討伐
奥へ進むと、数多くの蜥蜴人がひしめき合っていた。うん、気持ち悪い!
「なんちゅう数じゃ!?」
同感です。それと蜥蜴統率者の奴、最後方辺りで陣取って余裕かましてる!? なんか、ムカつくな。人の言語話せるから余計に。
『ニンゲンメ、ココガキサマラノ、シニバショダ』
「けっ、ほざいてろ。蜥蜴野郎!」
喋り方とかも雄っぽいけど、ホントに野郎なのか? まあ、そんな事は置いといて。
「ヴァイゼ、これだけの蜥蜴人を捌けるか?」
「うむぅ。やったことは無いから分からんが、やるだけのことはやろう」
熟練者に感じるヴァイゼでも難しいか。それも仕方ないか。だって、目の前にいる蜥蜴人はざっと数えても百以上はいそうだ。
「さっそく行くぞ?《地よ、敵なる者に鉄槌を与えよ。アースブレイク!》」
岩が滝のように、蜥蜴人達の頭上へと降り注いだ。
蜥蜴人達は悲鳴を上げながら岩の濁流に呑み込まれた。蜥蜴人じゃなくて良かった。
「続いて喰らえ《風よ、敵を貫く槍と化せ。ウインドスピア》」
次は風で出来た槍が複数の蜥蜴人の腹を貫き、消えた。残ったのは、多くの蜥蜴人達の死体だけ。改めてヴァイゼの凄さに驚かされた。
「連続で魔法を使っても、大した数は減らせんか……」
「今のところは十分だ。あとは俺達がやるから、ヴァイゼは今の内に休んでいてくれ」
戦力を温存するのも戦略のうち。先程の攻撃は、適当に放ったものではなく、蜥蜴隊長を狙って攻撃していることは見てて分かる。何故かって? 蜥蜴人が混乱し始めたから。だけど、あの一瞬で蜥蜴隊長が何処にいるかを見分けたなんて、凄いという言葉しか見つけられないけど。
「蜥蜴野郎ども! ギィギィうるせぇぞ。落ち着きねぇな!」
蜥蜴人も君には、言われたくないと思うけど。まあ、次々と倒してくれるのはこちらが楽できて良いけども。
『オチツケ! ヤルコトハ、キサマラニツタエタ! ソノトオリニウゴケ!』
うげっ! 混乱していた蜥蜴人達がもう立ち直ってる!? 流石に早すぎる。これも蜥蜴統率者の力なのか?
「なんだ、コイツら! 急に動きが変わりやがった! ああ、うぜぇ!」
ああ……ヴォーデくん、もう少し落ち着いて。敵の思う壺だよ?
「面倒な相手じゃな。どうする? また撹乱させた方が良いか?」
「いや、ヴァイゼは力を温存していてくれ。ここは俺達でなんとかする」
「うむ、承知した」
面倒だが、魔法を使える人間は貴重だ。前衛が二人いるならであれば、なるべく敵の数を減らすのに力を振るわなければならない。ああ、転生しても理不尽に働かされるのは変わらないのか。
「おりゃあ!」
「掩護するぞ。《火球よ、我を阻害する者を……撃ち抜け。ファイヤーショット!》」
『ギャッ──!』
『ギィッ──!』
ヴァイゼとヴォーデくんのおかげで、半分近くの蜥蜴人を倒せてはいるが、まだ数十体もの蜥蜴人がいる。そして奥には手強い蜥蜴統率者が悠然とこちらを見ている。
「ボケッとしてんじゃねぇ! まだ蜥蜴野郎はいるんだぞ!」
「ああ、そうだな。すまない」
まさかヴォーデくんに叱られるとは。俺もまだまだ未熟というわけか。頑張らねば……。
「おりゃあ!」
「せいっ!」
一体、二体……着実に蜥蜴人の数は減っている。たけど、皆の疲労はピークを到達しているだろう。俺がそうだし。ヴォーデくんなら尚更のことだ。彼も肩で息してるし。ヴァイゼもMPがそろそろ尽きるだろうし。
