捜し人追って
メルカトール東部で蜥蜴人との接敵により、戦闘が開始された。
「《神よ、かの者に魔を退ける力を授けん……ストライクパワー!》」
「──せいっ!」
ギシャァァァァァァァァァァァァ!
まずは一匹撃破。
「──はっ!」
ギァャ!
続いて二匹目!
俺達は、互いの役目を果たしながら蜥蜴人を次々と倒していく。
冒険者の中には、槍を使う冒険者や魔術師、拳を使う冒険者。そしてシャロンと同じ治癒師など多種多様の冒険者が連携して蜥蜴人を倒していく。
皆、レベル高い冒険者なのだろうか? しかし、剣を使う冒険者がいないとは。なんかあったら、マズいな。もってくれ、俺の相棒。
キシャァァァァァァァァァァァァ!
「──っ!」
えっ? 俺の剣が折れた!? 良い音をして根本から折れた。
こんなときに……ツイテない!
キシャァァァァァァァァァァァァ!
簡単にやられるかよ!
ギィィィ!!
なんか、怒ってる? そんなにイライラしてると、大きくなれないよ?
「サトルさん! 拳か他の武器を!」
拳か他の武器をって。剣でもやっと使いこなせるようになったのに、他の武器を使える訳がないだろ、シャロン。それに拳って、素手で戦えと? というか──
「無理! 面倒くさい!」
「サトルさん! 今、そんなこと言ってる場合じゃありません!?」
はっ! つい本音が!? なんとか取り繕わないと……。
「さっきのは冗談だ! なんとかやってみる」
「戦闘中に、そういう冗談は止めて下さい……縁起が悪いです」
……すまん。以後、気をつけます。しかし、拳か他の武器をって言ってもな……。近くに落ちている武器は……あった!
ボロボロの剣に、少し新しめな槍。あと木で出来た盾。この盾で攻撃を防げるとは思えないから却下。剣も同様だ。ボロボロの剣なんて、俺の剣と同じ末路を辿るだけ。ということは、結論は……槍か。
「──ふっ!」
この槍、軽くて使いやすそうだ。先端を除いて木で出来ているからかも知れない。
さて、俺に槍を使えるような力があるか。問題はそこだな。まあ、やれるだけやってみよう。
キシャァァァァァァァァァァァァ!
「――はっ!」
キシャァァァァァァァァァァァァ!
固い……。使い慣れない武器じゃあ、上手くいかないか。
「――これならどうだっ!」
ギャシァァァァァァァ
首を狙った一撃が上手く決まったな。蜥蜴人の弱点は首か。というか、魔物は全て首が弱いだろうけど。そうと分かれば、対処も難しくはない。
キシャァァァァァァァァァァァァ!
「サトルさん、危ない! 《神よ、かの者に韋駄天の力を授けん……ラピッドパワー!》」
「シャロン、ありがとう! ――はっ!」
ギャシァァァァァァァ
これで槍に持ち替えて二匹目。シャロンのフォローもあるし、これはイケるぞ。
キシャァァァァァァァァァァァァ!
隊長らしき蜥蜴人が他の蜥蜴人に何か言ってる。なんだ? 突然、動きが変わった!?
「サトルさん、気を付けてください。魔物の動きに変化が起こりました」
「ああ、そのようだな。気を引き締めていこう」
「はい!」
シャロン、良い返事だ。さて、これからどうするか。決まっている。統率者がいるなら、統率者を倒せば、蜥蜴人の集団は烏合の衆となるはずだ。軍隊は頭を倒せば、軍隊として機能しなくなる。
「シャロン、援護を頼む。あそこにいる隊長らしき蜥蜴人を倒しに行く」
「分かりました。援護は任せてください」
ホント、頼りになる味方だ。会った時からそうだったが、しっかりしているな。
キシャシャ!
あの隊長格の蜥蜴人、何か部下に指示を出したぞ? 俺の行動を察知したか?
