筋肉
筋肉の組成…
(ラリルリ列島、カンガシティ)
地下鉄を降りると、そこは寂れた海沿いの住宅街だった。
ラリルリ列島西部の町、カンガシティ
人口はアオサ5割でカンガルー5割、そして全人口がトレーニングジムに通うという異色の町でもある。
アオサ:「マラサダおいしいね」もしゃもしゃ
シェード:「チキンマラサダなの」もしゃもしゃ
防波堤に座って海を見る。
砂浜の手前に消波ブロックが詰まれ、沖の方にも消波ブロックがある。
波は静かに寄せては返している。
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カンガルーの顔みたいなスタジアム。中に入る騒がしい。
メガマッソウ:「ハッハッハ、アオサよよく来てくれた!」
Jr:「やっほー」
アオサ:「久しぶりメガお母さん!」
シェード:「相変わらず暑苦しいの」
相変わらずすぐに駆けつけてくれるカンガルーのお母さん。
メガマッソウ:「以前とは比べ物にならない程の強さを感じるぞ! さあ勝負だ!」
いきなり勝負をしかけてきたよ。
アオサ:「いいよー」
シェード:「今度こそぶん殴るのこの脳筋カンガルー」
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メガマッソウ:「喰らえ、《サンダーナックル》!」
ドゴォ
--こうかは ばつぐんだ!
アオサ:「ぐふっ…」ぱたり
シェード:「の?」
メガマッソウJr『ひかりぱんちー』
ドゴォォォォン
--こうかは ばつぐんだ!
シェード:「ほえー」
ぱたり
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メガマッソウ:「アオサよ、お主、同格との戦闘に慣れていないな?」
Jr:「なれてないな!」
アオサ:「う、うう……そうだね」
同格……確かにあんまり経験した事ないかも。
シェード:「待つの! どうしてカンガルーがそんなに強いの?」
メガマッソウ:「説明しよう、アオサ! この前オレに心臓移植をしたな?」
アオサ:「え、うん」
えーと、スラスラスターへ行く前、だったよね。
メガマッソウ:「この心臓からはな、望めば望むだけ無尽蔵にパワーが溢れてくるのだ」
シェード:「そういう事なのね」
私、危険物を配布しちゃったんだね……今更だけど。
メガマッソウ:「そして先程の《サンダーナックル》、これは雷タイプのワザだ」
アオサ:「! まさか!」
メガマッソウ:「そうだ、アオサは水タイプ、弱点を突いたのだ!」
なるほど圧倒的な戦力差ならともかく、同格なら弱点が有効なのかー。でも……
シェード:「待つの! 弱点と言ってもせいぜい2倍か4倍ダメージなの。そんなちんけな倍率、あたし達には無意味なの!」
そう、心臓に穴を開けて以降、倍率なんて無意味……なはず?
メガマッソウ:「確かに今まではそうだった。しかしだな、最近何かが変化したのだ」
シェード:「何かなの?」
メガマッソウ:「そうだ、何かは分からないが、使えるものは使うべきだろ?」
最近変わったもの……もしかして、シオサ?
