老若の冒険者
奥へ進んできた俺達。レベルが二桁になっている俺達には、蜥蜴人を相手にしても余裕なのかもしれない。
とはいえ、集団対個人での戦いとなれば苦戦するかもしれないが。あくまでも個人対個人での戦いが余裕なのであって、複数の蜥蜴人を相手にすれば、勝てるかもしれないが、時間は掛かるだろう。疲れだってする。
願わくば、このまま数体の蜥蜴人を相手にするだけで済ませたい。時間を掛けたくないのと疲労を残したくない。
『ギギィ!!』
「また出たか!」
今度は十数体の蜥蜴人か。倒しきるまでに時間が掛かるな。
『ギィッ!』
『ギィギィ!』
『ギャッギャッ!』
なんかこいつら、仲間に合図のようなものを送ってるぞ? こんなこと初めてだ。何が起きてるんだ?
ってか、そうこうしている内に、蜥蜴人達が陣形のようなものを組み出した。次から次へと驚かされてばかりだ。そもそも蜥蜴人にここまでの知性があったことにも驚きだ。いや、軍勢を率いている段階で知性があるのは当然か。それなら指揮しているやつがいるということになるけれども、どこにいるんだ?
「サトルさん、見て下さい! あそこに蜥蜴隊長がいます!」
リザードコマンダー? 蜥蜴人と何が違うんだ? 名前からして違うのは分かるが。もしかして指揮官とか言わないよな。
「蜥蜴隊長は、数匹の蜥蜴人を従える者の事です。ちなみに全ての蜥蜴人を従えるのが蜥蜴指揮官と呼ばれています」
「ああ、つまりは部隊長みたいなものか」
蜥蜴指揮官が指揮官。蜥蜴隊長が部隊長。蜥蜴人が兵隊。ということか。蜥蜴指揮官が生まれたから蜥蜴隊長も誕生したのか、それとも蜥蜴隊長自体は最初からいたのか。よく分からないが。
『ギャッギャッ!』
『ギィギィ!』
くそっ、蜥蜴隊長の合図で統率の取れた動きをしてくるようになった。やりにくいこの上ない。こっちは助ける人間がいるというのに。
『ギィッギィッ♪』
なんか嬉しそうだな。ムカつく。
「まずはお前からだ!」
『ギィッ!』
あっ! 邪魔するな。俺は蜥蜴隊長を倒したいんだ。
「サトルさん、前に出過ぎると囲まれます!」
「くそっ!」
数が多すぎる。せめて、統率をしている蜥蜴隊長さえ、いなければ……倒してしまえば。
『ギィッギィッ♪』
こいつ……やっぱりうざい。
「──ウィンドクロス!」
『──ギィッ!!』
なんだ?! 風の刃が交差して蜥蜴隊長を倒したぞ? なにが起きたんだ?
「サトルさん! チャンスです。蜥蜴人達が混乱してる今なら!」
「あ、ああ!」
なんでもいい。せっかく巡ってきたこの機会を逃してたまるか!
「せいっ! やっ!」
混乱しているせいか、蜥蜴人達を次々と倒せていけてる。
蜥蜴人の中に新たな蜥蜴隊長が生まれる前に、全ての蜥蜴人達を倒さないと面倒なことになる。急がなくては。
……ふぅ。あまり時間を掛けずに全滅させる事が出来た。流石に指示する者がいなくなれば、強い軍勢も所詮は烏合の衆。というワケか。
「シャロン、ありがとう。おかげで助かった」
「いえ、私は何もしてません。チャンスだと言っただけで」
えっ? シャロンが援護してくれたんじゃないのか? じゃあ一体だれが?
「いやぁ、役に立てたかな?」
「ん? アンタは?」
うっすら生えている金色の顎髭で髭と同じ色の短髪の男が立っていた。この男、何者だ?
「──あっ! もしかして、先程の魔法はアナタが?」
魔法? ああ、言われてみれば、風の刃が蜥蜴隊長を倒したから活路を見いだせたんだもんな。
「ん? ああ、そうそう。で、どうだった? 助かった感じ?」
「はい! ありがとうございます。おかげで助かりました」
なんか、軽そうな奴だな。いや体がじゃなく、調子の良いという意味で。俺のいた世界でいうとチャラ男みたいな奴。とはいえ助けてくれたのは事実だ。礼くらいは、言っておこう。
「ああ、アンタ。蜥蜴隊長を倒してくれてありがとう。おかげで助かった」
「ん? ああ、男から感謝の言葉はいらねぇ。気持ち悪ぃし」
……うぅ、泣きたい。
「で、キミ。これから俺と遊びに行かない? こんなところにいても気が滅入るじゃん」
コイツ、ホントにチャラい……!
