平穏だから寂しくて
アオサさんはそろそろママに会いたくなってきたようです。
「ねぇ、次はあっちに行こうよ。」ヒュン
こうしてジヒナさんに連れ回されて色々な所を見る事になった。
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[ミストア公国 中央区]
「ここはミストア王国っていうんだ。そしてここ一帯が中央区」
さっきのカフェがある所がだ。
王城に近いだけあって、オシャレな店がたくさんある。
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[東区]
「ここは東区、自然豊かな場所なんだ」
なるほど、木こりや狩人、薬師、服を作る職人なんかがいる。
少子高齢化が進んで老人が多めだ。誰か羊羹を食べている。
森の中には蜂がいるね。
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[西区]
「ここは西区、学園都市なんだ」
ニンゲンだけでなく、エルフ、ドワーフ、獣人といった様々な人種が集まっている。
学生だけでなく、教授たちもたくさんいる。
アパートから食堂、娯楽施設まで一通り揃っていて、ずっとここで生活できそう
校舎の裏に蜂の巣があるのは見逃さない。
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[北区]
「ここは北区、ドワーフ達の工業都市さ」
ジヒナいわく“ドワーフ”らしい。小学生のお遊戯会に見えるが……
見た目はアレだが、腕は確かだ。
武器や防具に陶器や家具と、様々なものづくりに携わっている。
辺境に獣人の集落があり、ドワーフが作った"カタナ"で"居合切り"をしたり、メリケンサックをはめて"カラテ"なんかをやっている。
ここの蜂は武器を扱えるのだろうか?
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[南区]
ここは南区、『冒険者』という人達が集まる所。
『冒険者ギルド』という建物に人がたくさん集まっている。
パーティーを組んで、洞窟や地下遺跡に潜ったり、大きな樹の中を探検したりするのだ。そして魔獣の素材や取得物なんかを売って生計を立てているのだ。
蜂が素材になっていると思うとちょっとやだな………
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「こっちこっちー」
一通り見て回ったら、ホテルへ向かう。裏に蜂の巣がある。
お城ほどではないが、立派な建物だ。
絶対高いよここ。……ジヒナさん、どんだけ金持ってるんだろう?
ロビーでチェックインして部屋に案内される。
ここのエレベーターは魔法で動いてるね。
4096室
フカフカベッドだイヤッホゥ
ピョォン
ブハッ
「……」にこにこ
ジヒナさんはこちらを見て微笑んでいる。
「さて、もう6時だけど夕食とお風呂どっちを先にしようか?」
………………………………………………
[大浴場]
という事で来ました大浴場
長方形状の浴槽…… お風呂と言うよりプールみたいだ。
左右には石造りの柱と。正面には立派な石造がある。
お湯はコバルトブルーに輝いて、どこか神秘的だ。
…………
「入浴時のマナーを説明するね」
ジヒナいわく、私達の世界とはマナーが違うらしい。
まずは"水着"に着替える。スク水みたいな恰好だ。
そしてシャワーを軽く浴びる
私は髪が長いので、ゴムで留めて水に入らないように気を付ける。
そしてようやく湯舟に浸かる。
ぽちゃん
はふぅ……
ふぅ…… 旅に出て4日目かぁ。濃密な4日間だったなぁ。
久しぶりに気を抜けたなぁ…………
ふー…………
あれっ、何だか眠くなって……………………
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[2日目]
6時起床。清々しい朝だ。
うーん、蜂、蜂、蜂、あっシェードちゃん。ナデナデナデナデナデナデ。
「んへぇ、アオサぁ、おはようなの。」
「おはようシェードちゃん♪」
互いの指をちゅうちゅうしてから起き上がる。
ジヒナさんは~…… まだ寝てる。
ベッドに近づくと……
「!?」ビュン
見事な速着替え。一瞬で飛び起きて船長服に着替えたのだ。
「おはようアオサ、シェード。今日はダンジョンを紹介するよ。」
……
「おはようございまーす!!」
ホテルマンの少年が眩しい笑顔で挨拶する。
朝ごはんは…… トースト、ハム、目玉焼き、トマトだ。
ムシャムシャ、普通においしい。
……
ホテルの裏へ回って蜂の巣を観察する。霊蜂魔獣テルビーだ。
よーしよしよしナデナデナデナデ
シェードちゃんと一緒に戯れる。
ジヒナさんは離れて様子を伺っている。蜂はニガテなのかな?
「あっ、アオサ? そのぉ、蜂と戯れるのもいいんだけど、そろそろ行かないか?」
「あっ、そうだね。ごめんごめん。」
「また後でなの。」
……
今日はダンジョンの中に入ってみた。
最初はスライムとゴブリン。オークやリザードマンっぽい魔獣が見えて来る。
「蜂がいないね~」
「いないのよ~。」
「アオサは本当に蜂が好きなんだね。」
「うんうん、蜂と一緒に育ったようなものだからね。」
あっ、蜂だー…… 冒険者が蜂の巣を襲撃してる? 助けないと!!
