おまけ:妹から見た世界
修正という名の魔改造
ガァァァァァァァァァ……
どしゃ降りの豪雪の中、赤髪の少女が風を切る。
前には雷の龍、後ろには凍て付く青いドラゴン。50メートルの巨体が高層ビルのようにそびえ立つ。
ピカッ ゴロゴロドッシャーン!!!
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少女は雷を落として青いドラゴンを黒コゲにする。
そして振り返り、灼熱の剣を振り抜く。
スパァン
スパァン
スパァン
スパァン
スパァン
雷の龍はロールケーキのようにあっさり輪切りになってしまった。
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キクラ「ただいまー」
ミミナ「おかえりなさぁい」
私はキクラ。家出をしてもう8年が経つ。
そしてこの娘はミミナ。茶髪でメガネの地味だけど優しいお姉さんだ。
大学出て、今は2人で冒険家をやってるんだ。
キクラ「ぐでー、疲れたぁ」
ミミナ「お疲れさまです〜」
ここは【ノースポール】、はるか北方の凍て付く大陸だ。
こんな所にも冒険センター──赤い屋根の施設はちゃんとある。無人だけどね。
机に突っ伏す私の下に、ミミナはミルクココアをコテンと置く。
甘い湯気に自然と身体が起き上がる。
ふぅ、落ち着いた。冷えた身体に染みるよ。
ミミナ「発作治らないですねぇ」
キクラ「はぁ、もう諦めたよ」
時々ふと姉の事を思い出す。すると恐怖に震えてめまいと動悸が止まらなくなるんだ。
ドラゴンを斬ってようやく落ち着いたところだ。
50メートルのデカいドラゴンだったけど、肉もウロコも全部リュックに入っちゃった。
はあ、とりあえず売却しようか。
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だだっ広い無人の広間をコツコツ歩いていく。
突き当たりの右のほう、四角い箱がある。
【転送マシン】、あらゆる物質を離れた場所までワープさせる画期的なマシンだ。
まずリュックを箱に置く。そして横にスマホを置く。ボタンで操作すると、リュックの中の素材だけが転送されるのだ。
そしてスマホに電子マネーとして素材の売価が追加される。
本当に科学の力ってすごい。
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ミミナ「そういえば、キクラさんのお姉さんってどのくらい強いんですか?」
キクラ「ウッ……」
ミミナ「あ、すみませんすみません」
しまった姉アレルギーだ。
キクラ「はぁ、はぁ、いいよこのくらい。そうだね……」
自販機で買ったコーンスープをちびちび飲みながら思い出す。
姉が私の腕を掴んだ瞬間を。
キクラ「ミミナ、私の手を握ってみて」
ミミナ「こうですか?」ぎゅっ
キクラ「そう、その状態で思いっきり上下に振ってみて」
ミミナ「シェイクハンドですね〜。えいっ!」
ブンブンブンブン ブンブンブンブン
ブンブンブンブン ブンブンブンブン
手に力を入れる。
ミミナが手をブンブンするけれど、手はわずか2〜3ミリ幅で上下するだけだ。
きっと銅像と握手してる感覚だろうね。
ミミナ「キクラさん強いですぅ〜」
キクラ「姉ならこれが1ミリも動かないんだ」
ミミナ「ゲッ、バケモノじゃないですかぁ」
本当の所どうだか分からない。
でも私の脳には姉への恐怖が刻み込まれている。
まだだ、もっと強くならないと。
ミミナ「キクラさん、今日はもう寝ましょう」
キクラ「そうだね」
冒険センターにはちゃんと宿泊施設もついている。
小さな部屋に2人で入り、暖房をつける。
寝巻きに着替えてシングルベッドに並んで座る。
ミミナ「お姉さん、今ごろ何をやってるんですかね?」
キクラ「そりゃあ姉が世に放たれたら大事件だよ。」
スマホのニュースを横目で見る。
『実験施設の電気マウスが逃走!?』
『隕石接近!? 早急な対処を!!』
『汚染物質が魔獣化、死傷者500名』
……今日も平和だ。
ミミナ「そろそろ寝ましょう」
キクラ「そだね」
2人並んで横になって毛布を被る。
私はミミナを抱き枕にして目を閉じる。
いつものボディソープの香りで私の心は穏やかに静まっていく。
あんな姉や母なんかよりよっぽど安心できるよ。
キクラ「おやすみミミナ」
ミミナ「おやすみなさい」
ここから極寒の空は見えないけど、きっと星空が祝福してくれてるよ。
姉が引きこもり続ける事を願って、今日も私は眠りにつく。
雷の表現は某歯車小説の802部分の蟹を参考にしました。パクリじゃないよ?
次回はアオサの旅ですね。