助けて貰ってなんだが、ムカつく! どうしよう……ぶん殴ろうかな。
「い、いえ……私は……」
シャロンも困ってるんだし、諦めてくれ。
「良いじゃん、減るもんじゃないし」
だから、諦めてくれ。分からない奴だな。
「あ、あの──」
「娘子が困っておるじゃろ。そこらで止めておかんかい」
あれ? チャラ男の後ろから誰か来た?
「げっ! 爺っ!」
「いい加減名前で名前で呼ばんか、フェズリ」
男の名はフェズリ。というのか。そしてこの白髪の老人は、彼の仲間らしい。しかし、フェズリが魔術師となれば、老人の職業はなんなんだ?
「小言はやめろよ、ヴァイゼ」
「やっと、名で呼んだか。小言、小言と言うが、お主が勝手をするからじゃ。女子と見れば、見境無し。それと冒険者だというのに魔術師と嘯きおってからに」
老人の名はヴァイゼか。それにフェズリは魔術師じゃなく、冒険者なのかよ。この男……。
「じゃあ、アン……アナタが私達を助けてくれたのですか?」
「畏まらんでもいい。お主らくらいのレベルなら、蜥蜴人如き雑魚じゃろうし。余計な事じゃったろうて」
いや、十分手間どってました。この爺さん、礼を言ってほしいのか? 面倒くさいな。
「ホント、面倒くさいじい──痛っ!」
「じゃから、名前で呼べと言うとろう」
ああ、フェズリくん……ご愁傷様。
「それとお主、ワシは礼を言って欲しいとか思っておらん。素直に余計なことしたと思っておるんじゃ。レベル高いもんはそういう輩が多いからのぅ」
「いえ、こちらこそ助かりました。急いで奥に行かなければならなかったので」
「いえ、こちらも集団戦はまだ不慣れでしたから正直助かりました」
これは本当のことだ。レベルは順調に上がっていっているが、今だ集団戦……乱戦に慣れていない。
「ふむ、そうかのぅ。それなら良かったが。レベルも10を越えておるから、集団戦も慣れておると思っておったよ」
「げっ! マジかよ。2人ともレベル二桁なのか?」
まあ苦戦してれば、そう捉えてしまうよな。
「レベルが高かろうと、状況に応じて結果なんぞ変わる。ワシとて、こう見えて何度も危険な目に──」
ああ、年寄り特有の長話か?
出来れば、勘弁したい。
「ヴァイゼさんは、レベルいくつなんですか?」
「ワシか? ワシはレベル28じゃ。ちなみにフェズリはレベル8じゃが」
レベル俺らより高っ! というか、前に別れたヘスト達よりも高い。
「ヴァイゼ、俺のレベルまで言う必要ないだろ」
まあ、彼にしたら不満だろうな。とりあえず頑張ってレベルを上げようか、フェズリくん。
「して、この奥に蜥蜴指揮官とお主らの仲間がおるんじゃろ?」
「……恐らくは」
なんだ? 手を貸してくれるのか? それなら、心強い事この上ないけど。
「うむ。ワシが手を貸そう。あとフェズリ、お主は危険じゃ。一足先に帰っておれ」
「ちょっと待て。俺も行く!」
これは遊びじゃないんだが。
「これは遊びではない。運が悪ければ、最悪命を落とす。それでも行きたいのなら──」
「大人しく街で待ってます!」
ヴァイゼも同じ考えだったようだ。というか、フェズリくん。即答だな。まあ、分からん事も無いけど。それにそういうところは素直なんだな。
「では、先に帰って待っておれ。帰り道はお守りは出来んがの」
「孫に言うことか! 帰るくらい余裕だよ!」
フェズリくんは、ヴァイゼの孫だったのか。しかし、本当に彼は大丈夫なのだろうか。
「さて、二人とも。一時的じゃが宜しく頼むぞい」
「「宜しくお願いします」」
俺達のパーティに一時的だが、ヴァイゼが加わった。