リザードマン襲来
メルカトール支部で出会ったシオン・カムナ。彼の後に付いて彼らが泊まる宿屋へと向かっていた。
「あの……ヴォーデが、ご迷惑をお掛けしてませんでしたか?」
「ああ、大丈夫。ヴィラルに比べたら、可愛いもんだから」
ヴィラルとは、ギルドでシャロンにガンを飛ばしてたあの男か。あれと比べるのもどうかと思うが。あと、迷惑は掛けているようだ。
「まあ、アルクスへ戻るって言った時は流石に驚いて止めたけど」
「ごめんなさい……ヴォーデがやはり迷惑を」
猪突猛進タイプか。面倒くさそうだな。会社では絶対に関わりたくないタイプだ。プライベートでも関わりたくないけど。
「うーん。迷惑というか、面倒だったのはヴィラルと一悶着あった事かな。まあ、あれはヴィラルが余計なこと言わなければ解決してたから、迷惑ではないかもね。彼もすぐに落ち着いてくれたから」
「本当に、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません……」
なんか、シャロンが保護者みたいだな。苦労してるな。
「いやいや、迷惑だなんて。ホントに大丈夫だから。おっと、そろそろ着くな」
シオンが指差した方向を見ると、″宿処スパイラル″と書かれた看板が見えた。宿処って……。
「ここが俺達が泊まっている宿──」
カーンカーンカーン!
なんだ!? 鐘の音?
「──魔物襲来!?」
えっ? 魔物!?
「サトルさん、さっきの鐘の音は警鐘で。警鐘っていうのは、魔物襲来を報せる為に鐘を鳴らすんですよ」
うん、警鐘は知ってるよ。驚いてるのは、陽が暮れそうな頃に魔物襲来は有り得るのか? ということなんだが、ツッコむのは止めておこう。余計なことで怒られたくないし。
「シオン! 丁度良かった。魔物襲来の報せに困っていたんだ」
「どういう事だ? ヴィラル達はどうした?」
なんだなんだ? 何かあったのか?
「ヴィラルは警鐘を聴いて窓から飛び出すし、ヴォーデも負けじと追いかけるし」
「……そうか、了解だ。あの二人は放っておこう。まずは魔物を撃退しないとな。君達も力を貸してくれ」
困ったときはお互い様だからな。しかし、窓から飛び出すとか。
「はい、分かりました。良いですよね、サトルさん」
「街の危機に反対する理由がないよ。喜んで力を貸すよ」
喜んでではないが。軽く話し合いをして、街の西側をシオン達が。東側を俺達が。と分担して対応することとなった。まあ、衛兵や他の冒険者もいるだろうし。楽できるかな?
[メルカトール東部]
シオン達と別れて、街の東部に来たが、橋は上がっているし兵士が準備万端という感じで弓を構えて襲来に備えている。これなら、俺達の出番は無いような気もするが。
周りを見渡すと、俺達と同じような冒険者達がちらほら見受けられた。皆同じく、手持ち無沙汰という感じだ。
「シャロン、これ俺達の出番あるのか?」
「無い方が有り難いですが、気は抜かない方が良いかもしれません」
それもそうだな。だが、俺の剣はボロボロだから正直不安は残る。
「────見えたぞぉぉぉ! 敵はぁぁ蜥蜴人だぁぁ!」
蜥蜴人? RPGとかで出てくる蜥蜴人間か。
「おいおい、蜥蜴人かよ……」
「蜥蜴人がなんで、こんな所に?」
「俺に聞くなよ、知るワケねぇだろ」
周りの冒険者達が色めきだっている。まさかレアケース? しかし、兵士達は落ち着き払ってるぞ?
「皆、ここに滞在期間が短いんだと思います。冒険者は世界を旅しますから」
「だから、反対に街に住んでる兵士達は落ち着いていると?」
マジかよ……。あいつらって、確か防御力も高い上に、武器を使いこなすんじゃなかったか?
キシャァァァァァァァァァァァァ!
早い!? もう街の近くまで迫ってきている。
「……第一列、構え!」
隊長らしき男の命令で弓を持つ兵士が一斉に構え始めた。まあ、全員ではなく横三列に並んだ兵士の内、1列目がだが。
「……放てぇぇぇぇ!!」
隊長の号令で、1列目がの兵士が一斉に矢を放ったぞ。これ、もう戦争じゃないか。ただ敵方も賢いのか、盾を使って防御していて被害もたいしたことは無かった。
「……第二列、構え!」
隊列が入れ替わった。なるほど。織田信長がやった三段撃ちか。弓でそれやるのか? という疑問は置いておこう。
「……放てぇぇぇぇ!!」
鉄砲と違って、矢の速度は加速しないから、三段撃ちは二番煎じでしかない。その証拠に、しっかりと防御していて一撃目より被害が少ない。
「蜥蜴人っていってもこの水路を渡れるワケじゃ無いんだ。別にあんな奴等……」
キシャァァァァァァァァァァァァ!!
げっ!? アイツら全員、製材されている木材を背負っていやがる!? それを水路に置いて、即席で橋を造ったぞ!? 俺の知ってるリザードマンじゃない!
「くそったれ! 迎え撃つぞ!」
「ああ、神よ。私達に勝利を……」
皆、予想外の事に混乱している。くそったれ、俺達も戦うしか無いじゃないか。
「行くぞ、シャロン」
「はい!」
俺達は各々の武器を構えて、魔物に迎え撃っていく。