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愚者の心臓・蜂娘 〜蜂をナデナデする話〜  作者: ✨️ゲーミング百合✨️
リーブタウン ~水面に星が映る場所~
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可愛い娘には旅をさせましょう。

 巻雲かかる透き通った空。空気が湿っていて風が鋭い。


 今日はミツビー達がソワソワしている。外敵が来たわけでもないし、健康チェックもいつも通りだった。


 胸がざわざわする。何かが起こる……?



▼▼▼▼▼▼▼▼



「お誕生日おめでとう。アオサちゃん♪」パァン


「ほえっ!?」ぽかん


 目が半開きだった私は一瞬で目がまんまるになった。いつの間にか16歳になったらしい。


「えっと、ありがとうママ。」


 不意打ちでもママにお礼を言うのは確定事項だよ。それがアオサクオリティ。


 ミツビー達もたくさん集まってきた。今日は野外でパーティーだ。


 ケーキにロウソクが16本。「ふっ」と消火して~いただきますッ!


 むぐむぐ、このクリームはハチミツと……シェードちゃんのローヤルゼリーが入ってますね。最初はスッキリ、後でねっとりする。独特の酸味が効いている。むぐむぐ、おいしい。


 生地はミチルの巣のハチミツ。なんだかふわふわしてる気がする。


 はちみつミルクは……ハッチとザハトの家の混合ですね。優しくてスッキリ。ごくごく、おいしい


 バシバシ……シェードちゃんがかまって欲しそうにしている。膝にのせてナデナデすると幸せそうな顔をする。可愛い。


 うん?たまごサラダにもハチミツ入ってるね。フレアとスカラの所の混合だね。ちゃんと全員分使ってるんだ。


「アオサちゃ~ん、お誕生日プレゼントがあるの~」


 おっ、きたきた。なにかななにかな~ワクワク。


「じゃじゃーん、スマイルフォン!」


「スマホ!?」


「そうそう最近流行ってるのよ。今時の若い子はみんな持ってるわよ~」


 この世界にも文明の波が寄せているのか。


 ママは話を続ける。


「そしてこれは~たくさん入るリュック~♪」


「うん?」


「なんとあらゆる道具が999個ずつ入るの。科学の力ってすごいわね~」


 ……まてまてこの流れは嫌な予感がする。


 10歳の息子を冒険の旅に送り出すアレな展開……


「そしてスニーカー~」


 待って、


「とっても歩きやすいのよ~」


 待って、


「それからそれから~」


 バンッ!


「……ママ、私に旅に出ろって言うの?」


「……ええ。」


 周囲の温度が下がる。


 ママ分かって言ってるね。


 本気で旅をさせるつもりだ。


「どうして急にそんな事言うの?」


「よく聞きなさい、アオサ。あなたには魅力がないのよ」


「ッ!?!?」


 首を絞められる錯覚に陥った。今の一言には色んな気持ちが圧縮されていた。


 仕事をせずに母に追い出された、あのクズ男と自分が重なる……


「アオサ、分かってるでしょ?あなたはまだ子供なの。旅に出て、色んな経験を積んで、自分で納得したら帰ってくるのよ。」


「……うん、わかった。」ぐすっ


 たったこれだけで心が折れた。一瞬で自分の未熟さを思い知らされた。


 残った料理は涙の味。色々な感情と一緒に飲み込んでいく。



▼▼▼▼▼▼▼▼



「アオサ……ごめんね……」


 星々も目を閉じる静寂の中、母は娘の手を握る。


 娘は静かに寝息を立てている。湖に沈むように深く深く眠っている。


 髪をゆっくり撫でて寝顔を覗き込む。娘の息づかいを感じる。


  すぅ……ふぅ……。


   ちゅっ…………………………


 ユイキリの唇が頬に触れる。


「アオサ、早く帰って来なさいよ。」



▼▼▼▼▼▼▼▼



 そして旅立ちの朝。


 半袖に長ズボン。底の厚い丈夫なスニーカー。つば付きの赤と白の帽子を逆向きにかぶる。


 飾り気のない少女は鋭い目で世界を見据える。


 胸は皆無。高い声と長い髪がなければ少年に見えるかもしれない。


「ママ、行ってきます。」


「いってらっしゃい、アオサ。」


  ぶーん……


シェードがうるうるした瞳で見つめて来る。ナデナデする。


「シェードちゃん、私も辛いんだよ。」


 ぶーん

         (ぶーん)

     ぶーん

(ぶーん)

        ぶーん


 いつの間にかたくさんのミツビーが。ミツビー総出でお見送りだ。


「ハッチ、私がいないからって、張り切り過ぎないでね。」


「フレア、八つ当たりは生態系を壊さない程度にね。」


「ミチル、美味しいオレンジジュース、期待してるよ。」


「スカラ、次に会う時は分身くらいやってみな。」


「ザハト、剣の道に終わりはない。どこまでも強くなれるよ。」


「そしてシェードちゃん、どうしても会いたくなったら……」


「!!!!!」


 さあ、旅立ちの時だ。空は青く、雲ひとつない。


 期待と不安を胸に、夢と冒険の世界へ足を踏み出す。


「それじゃ改めて……ママー、行ってきます!」


  TO BE CONTINUED…

旅立ちまで長かった~


他作品と比べてサクサク進行かもですが、実際書くのは超大変なのです。


次回……何も考えてねぇ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「はっきり言うわ、アオサ。あなたには魅力がないのよ」のよ、のよ、よ、よ…… きっとアオサ殿の内心では、そんな反響が響いておるのじゃ。 [気になる点] クズ男殿とは、1話目に登場して即他界…
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