ほわほわほわ〜
シオサ:「そうです、私が変えました。」
アオサ、シェード:「「シオサ!?」」
メガマッソウ:「お主がアオサの娘か?」
シオサ:「シオサと言います、お見知り置きを。」
エメラルドの髪を揺らしてスカートをつかんでカーテシー、ほんとよくできた娘だよ。
シオサ:「遅れながらルール変更のお知らせです。タイプ相性の弱点を突くと、ぼうぎょ=0、耐性=0でダメージ計算されるようになりました。」
なかなかシビアな設定。でもこのくらいじゃ死なないからね私たち。
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メガマッソウ:「ところで、アオサ戦隊というものを結成してみたのだが──」
シェード:「待つの、不穏な響きなの!」
アオサ軍団? … うっ、記憶が流れて来る…
アオサ:「ほとばしる汗、アオレッド!」
アオサ:「光り輝く筋肉、アオブルー!」
アオサ:「強靭なる首筋、アオグリーン!」
アオサ:「浮き出る血管、アオパープル!」
アオサ:「ゴツゴツの掌、アオシルバー!」
アオサ×5:「5人揃ってアオレンジャー!!」
HAHAHAHAHAHAHAHA
アオサ:「うわぁぁぁあああああ!?!?!?!?」
シェード:「いやぁぁぁあああああ!?!?!?!?」
筋肉だ! 筋肉ダルマに私の顔を取って付けたような筋肉の筋肉の筋肉……
大胸筋が、めっちゃ、ピクピクしてる、うげっ、
ごめん、ママ、交代──
──あらあら〜、アオサちゃんならみんな可愛いのよ〜♪
ユイキリ:「みんなーナデナデの時間よー」
アオサ:「「「「「はーい♪」」」」」
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
ナデナデ、ナデナデ
シェード:「地獄絵図なの…」
メガマッソウ:「ほら、ハチミツミルクプロテインだ」
シェード:「飲むの」ごくごくごく
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アオサ:「今日はありがとう」
メガマッソウ:「はっはっは、いつでも来ると良い、今度良い勝負ができると良いな」
アオサ:「うん、また来るよ」
シェード:「今度は針山にしてやるの!」
今日はいい体験だったなー
アオサ:「シオサは来ないの?」
シオサ:「ママ。自分の皮膚をよく見て」
えっ? 左手を見る。腕時計を確認するみたいに、じーっと……
私の目が捉えたのは……
シオサ:「ママー」
シオサ:「おーい」
シオサ:「やっほー」
シオサ:「えへへー」
シオサ:「ふぃ〜」
シオサ:「ビリビリ」
シオサ:「ブルブル」
シオサ:「ナデナデ〜」
わぁシオサがたくさんいる〜私の筋肉は全部シオサ細胞だ〜ナデナデしよう!
ナデナデ、ナデナデ
シェード:「なによこれ!?」
メガマッソウ:「ほう? 俺の細胞もオマエだったのか」
シオサ:「素粒子とか概念とか情報とか、宇宙の要素の大部分は私で埋め尽くしておきました。」
そうだ、シェードちゃんの身体もシオサだらけ!
アオサ:「シ〜オサ〜!」
シェード:「なのッ!?」ビクッ
ナデナデ、ナデナデ
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ごくごくごく
アオサ:「やっぱ独特だね」
シェード:「ココア味なら飲めるの」
ミルクプロテイン、ココア味。
ミルクココア色のような飲み物、喉に張り付く力強くて甘いココアの味。
口に広がり、鼻に広がり、胃までココア風味が広がっていく。
普通の液体、普通ののどごしなのに、筋肉を飲み込むような独特な味わい。
ざざーん
岸壁に腰掛けて、波音を聞き、そよ風を感じる。
ざざーん
プロテインをちびちび飲む。
ざざーん
平和なひと時。
ざざーん
遠くでヒーローショーをやっている
ざざーん
ざざーん
観客は私とカンガルーだ。
ざざーん
不意に死の予感が心臓へ、そして魂、心、存在へと伝播する。
しーん……
意識集中させる。
……
謎の第六感……顔面へのストレートが来る。
……
……
……
キクラ:「お姉ちゃん殴らせて!」
ガスッ!
妹の右ストレート、左後方に首をずらし、回避。
ガシッ!
右手で首を掴んで
ドゴォ!
地面へ叩きつける!
ツチビト:「いたーい」
シオサ:「ママ頑張って!」
ツチビト:「かいかーん」
大地は割れないけど、キクラにダメージは入った……はず?
キクラ:「ふごぉ……」にゅるっ
キクラの背中から、ワカメが生える!
ズボッ
左胸を突き破り、私の心臓へ!
シェード:「アオサー!!?」
ずずずずず……ガシッ
何かを掴んで取り出して……
キクラ:「……」
無言で立ち上がる。
キクラ:「……」
両手を開いて、閉じて……
アオサ:「えっと、キクラ?」
キクラ:「うふふふふ、久しぶりですねアオサちゃん♪」
なんてこった!
シェード:「ななななな、くそ女神なのー!」
髪が白くなって、イソギンチャクの髪飾り、そして足が裂けて8本のイカ足に!
女神さまが復活してしまった!
あと1話