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第9話 「移動中です」

俺はジムススと共に騎士団に連れられ、バベルタワー最上ブロックを『ムーブボックス』という乗り物に乗ってタワー王が待つ王城へと向かっている。...らしい。


『ムーブボックス』とはなんぞや?と俺も最初は騎士団からの説明を聞いたときは疑問に思った。俺は質問したい気持ちで満々だったのだが、ジムススの方を見るとあまり驚いた感じではなかったので、この世界では珍しいものではないのだろうと判断し、俺は高ぶる気持ちを抑えた。


当初、俺が供回りとして名前が知っていて且つ執事ぽいジムススを選んだことに当の本人はスタイリストであるのだから不満げに来るだろうと思っていたのだが、


実際は、


「ストン様、フライングキノコティーは如何でしょうか?」


なぜキノコだけその言い方!?てか何フライングって?


「ああ もらおうか」


「畏まりました」


執事感満載である。というかなんか楽しそうだ。


「ジムススよ 突然こんな面倒な仕事に付き合わせてすまぬな」


「いえいえ旦那様...あっ! ストン様! 私はこのような仕事に就けることに至極感激しております。私の憧れの職業の一つでしたから...」


とこんな感じで満足そうに働いてくれていたのでとりあえずは良かった。


俺が今回の王城に行くにあたりジムススを連れて来たのにはもう一つ理由がある。


俺は礼儀作法が分からないからだ。新人社会人として最低限のマナーは教えてもらってはいたが、今回の相手は取引先ではなく王だ。例え内の社長でも緊張せずにはいられない相手であろう。


そして、『ムーブボックス』の中で俺はジムススの執事対応に感銘を受けながら、バベルタワー最上ブロックの街並みを窓から眺めている。


『ムーブボックス』はざっくり言うと...まあ電車だ。


俺が通勤で使っていた電車のようにパンタグラフやレールはない。その代わりに石造りの地面に引かれてある黒い線の上を沿うようにして俺たちが乗った漆でも塗ってあるのかと思わせるような綺麗な光沢が美しい真っ黒な箱が高速で移動している。


その『ムーブボックス』の箱内には俺とシムスス、真っ黒な鎧を纏った十人ほどの騎士団がいた。


王は黒が好きなのか?黒ばっかりだな...


全身赤だらけの俺が言えたもんでもないが...


本来なら騎士団に連行...されているこの状況はあまり良くない状況なのかもしれない。


だが、俺はとてもワクワクしている。


何故ならば窓から見える外の街並みが俺を圧倒するからだ。


ここは本当にタワーの中なのだろうかと思わせるほど広大な街並みが広がっていた。鎧を着た騎士が出てくるからてっきりヨーロッパの街並みが存在していると勝手に思い込んでいたのだが、


そこには、


幾重にも積みかせねられた石、なんらかの金属、木材を材料にした箱型の住居が連なっており、巨大なビル群で犇めきあっていた。そのビル群の間を縫うようにして幾つもの橋が掛けられており、多くの人や亜人で忙しなく行き交っている。

ビルとビルの間にはあらゆるところで洗濯物がぶら下げられていて生活感が見受けられる。この辺は岸庄助がいた世界でも見られる光景かもしれない。


だが、異世界ならではの光景もあった。犇めき合うビル群の隙間をモンスターが滑空し、亜人が空を飛びながら買い物をしており、人間が挨拶をしている。


なんとも平和そのものの光景だ。コンクリートジャングルではないが、見た目は東京のビル群に似ているかもしれない。だがここにはローカルなコミュニティーがあり、人、亜人、モンスターが直接繋がりあっているかのように思える。


先ほど騎士団のリーダーは団員であるアークティック。亜人のことを軽蔑し、団員達の前で罵っていた。だが、それはこのタワーにいる全員を代表する行為ではないようだ。一部の者だけを見て決めつけてしまうのは良くない。


『ムーブボックス』に入った際に、騎士団のリーダーが俺にこっそりと近づいてきて何を言うのかと思ったら


「先ほどは申し訳ありませんでした.... 一応騎士団は亜人とは関わらないという規定がありまして... 特に王が亜人嫌いなのですよ...我々も合わす必要が... ただアークティックさんには会わす顔がありません。後ほど謝罪していたことを伝えてもらえますでしょうか?」


これは驚きの展開である。


だいたい騎士というのは住民の敵だろう。そんなテンプレ騎士団が現れ、俺は多少怒りは湧いたものの、異世界展開に興奮していた。


この記憶は抹消しなければ....


まあ異世界の現実も簡単ではないのだろう。仕事柄と本人の意思が一致しないことは珍しいことではない。


「わかった。伝えておきますよ」


敬語とタメ語が混じったな...。俺はどちらで行くべきか....。


「ありがとうございますっ! 今度プライベートでお会いできる機会があれば私から謝罪に参りますっ! 私の家族は皆レッドサーカス団のファンなんですよ。なので家では私は完全に魔王ポジションです....」


この騎士は笑いながらもどこか悲しげな表情していた。


家族がいる人間は立派だ。


岸庄助は一人暮らしだから他人の事を考えるという事は無かったが、それが人を成長させていくのかも知れない。


「こちらこそありがたい限りです」


「申し遅れました...私はこの騎士団、タワーディフェンサー隊の隊長、ジク・ローランドと申します。 ではまもなく王城が近づいて参りましたので...これからはまたあの嫌な奴に戻るのでご了承をっ!」


「ハハハっ 面白い!」


「まもなく王城だ! 団長と供回りは準備をするようにっ!」


本当に急に態度が変わったな。


プロというべきか?


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