人類は滅亡しました!
慈悲を拒んだ勇者の末路。そして母の怒り
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ユイキリ「あらあら〜」
ジヒナ「あ、ユイキリ……」
湖に朝日がギラギラと反射する中、ユイキリはジヒナをお姫様だっこしている。
ユイキリ「お疲れジヒナ。カッコ良かったわよ」ナデナデ
ジヒナ「はうっ♪」
右手を器用に動かしてナデナデする。
ジヒナは恥ずかしそうに身をよじり、ナデナデの快感を逃す。
ユイキリの右足の下にはダグヌの顔。
なす術なく踏まれ、地面にめり込んでいる。
ユイキリ「あらあら〜、アオサちゃんも無事に復活したみたいよ」
ユイキリは心音で離れた所にいるアオサへと意識を飛ばす。
その間ダグヌは意識を失い地べたに横たわっていたのだった。
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[アオサ視点]
はっ、ここは!?
真っ暗な金庫に戻って来ちゃった。
えーと、痛っ? 心臓が痛い!
ううっ、女神さま、夢じゃなかったんだね。
ドクンッ ジクジク
ドクンッ ジクジク
ドクンッ ジクジク
って何これどんどん痛くなる!?
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!
まずい自我が崩壊しそうどうすれば……そうだ! 赤血球さんお願いします!
>『アオサ』に『痛みに応じてステータスが上昇し続ける能力』を付与
……ふう。落ち着いた。
ドクンッ ジクジク
痛い痛い痛い……ふぅ。
ドクンッ ジクジク
痛いって。……ふぅ。
ドクンッ ジクジク
ううぅ、早く慣れないと。
あれ? そういえば赤血球が使えるようになってるぞ!
これが心臓に穴を開けた恩恵なんだね!
という事は……
めりっ♪
金庫がティッシュみたいに破れちゃったよ。
パワーが元に戻ってる……いや以前より強くなってるかも。
それじゃぁ、行けっ毛細血管!
シュルシュルシュルシュルシュル
パクり♪
金庫を全部食べちゃった。
そして〜
アオサ「行け、ルルリエちゃん!」
ポンッ!
ルルリエ「うーん、あれ、ここは? あ、おはようございますアオサさん」
アオサ「おはようルルリエ」
うん、元気そうで何より
ルルリエ「えっと、これは?」
ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた。その胸のチューブはね……
アオサ「実は心臓どうしを血管で繋げたんだ」
ルルリエ「ええ〜!!」
アオサ「実は【ゼロの結界】とかいうブツが張られているらしくてね」
ルルリエ「ああぁぁぁ〜!! 思い出しました、ある日突然力が抜けてニンゲン等に攫われたのですわ!」
あらら、やっぱニンゲン滅ぼそう。
ルルリエ「お母さま、お母さまは?」
アオサ「あーはいはい。行けっ、ネルリリーリゼ!」
ポンッ!
ルルリエ「お母さま!」
ネルリリーリゼ「うーん? ルルちゃん?」
あれ、呼び方変わってる? まあいいか。
ルルリエ「よかったぁ」
ネルリリーリゼ「!? ルルちゃん大丈夫だった? 酷い事されなかった?」
相変わらず仲が良いことで。
アオサ「あとは〜、行けっ、アマノウス!」
ポンッ!