「蜂になっちゃえ!!」
ぶーん?
よし、これで平和は守られた!
「アオサぁぁ!?!?」
おっと、ジヒナさんには刺激が強すぎたかな?
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[3日後]
私たちはまだミストア公国にいる。心音センサーで確認したところ、なんと船の外の時間が流れていないのだ。だが、そのせいでママと電話できないのだ。
ママの声を聴いてなかったせいか、時々プルプルするけど、シェードちゃんとナデナデし合って誤魔化す。
昨日助けた蜂の巣へ行ってみる。うん、元気にしてるね。
「ねぇアオサ、昨日の事だけど、いくら蜂が好きだからって、人を蜂に変えちゃうのはどうかとおもうよ?」
「もちろんニンゲンの命は大事だよ。でも、殺蜂はダメだね。」さらっ
「ニンゲンと蜂の命の重さが逆転してると思えばいいのよ。」
「あっ、うん理解したよ……」
……この時から記憶があまりない。
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[4日目]
今日は頭痛と吐き気がするね。
「アオサ、アオサ、今日は一日中ナデナデしてあげるの。」
うう、シェードちゃん……こんなマザコンでごめんなさい。
ジヒナ「アオサ、いったいどうしちゃったの?」わなわな
ジヒナさんが心配そうにこちらを眺めている。
「これは……たぶん……禁断症状だよ。」
今までは、反称龍ギスラヴァール戦やシェードちゃんが死にかけたり、キクラに理不尽に拒絶されたりして心を揺さぶられてきたけど、穏やかな時間が続くだけでこうも寂しくなるなんて。
ママに会えないのがここまで辛いとは…… あーでもここで帰るのは情けないなぁ。何とか自力で解決したいところだ。
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[5日後]
時々息が切れる。腕がプルプルする。
私はピンクボールになってシェードちゃん(女王蜂形態)にコロコロされている。
コロコロ……
コロコロ……
コロコロ……
シェードちゃんに母性を感じる。
「………」じーっ
ジヒナが黙って見つめてくる。
複雑な表情だ。ちょっと涙目。私のようなニンゲンは初めて見たのかもしれないね。
……とりあえず、外に出よう。
人に会いたくないから、赤血球で"ニンゲンに認知されない能力"を付与しておこう。
フラフラ、フラフラ
西区にある大学の校舎の屋根裏にスルッと入り込むと、蜂の巣があった。
全員ナデナデしてやった。
はあはあ。
……………………
全身蜂まみれで眠ってしまったようだ。
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[6日目]
「アオサ、アオサ、あたしじゃ満足できないのね。そうなのね。」ナデナデ
まずい、シェードちゃんが病んできた。まぁ私も病んでるんだけどね。
「シェードちゃん、もっと激しくナデナデするんだ!!」
「!!?!っわかったの!!!!!!!!」
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
「………」
私は頭が真っ白になった。ジヒナさんが何か言いたそうにしていた気がする。
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[7日目]
「……」にょーん
私はアメーバ状になって、シェードちゃんの膝にだらんとかかっている。
「………」
ジヒナは声をかけようとしたが、ふさぎ込んでしまった。
ニガテだけど、頑張って声をかけてみよう。
「ジヒナ」
「…………………」
「ジヒナ」
「……………………」
「ジヒナーっ」
「はっ!?」
「そんなに思い詰めなくてもいいんだよ?」
「でも私はっ」
「ナデナデしてくれると嬉しいなー」
「なっ……!?」
「ほらっ」みょーん
アメーバ状の手を伸ばしてみる。禁断症状でちょっとプルプルしている。
「…………」ごくり
ジヒナは意を決してナデナデしてみた。
「(ジヒナさん優しい手つきだ……)」
「(プルプルしてて意外と感触いい……)」
この時、私とジヒナはお互い初めて触れ合ったのだ。
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[8日後]
ママ!? どうしてママがここに?
アオサ「ママー」ぎゅっ
ジヒナ「アッ アオサ? しっかりして!」べしべし
アオサ「ああ……うん、ごめんね。」へにょっ
うん、ごめん分かってた。幻覚だってね。
………
………………
………………………
……あっ、ジヒナがママになれば全部解決する。
えいっ(赤血球)
>ジヒナに『特性:アオサのママ』を付与。
>ジヒナに『特性:母性』を付与。
>ジヒナに『特性:巨乳』を付与。
>ジヒナに『能力:母乳生成』を付与。
>ジヒナに『能力:ナデナデ』を付与。
>ジヒナに『能力:膝枕』を付与。
>ジヒナに『能力:子守唄』を付与。
>ジヒナに『能力:ほっぺたにちゅう』を付与。
「はうっ!?」ズキューン♪
どうしてこうなった!?
……………………ジヒナさんについては次回。