最後の勇者へ慈悲の斬糸を
今日は調子良かったかも。描写がいつもよりはマシかも?
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ユイキリ「ふう。頑張ってねアオサ」
汗が頬を伝い、ハチミツ色の髪が床に広がる。
心臓を押さえるのは穴を空けた痛みか、アオサの失態への嘆きか。
ユイキリ「うふふ、帰ったらおしおきよ♪」
母はゆっくりと目を閉じて心臓へ意識を集中させる。
ドクンッ!
母は穴開き心臓の痛みに耐えながら、戦場全域へ意識を伸ばすのだった。
ユイキリ「あらあら、ジヒナが頑張ってるのね」
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ザッシュ、ヒート、クウジン、ダーク。
A級勇者は全滅し、B級勇者軍団も蜂に襲われ、壊滅するのは時間の問題だ。
ダグヌ「どうしてこうなった、どうしてこうなった!」
ダグヌは頭を掻き毟る。焦りを怒気で誤魔化して、荒々しく機械を操作する。
天空の巨大円盤からは無数のレーザーが縦横無尽に降り注ぎ、次々と蜂を落としていく。
しかし、間に合わない。
蜂の数は膨大だ。落とす側から新しい蜂が大地から湧き出て来る。
そして味方はどんどん倒れていく。
ダグヌ「どうすればいい、考えろ、考えろ、考えろ……」
蘇生薬の在庫は何故か急に無くなり、ハイパーキズぐすりでは治療は間に合わない。
ひゅぅぅぅぅぅぅぅん
ドゴォォォォン!
ダグヌ「!? おい今のは何だ!」
メガネ男「隕石です! 上空から隕石が降って来ます!」
ダグヌ「馬鹿な、結界はどうした?」
メガネ男「それが、隕石が突然現れて──」
ひ ひ ひ ひ
ゅ ゅ ゅ ゅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ぅ ぅ ぅ ぅ
ボカン ボカン ボカン ボカン
グラグラ グラグラ
ダグヌ「クッ、術者を逆探知しろ! 長くは持たないぞ」
メガネ男「ハッ!」
カタカタ
カタカタ
メガネ男「出ました……えっ?」
ダグヌ「真後ろ?」
ジヒナ「やっほう」
白い船長服の少女はボサボサの黒髪で、イタズラ小僧の表情で錨を担ぐ。
ダグヌ「貴様、いつの間に」
ジヒナ「ついさっき。どう、ビックリしたでしょ?」
おちゃらけた態度とは裏腹に虎のような眼光を光らせ、一触即発の雰囲気が漂う。
……
ダグヌの拳が汗ばむ。
……
ジヒナの口が裂け、ダグヌは腰を落として正拳突きの構えを取る。
他の乗組員は時が止まったように息を潜めている。
……
ジヒナの錨を持つ右手がゆっくりと上がる。
それに伴いダグヌは緊張感を増していく。
……
ヒュッ
突如、ジヒナの左手がブレた!
そしてダグヌは拳を突き出した!
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
パ
ス
--ジヒナは【時空切断】を使った!
--ダグヌは【正拳突き】を使った!
巨大円盤は斜めにスッパリ斬れてしまった。
乗組員「「「うわぁぁぁぁ!?」」」ひゅーん
ダグヌの周囲は拳圧で無事だが、巨大円盤は無残にも墜落してしまった。
ダグヌ「トウッ!」
ジヒナ「キャハハッ♪」
2人は飛翔し、殴り合いが始まる!
ダグヌ「ハァァァァッ!」
ジヒナ「せいやっ!」
ガキィィィィィン
ガキィィィィィン
ガキィィィィィン
ガキィィィィィン
天空で、拳と錨が交差する!
まだ夜明け前の静かな夜空に、金属音が木霊する!
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[ユイキリ視点]
ユイキリ「あらあら〜」
ジヒナが戦うのは久しぶりね。しばらく観てましょう。
……心臓がジクジク痛むわね。傷口が広がり続ける感じなのね。
うふふ、アオサとお揃いなのね。うふふふふ♪
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上空ではガチンコバトルが繰り広げられていた。
ジヒナの【時空切断】によってダグヌは無数の斬り傷を受ける。
腕が飛び、内蔵が裂け、脳が破壊される。その度に謎の技術で再生するのだ。
ジヒナ「ダグヌさん、まだ続けるのかい?」
ダグヌ「勇者は不屈だ。この命尽きるまで闘い続ける!」
ジヒナ「頭固いねぇ」
ダグヌ「黙れ、土水魔法【濁流波】!」
ザァァァァァァァァ!
ドシャァァァァァァ!
泥を含んだ冷たい水がジヒナを包み込む。
ジヒナ「ぶくぶく(へぇ、中々やるじゃん)、ぶくぶくぶく(普通のニンゲンなら圧殺されてたね)」
シュパン!