アマノウス「ガルルルル……グルっ?」
アオサ「おはようございます」
キレてる。めっちゃキレてるよ。
アマノウス「む? アオサよ、まさかお主が結界を?」
アオサ「まだ【ゼロの結界】は破ってないけど、今の私と繋がってるとゼロは効かないみたいだよ」
アマノウス「流石だな。もうワタシの遥か先の領域まで行ってしまったのか」
アオサ「ところで、これからどうする?」
アマノウス「ワタシはニンゲン共を滅ぼしに行くぞ!」
そりゃそうだよね。私も手伝うよ。
ルルリエ「そうですね、お母さまを酷い目に合わせたニンゲン共は消しましょう」
ネルリリーリゼ「うふふ、そうね、消しましょう♪ 人類滅亡ですわ♪」
2人は幸せそうに見つめ合う。
アオサ「でもさ、ちょっと勿体ないよね」
アマノウス「むぅ?」
アオサ「女はみんな蜂にする予定なんだけど。男は犬獣人にでもどうかな?」
アマノウス「ふむ、なるほど。」
ルルリエ「あら、面白そうですわね!」
ネルリリーリゼ「せっかくだから人魚も創りましょう」
ぺちゃくちゃ ワンワン
ぺちゃくちゃ ワンワン
こうして軽く意見交換をして……
……
[0秒後]
ルルリエ「では」
ネルリリーリゼ「行きますわよ」
アマノウス「今こそ世界変革の時だ」
アオサ「さん、に、いち、それ!」
ヒュルルルルルルル ルルルルルルルル
パァァァァァン
綺麗な花火が上がった。
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空が昏い虹色に妖しく輝く。
鮮やかなマゼンタ色の光が全人類を包み込む。
この日、人類は滅亡した。
女性は人格そのままに、【ハチビト】という種族になった。
触角と翅と複眼、蜂のようにくびれた腰と丸くとがったお尻が特徴的だ。
お尻の大きさは調整可能という便利な機能も付いている。
男性は跡形もなく消え去った。
そして、虹色の光は森へ、海へ、空へ、大地へと降り注ぐ。
森では【ケモビト】。獣の耳や尻尾が生えた種族が発生した。
海では【ウオビト】。魚のウロコやヒレを持つ人が発生した。
空には【トリビト】。腕が翼に変形した人が発生した。
土には【クサビト】。人を模した草が土から生えた。
他にも多数の種族が出現。
世界の人口は、ニンゲン70億人からハチビト35億人になり、残り35億に適当な種族が割り振られた。
そして、魔獣も再び姿を現した。
ウボア「ウボァァァ!」
イワシラン「ぎょえェェェェェ!」
ワイドバーン「ギャーオ」
ゲキジョグマ「クマァァァ!!」
懐かしい顔ぶれ。
そこに敵意はない。
人と魔獣が手を取り合うやさしい世界が誕生したのだ!
ケモビトがウボアを駆り、ウオビトはイワシと戯れる。
トリビトはワイドバーンと空を飛び、クサビトは熊にハチミツをあげる。
そんな世界が広がった。
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ダグヌ「ハッ!?」ぴくり
言いようのない悪寒が背筋を駆け抜け、地に伏したダグヌは目を覚ます。
ユイキリ「おはようございます、そしてお疲れ様でした。たった今、人類は滅亡しました」
ダグヌ「!!?」ぱくぱく
混乱する脳に透き通る声が浸透する。
周囲を見渡せば、勇者の軍隊はもういない。
一面のお花畑でたくさんの蜂が花粉を採取している。
ユイキリ「正確に言えば、まともな人類は貴方だけです。貴方が最後の生き残りです」
ダグヌ「なっ……!」
状況を飲み込み更なる絶望に包まれる。
ダグヌ「俺が、俺達が、いったい何をしたと言うのだ。どうして──」
ユイキリ「あらあら〜?」
ユイキリは目を細めて頬に人差し指を当てる。
ユイキリ「貴方は蜂の巣を刺激しました。そして蜂に刺されました。蜂とはそういうものよ」
ダグヌは疲れた頭で必死に言葉を紡ぎ出す。
ダグヌ「人間……ではないのか? 貴様は人間なのだろう? どうして──」
ユイキリ「そうねぇ、母にとって娘はね、自分の一部なの」
ダグヌ「???」
ユイキリ「母は娘に愛を注ぎ、娘もまた母に愛を注ぐ。そして混ざり合っていくの」
ダグヌ「何を……言って──」
ユイキリ「例えばね、娘が道を踏み外したら、母も道を踏み外すものなのよ」
ダグヌは目を伏せる。
目の前の女はもはや説得は不可能。見えてる世界が違いすぎるのだ。
ユイキリ「ところで貴方、私の可愛いアオサちゃんの細胞をちぎってクローンを作ったのね?」
ぞわり!
ユイキリ「肉片をちぎって花粉の調査につかったのね?」
ぞわり!
ユイキリ「そして金庫に入れて暗い地下に監禁したのね?」
ぞわぞわ!