「シャロン、攪乱頼む!」
「了解です!」
くそ! なかなかやってくれる。隊長格の蜥蜴人の周りに部下を寄せてきた。やはり司令塔を倒すというこちらの意図に気付いたようだ。頭がよく回る奴だ。
「《神よ、彼の者を惑わす霧を起こせ!ディープミスト!》」
シャロンの術で辺りに霧が現れる。なるほど、確かに攪乱は出来るな。
キシャァァァァァ!
ギャッギャッ!
周りが見えなくて敵は混乱している。俺達の周りにしか霧は発生させていないから味方は混乱していないが、それでも俺も敵の姿が見えずに困惑しているのは、内緒の方向で。
キシャシャ!!!
この鳴き声はさっきの隊長格の蜥蜴人のものだ。何度か聞いたから恐らく間違いないだろう。
こっちか!
キシャシャ!??
突然、俺が現れた事に驚いている。驚かれようが関係ない。やる事は、ただ一つ。こいつを倒して敵に更なる混乱を与える事。
「――はっ!」
ギシャァァ!!!
キャッキャッ!?
隊長格の蜥蜴人を倒した事で部下の蜥蜴人達が混乱して、撤退していった。こういう所は人間と同じという訳か。やりやすいな。
「おい、司令塔を倒せば奴らは退くぞ!」
「そのようだな。これは好機だ!」
「借りは存分に返してやるぜ!」
どうやら、皆気付いたらしい。ここから冒険者達の逆襲が始まる。隊長格の蜥蜴人達には可哀想だが、戦いは非情だ。許してくれ。
しばらくして、蜥蜴人の襲来にも片が付いていた。
「サトルさん、ようやく終わりましたね」
「そうだな。あとはシャロンの幼なじみのヴォーデに会うだけだな」
あと武器も新調しないと。
[冒険者ギルド メルカトール支部]
魔物の襲来がひと段落つき、シオン達と合流していた。
「魔物の襲撃の件はお疲れ様。おかげで助かったよ」
「いえ、大したことは……」
そうだな。俺達は隊長格の蜥蜴人を倒して、他の蜥蜴人を退かせただけだし。
「それでヴォーデは何処に?」
「……それなんだが」
なんだろう? 歯切れの悪い反応だな。何かあったか?
「ヴォーデに何かあったんですか? もしかして!?」
「いや、彼は生きてるよ。ただ……」
生きてるけど何かあったのか? 怪我でもしたか?
「シオン、なに躊躇ってんだ。言ってやれよ。あの馬鹿は一人で蜥蜴人を追って、蜥蜴人の巣窟へ向かったってな」
「ヴィラル!?」
……なんだって? 一人で蜥蜴人を追っただって? 襲撃してきた奴らを全て倒したわけじゃないんだぞ。
「サトルさん!」
「はぁ……仕方ないか。蜥蜴人の巣窟はどこに?」
「場所?。ここから南東だが、まさか今から行くのか!?」
行くしかないだろう。だって、行かないとシャロン一人で行きそうだし。
「……分かった。止めない。だが、奴らがまた来る可能性もある。手は貸せないが、それでいいか?」
「ああ、分かってるさ」
本音は手助けしてほしいけど。無理は言えない。ああ、武器も新調しないとな。
「なら、これを持って行け」
ん? これはなかなかのものだぞ。
「俺の剣だ。バスタードソードだ。貸してやるから暴走した彼を連れて帰ってこい」
「ああ、ありがとう。少しの間借りる」
良い剣を借りたな。慎重に扱わないと。刃こぼれなんてするのもだし、折った日には顔を合わせられない。これ、いくらぐらいするんだろう? レンタル料を後で請求されないような。今日会った人間に気兼ねなく貸すなんて怖いな。まあ、気にしている時間もないか。仮に請求されたら、ヴォーデくんに任せよう。うん、そうしよう。
「さあ、行くか。シャロン」
「はい!」
俺達はシャロンの幼なじみであるヴォーデを追って、街の南東にある蜥蜴人の巣窟へと向かった。