ダグヌ「何だ!?」
パシン パシン パシン
ジヒナ「【時軸糸縛】。文字通り時間軸を糸にして相手を縛る技だよ」
ダグヌ「くそっ、なんのこ れ し き …… ぐ ぐ ぐ 」
ジヒナ「力も魔力も亜空間に逃されて、力むほど時間が遅くなる。今のアンタじゃ無理だよ」
ダグヌは歯をギリギリ鳴らしてもがく。
時間の糸はビクともしない。
糸が肉に食い込んでもなお力を緩めない。
しかし、そこに追い討ちがかかる。
サーシャ「ジヒナ様、加勢に参りましたわ♪」
ホット「えっと、おてつだいにきました」
ソラ「遅れながら馳せ参じましたでござる」
タルト「キャハハ、ねえおじさんすごい顔してるよw」
ジヒナ「あっ、どうも」
ダグヌ「お、おま、お前等!? まさか!」
ダグヌの目が驚愕で開かれて、額の血管が浮き出る。
サーシャ「あら? ザッシュなんて知りませんわよ?」
ホット「『べつこたい』だってー」
ソラ「拙者の任務には関係ないでござるな」
タルト「アタシは妹ちゃんに会いに行くの。おじさん邪魔だから消えて♪」
ダグヌ「こんの外道がぁぁぁぁぁ!!!!!」
ザシュッ
ボォォォォォォォ
グザグザ
ぐしゃっ
ダグヌ「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
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ダグヌは落ちない。血まみれになりながら未だに瞳から闘志が消えない。
ジヒナ「ダグヌさん、もう勝負は見えてる。それなのに……アンタの原動力は何なんだ? 何が心を突き動かすんだ!」
ダグヌ「知れた事、勇者の使命は全人類の未来を守る事。勇者は人類の希望でなければならないのだァァァ!」
ピカァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
ドガァァァァァ!!
ふぃふぃふぃふぃふぃ!!
ジヒナ「なんだこのパワーは!?」
ダグヌ「人類のみんな、俺にパワーを貸してくれぇぇぇ!」
ドガァァァァァン!!!!!
ジヒナ「くっ、すごいオーラだ」
ダグヌ「人口1人あたり1ポイントのステータスが上昇する」
ジヒナ「って事はステータス70億だと!?」
ダグヌ「制限時間は3分間、それまでに蜂を駆逐してやる!!」
ヒュン!
ドゴォ!!
ジヒナ「うがぁ〜」
蜂×4「「「「ぐふっ」」」」
300万前後だったステータスが一気に70億。
驚きの2000倍以上である。
パワーバランスは崩れて形勢逆転。
ダグヌ「今まで散々好き放題やりやがってぇ! 死ねぇ!!!!!」
ドカッ バキッ ドォン
ジヒナ「ぐっ、【次元断層】」
ダグヌ「逃すかぁ!」
時空は筋肉で引きちぎる。快進撃は止まらない。
ダグヌ「オラァァァァァァァァ!!!!!」
ガシッ ドゴォン!
ジヒナ「うっ、ぐはっ」
ジヒナを地面に叩きつけてクレーターを作る。
そしてダグヌは飛び上がる。
ダグヌ「この島ごと沈むが良い!」
ドシュゥゥゥゥゥ!!
ダグヌは両手を天にかざし、泥水のボールを作る。
泥水泥水
水■■■■■■■■泥
泥■■■■■■■■■■■■水
水■■■■■■■■■■■■■■泥
泥■■■■■■■■■■■■■■■■水
水■■■■■■■■■■■■■■■■泥
泥■■■■■■■■■■■■■■■■水
水■■■■■■■■■■■■■■泥
泥■■■■■■■■■■■■水
水■■■■■■■■泥
泥水泥水
やがて泥水は島を覆い尽くす程のボールになる。
表面が激しくうねり、少し水が滴り落ちている。
ダグヌ「島ごと海の藻屑となれ、【泥災落下】!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴ……
シュポッ
ダグヌ「なっ……!????」
ユイキリ「そこまでよ」
泥水は綺麗サッパリ無くなって、この時ちょうど朝日が昇る。
ユイキリのハチミツ色の髪が朝日をバックに黄金に輝く。
現実離れした神々しい姿に、ダグヌは何か恐ろしいものを見てしまったかのように固まってしまったのだった。
疲れたー。ねむい。
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ダグヌ Lv999(水+土)
HP :665万→70億
こうげき:340万→70億
ぼうぎょ:276万→70億
まりょく:332万→70億
せいしん:272万→70億
すばやさ:232万→70億
主な能力
・泥沼
・正拳突き
・全人類の希望
・泥災落下
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