「ヴォーデくん、大丈夫か? 疲れてるなら、休んでいてもいいぞ」
「うるせぇぞ! 人を勝手に年寄り扱いすんじゃねぇ!」
いや、年寄り扱いしてはいないけど。心配してるだけなんだけど。
「ヴァイゼは大丈夫か?」
「うむ……魔法を使えるのは、あと一発くらいじゃな」
あと一発か……厳しいな。俺も魔法は一発。攻撃か回復。どちらかに使うべきか……。
「おりゃあ!」
また蜥蜴人を一体、倒れた。蜥蜴人も蜥蜴統率者を護る者を除いて全て地に伏していた。
ようやく終わりが見えてきた。どちらが勝つとしても。
『オノレ、ニンゲンメ。シブトイ』
「ああ、オレは諦めが悪いんだよ」
しぶといって、死にたくないからね。お互い様だと思うけど。
『ダガ、ココマデダ。シニカケニ、ワレハタオセン』
「けっ! ほざいてろ」
こちらが満身創痍なのを分かってるな。だけど、負けるわけにはいかない。敵は蜥蜴人四体と蜥蜴統率者の合わせて五体のみ。
「おりゃあ!」
「ああ! 勝手に行動しちゃ相手の思う壺だって──」
『フッ、オワリダ!』
あっ! 蜥蜴統率者がヴォーデくんへ攻撃をっ!
「《──プロテクション!》」
『──ッ!』
なんだ!? ヴォーデくんの前に盾のようなものが。
「ヴォーデ!」
「よっしゃ! これで終わりだぁ!」
シャロン!? いつの間に来てたんだ? それより蜥蜴統率者が動揺している今なら倒せるチャンスだ。流石にヴォーデくんでも、そのチャンスを見逃さないか。これで終結か。
『──クッ!』
あっ、また逃げた! 今度はシャロンの方へ向かっている。これはヤバイ!
「そう何度もやらせると思うか? 《風よ、全てを閉じ込める檻と化せ……ウインドケージ!》」
蜥蜴統率者とヴォーデくんの周りに風の檻が発生し、二人を閉じ込めた。
「──逃がすかよ!」
『ニンゲンガ!』
ヤバイ! ヴォーデくんより蜥蜴統率者の方が速い。このままだと、やられる!
「やらせるか! おりゃぁ!」
『──グッ! オノレ、ニンゲン!!』
俺が投げた剣は、蜥蜴統率者の左腕に刺さり動きが一瞬止まった。
『コンナモノ──グッ!』
『ギギィ! ギィッ──!』
あの風の檻、なかなかに有能だな。檻に触れるとダメージを受ける仕様らしい。おかげで逃げようとした蜥蜴統率者や助けようとした蜥蜴人達が軒並み、ダメージを負っている。まあ、こちらもダメージを受ける可能性がある以上は、近付けないのだが。
蜥蜴人も全て倒せたし、残るは蜥蜴統率者のみ。
『ニンゲンメ!』
「か、風の檻を消した!?」
「バカな!?」
いや、ヴァイゼの魔法は凄い。だけど、それを破る蜥蜴統率者はヤバすぎる。
瀕死のくせになんてしぶとい奴! とどめを刺さないと……でも、武器が……あっ、そういえばシオンから借りたバスタードソードがあった!? 蜥蜴統率者に投げたの俺の剣だったっけ。すっかり忘れてたよ。まあ、その剣も折れた状態で地面に転がってるけど。
よし、完全なる幕引きを!
「とどめだっ!」
『オノレェェェ!』
俺が振り下ろした剣は、蜥蜴統率者の体を真っ二つに斬り裂いた。
『……ニンゲン……コノウラミハ……グフッ!』
いや、やめて。死に際に怖い言葉を残すの。
「へっ! 蜥蜴野郎がほざいて死にやがった。ほんと笑わせてくれるぜ」
いえ、とてもじゃないけど笑えません。呪われたくないよ、俺は。
まあ、そんなこんなで俺達は蜥蜴統率者を討伐した。




