帰路へ
蜥蜴統率者を倒したけど、満身創痍なのは変わらないな。
「ヴォーデ、勝手なことしちゃ駄目でしょ」
「オレの勝手だろ! 誰が助けに来てくれなんて言ったんだよ」
シャロンはヴォーデくんの母親かな? と思えてしまう。それとヴォーデくんもそんな事言っちゃ駄目だろ。彼女がどれだけ心配したと思ってるんだ。と口に出すのはやめておく。余計な火種持ち込みたくないし。
「私達が来なかったら、危なかったでしょ!」
「うぅ……」
正論を言われてぐうの音も出ないか、ヴォーデくん。
「だから、もうやめて……」
「……ああ、分かったよ。悪い……助かった」
あんだけ強気なヴォーデくんも幼なじみには、形無しか。女は強し。とはよく言ったものだな。
「私だけに言わないの。皆にも言わないと」
「はぁ? なんで──っ! 分かったよ……」
シャロン以外には強気だな、ヴォーデくん。
「……爺さん、迷惑掛けた。悪かった」
「まあ、若気の至りとも言うしの。次から気を付けるんじゃぞ」
若気の至りか……俺も気を付けよう。
「…………」
なんだ? 黙ったまま、俺を見て。
「テメェ、シャロンに手を出──っ!」
「ヴォーデ? サトルさんにも、謝って?」
珍しいな。シャロンが手を出すなんて。
「じゃあ、コイツとどういう関係か言えたら、謝ってやるよ」
「サトルさんとの関係?」
いや、どういう関係と言われましても……。
「サトルさんとは……仲間だけど?」
「今の間はなんだ! 今の間は!」
歯切れの悪いシャロンも珍しいな。どうしたのだろう?
「ほうほう。なるほどのう。青春じゃのう」
「ん? どういう?」
意味不明な事を言わないでくれ、ヴァイゼ。
「サトルさんは仲間! これで良い?」
「……分かったよ。おい、アンタ。助かった、ありがとな」
シャロンが真っ赤になってるのも分からんけど、まあヴォーデくんが納得したなら、いいか。
「だけど、テメェには負けねぇからな!」
「ん? どういう──」
「ヴォーデ!!」
ヴォーデくんもよく分からないが、シャロンも何故顔を真っ赤にする? よく分からん。
「鈍いのぅ……」
「ん?」
ヴァイゼが何か言ったようだが、聞こえなかった。まあ、二人を見て、呆れているのだろう。しかし、負けないとは? 何か勝負でもしたか?
もしかして、倒した蜥蜴人の数で競争でもしていたのか。それなら、俺よりヴォーデくんの方が多く倒していると思うんだが?
俺なんて洞窟に入ってから数十体倒した程度だし。ヴォーデくんなら、俺の倍はいっているだろう。
「よく分からないが、勝負なら俺の負けでいいよ」
「サトルさんも何言ってるんですか!?」
何故か怒られた。意味分からん。
「蜥蜴人を倒した数を競ってたんだろ? なら、俺の方が少ないだろうし。負けってことだろ?」
「へっ?」
「……コイツ、バカなのか?」
なんか、二人に馬鹿にされてる。ムカつくな。
「サトルよ。この娘子はの──」
「黙れ、ジジイ!!」
ああ、また火種が一つ……。
「仕方ないのう。フェズリも街で寂しがっておるじゃろうから、帰るとしようかの」
申し訳ないが、恐らく喜んでると思う。何故かは言えないが。
「誰かは知らねぇけど、口うるせぇジジイがいなくて、清々してんじゃねぇの?」
間違いではないだろうが、それくらいにしておいた方がいいぞ。ヴォーデくん。
「ホント、口が減らんのぅ。とりあえず洞窟を出て、街まで戻るとするかのう?」
「そうですね」
俺達は洞窟を出て、暫く砂漠を歩いた後にメルカトールの街へ辿り着いた。
「さて、ここで別れじゃな。また会うこともあれば、宜しく頼むぞ」
「はい。再会できることを願ってます。その時は宜しくお願いします」
「正直、助かった。魔導師という職は伊達じゃ無いな。アンタがいなかったら、蜥蜴統率者を倒せたか分からなかったよ」
割とマジで。
「ほっほっほっ。そうか、そうか。それはうれしいのう」
「はぁ!? じ、ジジイ。上位職だったのか!?」
あれ? 上位職ってなんだっけ?
「ワシなんぞ、ただの老いぼれじゃ。昔取ったなんとやらじゃ」
どうやら一度取得すれば、剥奪されなければ持ち続けられるらしい。死ぬまで戦うのは御免被りたいが。
「そろそろ行くぞい。フェズリに怒られてしまうからの」
「ええ、またどこかで会いましょう」
ヴァイゼと挨拶を交わし、俺達は彼と別れた。またいつか会える。きっと……。
「……さて、冒険者ギルドへ行こう。報告をしないといけないからな」
俺達は冒険者ギルドへと向かった。




