奥地へ……
俺達は、蜥蜴人の巣窟へ入った後、道中でヴァイゼという魔導師達と出会い、一時的ではあるが仲間に加わえてシャロンの幼なじみであるヴォーデくんを連れ戻すために更に奥へと歩を進めていた。
蜥蜴人の巣窟は、光が届かない為に奥へ進む度に暗くなっていく。巣窟の奥地まで着いたし、あとは彼を捜すだけだが。道中、死体などは見つけることは無かったから無事だと思うが。
「──のっ! テメェら、邪魔──がっ!」
「この声は、ヴォーデ!?」
どうやら、この奥に捜し人はいるようだ。そして苦戦していることも彼の言動から分かる。
『ギィッギィッ!』
『ギィッ!』
それも蜥蜴人の群れと戦っているようだ。
「ヴォーデ、大丈夫ですか!」
「その声は、シャロン!? 来るな、こっちは危険だ!」
ヴォーデくんの言葉は正しい。……シャロン一人ならな。
「せりゃ!」
『ギィッ!』
まずは一匹。
『ギィッ!』
『ギャッ!』
これで三匹。あとは流れで蜥蜴人達を狩っていけば、すぐに片が付く。
「……なんだ、あの野郎は」
「──なっ!」
蜥蜴人達の動きが変わった。個々で攻めてきた蜥蜴人は、統率されたかのような集団で攻めるという動きになった。
どうやら、蜥蜴隊長がいるようだな。
そうと分かれば、蜥蜴人と蜥蜴隊長の見分ける事も可能だ。
見分け方は難しくない。容姿が違うのか? 否。容姿は皆、同じだ。では何処が違うのか。それは右腕の部分だ。
蜥蜴隊長は、右腕には赤色の腕章のような物を巻いている。
つまり、腕章のような物を巻いているかいないかの違いだ。
この違いから、辺りを確認してみると、蜥蜴隊長は蜥蜴人の後ろに隠れている。ここからじゃ時間が掛かる。だか、俺達にはこういう時に頼れる仲間がいる。
「ヴァイゼ、後方の蜥蜴隊長は任せた! 俺達は、眼前の蜥蜴人達を排除する」
「うむ、任された。《旋風よ、我らを仇なす者を切り裂け。ウインドスラッシャー!!》」
『ギャッ!』
後方で意気揚々と指揮に専念していた蜥蜴隊長は、ヴァイゼが放った風の刃によって切り裂かれ、その場に倒れ事切れた。
『ギィッギィッ──!』
『ギィッ──!』
やはり隊長格を倒すと、指揮系統が乱れて蜥蜴人達は混乱するな。
「あとは頼んだぞ」
「ああ。任せてくれ。あとは蜥蜴人の掃討だ!」
これくらいの後片付けくらい出来ないようじゃこれから先、仮にパーティーを組んだときに仲間に迷惑を掛けてしまう。さっさと片付けてしまおう。
しかし、一体何体いるんだ? 数が多すぎないか?
「シャロン、援護は不要だ。後のために余力は残しておいてくれ」
「分かりました」
といっても、残るのは混乱している蜥蜴人達だけだし。俺一人でも問題ない。まあ実質、俺とヴォーデくんの二人だけど。
「ヴォーデくん、今助けるぞ!」
「なんだ、テメェ! なんで、オレのこと知ってやがる。つうか助けろなんて言ってねぇぞ!」
ああ、なんか面倒くさい子だな。ヴォーデくん。ちなみに彼は黒髪ショートで髪をかきあげた感じ。誰に言ってるって? 気にするな。
「ヴォーデ、助けに来たのになんてことを!」
「シャロン、ここに来たのはオレの意思だ。お前は、街に戻ってろ。それと、コイツらをこのまま放っておく訳にはいかねぇからな」
シャロンの優しさを無下にするとか、ダメだろ。彼女はヴォーデくん、君の為を思って言ったのに。
「仕方ないな。ここは蜥蜴人を倒しきってから話し合いに入るしかないな」
「だから、助けろなんて言ってねぇって!」
はいはい。とりあえず話し合いに邪魔となる蜥蜴人達を倒さないとな。
「援護が必要になったら、言うんじゃぞ」
「ありがたいけど、今は良い」
援護されたら、ヴォーデくんが五月蠅そうだし。
「うりゃぁ!」
『ギィッ──!』
道中、多くの蜥蜴人と戦ってきたハズなのに疲れを見せてないとか、若さからなのか体力が凄いのか。
「せいっ!」
『ギィッ──!』
数は多いが、混乱している蜥蜴人を相手にするのは、難しくない。しかし、いつ混乱から復帰するか分からない以上、暢気に戦うのは得策じゃないな。
「お前らは! 大人しく! オレに! やられてろ!」
『ギィ──!』
『ギィッ──!』
『ギャッ──!』
『ギャ──!』
一気に四体の蜥蜴人を倒した? ヴォーデくん、レベルが高いのか分からないが、なかなか強いな。俺も負けてられないな。
「はっ! そりゃ! ていっ!」
『ギィッ!』
『ギャッ!』
『ギッ!』
連続でも三体が限度か。なんか、悔しいな。
しかし、蜥蜴人の数は一向に減らないな。一体、どれだけいるんだ? このままだと、奥にもまだいる可能性も考えなくてはいけないな。ここは、一旦撤退して体勢を整えた方が良いだろう。
「ヴォーデくん、ここは撤退して体勢を整えよう!」
「はぁ? 何言ってんだよ! 臆病者は、とっとと帰ってろ」
酷い言い様だ。冷静に考えても、それが妥当だと云うのに。
もう少し強く言い聞かせるべきと、後に反省することとなった。




