おまけ:何もしないという選択肢
今回はパラレルワールドのお話です。
シオサ「みなさん、この世界は選択肢の数だけ無限に枝分かれしています。時間軸の全ての点、空間の全ての粒子の数だけ枝分かれするのです。」
映画館のような黒い部屋の中央に、エメラルド髪の少女が怪しく笑う。
シオサ「ところで、キクラおばさんの未来も無限通りあるんです。ほら、見てください。」
ほわぁぁぁん♪
シオサ「本編ではそこそこ幸せな産卵管エンドでした。今回はちょっとだけ違う未来を見てみましょう。まずは、『何もしないという選択肢』です。それではどうぞ。」
◯◯◯◯◯◯◯◯
キクラ「ひぃっ!?」
さて、キクラをどうしてやろうか。
ナデナデして人格崩壊させてもいいけど、そうだな……
……
……
いや、止めておこう。私が手を出したらダメな気がする。
うん、既に立派なお嫁さん候補もいるし、何もしなくても幸せになりそう。
アオサ「じゃあね、幸せに暮らすんだよ。」
>キクラとミミナの「位置座標」を回収、書き換えて付与
ブゥン
とりあえず、近くの適当な町まで飛ばしてみた。
さよならキクラ。2人で幸せにね。
[とある砂浜]
ざざーん
ううーん、ここは?
うっ、頭が痛い。
ミミナ「キ”ク”ラ”さ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ん”!!よかったぁぁぁ、私たち、生きてますよ!」ぎゅっ
キクラ「ミミナ? はっ!!」
そうか、私たちボスっぽい竜に歯が立たなかったんだ!
それで……もしかして、姉に助けられた?
キクラ「そっか、アタシたち生きてるんだ。」
ミミナ「キクラさん。」
キクラ「ミミナ、しばらくこのまま。」
ミミナ「どうぞ。」
……しばらく何も考えたくない。
そもそもアタシ、どうして冒険してたんだっけ?
キクラに抱っこされてたら何だかどうでも良くなってきた。
……引退しようかな?
うん。あんなバケモノ達の魔境はもうこりごり。
どこかの山奥でスローライフしよう。
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こうしてキクラが向かったのは海が見える山奥の村。
村の子供達に冒険の心得を教えながら、ミミナと一緒に暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
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シオサ「どうでした? 画面の前の皆さんは普通のニンゲンでしょうから、これがハッピーエンドと感じた人は多いのではないでしょうか?」
サッ!
シオサ「次は蜂エンドです。人によってはこっちのほうが好みかもしれませんね。」
◯◯◯◯◯◯◯◯
キクラ「ひぃっ!?」
さて、キクラをどうしてやろうか。
ナデナデして人格崩壊させてもいいけど、そうだな……
……
……
うん、やっぱりナデナデして人格崩壊だね。
お姉ちゃん恐怖症を治療しないと幸せになれないよね!
ガシッ!
キクラ「いやっ、止めて!」
アオサ「問答無用! ナデナデぇぇぇ!!」
キクラ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
キクラの目から大粒の涙が溢れているが、気にせずナデナデする。
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
キクラ「お姉ちゃ〜ん♪」
アオサ「キクラぁ〜♪」
キクラ「お姉ちゃんありがとう。アタシ今とっても幸せだよ〜♪」
アオサ「うん、うん、良かったね。」
荒治療だったけど、上手くいって良かったよ。
アオサ「じゃ、蜂化してみようか。」
キクラ「えっ?」
>キクラに『触角』を付与
>キクラに『複眼』を付与
>キクラに『産卵管』を付与
>キクラに『翅』を付与
うんうん、私好みの姿に近づいたかな? 産卵管のついでに蜂出産できるようにしといたよ。
キクラ「お姉ちゃん?」
アオサ「キクラ、可愛いよ!」
キクラ「えへへ〜」
ミミナ「うぅ〜ん?」
そこで目を覚ますミミナ。目に写るのは変わり果てた相棒の姿。
ミミナ「……えっ、キクラ……さん?」
キクラ「えへへ〜お姉ちゃんだ〜い好き♪」
アオサ「あっ、おはよう。」
ミミナ「貴女があのアオサですね。キクラさんを戻してくださいッ!」カッ
アオサ「えっ? やだよ。」
キクラ「なに言ってるの? アタシは正気だよ? ミミナもこっちに来なよ〜、たのしいよ〜♪」
ー
ミミナ「キクラさん?! キクラさぁぁぁん!!」
ミミナは怒りに打ち震え、拳に爪が食い込むほど強く握る。
ミミナ「お”の“れ”ぇぇぇぇぇ〜キクラさんを返せー!!!!!」
アオサ「蜂になっちゃえ」
ぽふん
ガシッ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ミミナ「アオサさまぁ〜♪」
アオサ「よしよし可愛い奴め。」ナデナデ
キクラ「良かったねミミナ。」
ミミナ「うふふ〜蜂ってこんなに素晴らしい種族だったんですね〜」
アオサ「よし。これで2人とも幸せに暮らせるね!」
キクラ&ミミナ「「はーい」」
こうしてキクラとミミナは毎日毎日出産して、たくさんの娘に囲まれて幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
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シオサ「如何でした? こういうハッピーエンドは受け入れられますか?」
シオサ「ニンゲンから見ると受け入れ難いかもしれません。しかし当人からすればこれも1つの幸せでなのです。」
アオサ「シオサ〜、ご飯だよー!」
シオサ「はーいママー、今行くよー」てとてと
シオサが出て行った後の黒い部屋。そこには剥き出しの時間軸が残されている。そこには無数のキクラの人生が上映されていたのだった。
そろそろ序盤の雑描写を修正したいところ。