば良かったかも。7つの大罪的なノリで