ユイキリ「貴方は善人だけど、娘に手を出したわ。だから、貴方も酷い目に遭ってもらうわ」
ダグヌ「……」
ダグヌは人生の終わりを悟る。
ユイキリ「そうだ、アオサちゃんの真似をしてみましょう♪ 確か赤血球の使い方は……」
>『ダグヌ』から『人生』を回収
ツツー♪
ユイキリ「へぇ〜、これが貴方の人生なのね」
ユイキリはどこからともなく虹色の毛糸を取り出す。
ダグヌ「……」
ユイキリ「飲んだくれの父と元ヤンキーの母の元に赤ちゃんができました」
ダグヌ「……」
ユイキリ「……赤ちゃんは不幸にも謎のウイルスに感染」ツツー
ダグヌ「!?」
ユイキリ「父は何かに取り憑かれたように必死で薬を探し回りましたが──」
ダグヌ「待て、やめろ」
ダグヌは直感で悟る。それは人生の書き換えであると!
ユイキリ「無理が祟って過労死。残された母は悲しみに暮れます」
ダグヌ「やめろぉぉぉ!!!」
ユイキリ「母は雨の中、赤ちゃんが川に流されているのを見つけます……と」
ユイキリ「赤ちゃんを拾って『タタン』と名付けます」
>『ダグヌの人生』は『タタンの人生』になってしまった
ユイキリ「タタンちゃんは男の子として育てられ、ダグヌと同じ道を歩みましたとさ」
ダグヌ「あ、あ、あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!!!」
ダグヌの脳に映像が流れる。母が知らない少女を育てているのだ。
『タタン』と呼ばれる少女は成長して、母とタタンが手を繋いで幸せそうに歩く。
ユイキリ「この辺で許してあげましょう、何か言い残す事はありますか?」
ダグヌ「なあ、どうして親父を──」
ユイキリ「ダグヌさん、男なんていなくても、育児は女性だけでできるんですよ?」
ユイキリは冷たく言い放つ。
その瞳は泥沼よりも遥かに深く冷たい。
言葉の刃はダグヌに刺さり、深く深く沈んでいった。
>『タタンの人生』を『ダグヌ』に付与
ユイキリ「さよならダグヌさん」
さぁっ……
ダグヌの姿が消えていく。
そして、後には一人の少女が倒れていた。
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タタン「うーん?」
はっ、アタイは確か、人類の未来をかけて蜂に挑んで、蜂の親玉に惨敗したんだったな。
なんで生きてるんだ……あああああ!?!?!
蜂、蜂になってるーーーーー!?
人体から生えた触角、翅、デカいケツ!
タタン「は、ははは……」
無様だ。人類の希望が蜂の手先になるなんてな。
……こんな事なら死んだほうがマシだ!
さっさと喉を掻き切って
カチャッ
母「タタンちゃん?」
タタン「え、ママ? どうしてここに」
母「タタンちゃーん」ぎゅっ
タタン「ほええ!?」
感動の再会……だけどお互い蜂人間になっちまったよ。
母「タタンちゃん、人類は滅亡してしまったの。もう戦う必要はないんだよ」
タタン「マ、ママ?」
ヤバイヤバイめっちゃいい匂いするドキドキが止まらない!?
母「これからずっと一緒に暮らせるんだよ」ちゅっ
タタン「ママ!? ……んふぅ♪」
脳が痺れてきた。でもとっても幸せだぁ。
蜂ってのも悪くないのかも。
ってダメダメ! 絶対蜂なんかに屈しないんだから!
……て言いながら抵抗してたけど、ハチミツのような甘い快楽にアタイはふにゃふにゃにされちまったんだ。
ついにやってしまった〜 次回ボス戦の予定です。
↓ その場のノリで能力追加したせいでステータスがまたインフレ起こしました。
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アオサ&ユイキリ Lv ω_ω_ω_……
HP :ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_……
こうげき:ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_……
ぼうぎょ:ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_……
まりょく:ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_……
せいしん:ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_……
すばやさ:ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_ω_……
主な能力
・回収
・付与
・心音センサー
・心臓の痛みで強くなる能力
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心拍一回で ω が1個増えます