覚悟
大幅に修正しました。話が変わっているのでご注意下さい。
私はノワールを連れて、水辺を探して森の中を歩きます。
先程から喉がカラカラなのです。
きっと、泣きすぎたせいでしょう。
ぜぇはぁと息をしながら、月明かりだけを頼りに森の中を進みます。
ただでさえ困難なのに、慣れない片目で歩くのは至難の業です。
ノワールは私の横を歩き、余裕の表情を浮かべ、私の疲れている様子を面白そうに眺めています。
服はドロドロ、髪はボサボサで足は傷だらけ。
疲労もたまり、私の不様な様子がそんなに面白いのでしょうか?
まぁ、それはいいとして……ノワールは何故横を向きながら歩けるのでしょう。
横を向きながら、障害物を避ける姿は少し気持ち悪いです。
「シュゼット。気持ちが顔にでてるよ」
ノワールに、にっこり微笑まれて指摘される。
笑顔が恐すぎます。
引きつった笑みを浮かべ、話を変える。
「ところで、私は水辺を探して野宿をするつもりだけど、ノワールはどうするの?」
ノワールが目を見開いて、固まってしまいました。
野宿が嫌だったのかしら? そうよね、綺麗なノワールに野宿は似合わないわ。
「シュゼット。仮にも私の主なのだ、野宿なんてやめてくれ」
再起動したノワールが、ため息を吐きながら答えます。
「そんな事言ったって、森の中に家なんかないわ。野宿するしかないじゃない」
「そうだった……。わかった、シュゼットに相応しい住み家を用意しよう」
「そんな事が出来るの?」
「もちろん、すぐに出来る。それと、気になっていたのだが……シュゼットの今の姿は、最先端のファッションかい?」
「これが最先端なら良かったわね。ただボロボロになっただけよ」
「やはりそうか。変わったファッションだと思っていたのだ」
召喚されたばかりで、人間界の事には疎いのでしょう。
ノワールは私の姿を、上から下までじっくり観察していました。
「はぁー、もう疲れたわ。一体水辺はどこにあるの?」
「10キロ程西に行った所にあるが、シュゼットは鍛錬していたのではないのか?」
「動きにくいドレスで、おまけに裸足で、こんな格好で誰が鍛錬なんてすると思うの」
ノワールはまた固まっている。
驚いているのだろう。
どこに驚く要素があるというのだ。
「クフフ……。おかしいと思っていたのだ。ならば、転移魔法を使えばいいだろう?」
「簡単に言ってくれますが、そんな伝説級の魔法を私は使えないわ」
「転移魔法が伝説級だと? そうか……ならば私は先に行って準備をしておこう」
ノワールはそう言うと、転移したのか、一瞬にして姿を消した。
人間にとっては伝説級の魔法を、いとも簡単に扱う悪魔は、どれ程の力を有するのでしょう。
だから昔から人間達は、その力を欲っした。たとえ、死ぬ可能性があったとしても……。
私は魔石のピアスがなくても、悪魔を召喚したでしょうか……。
代償として命を取られる覚悟はしていた。
しかし、召喚する時に死ぬ覚悟はなかった。
私は甘い。
全てに対して……。
よくランドール公爵にも言われた。
「お前は詰めが甘い! 私が気づかなければ、お前は足元をすくわれていたぞ!」
あの時から成長してると思っていたのに、私は何一つ成長していない。
同じ事を繰り返して……。
もう貴族ではないというのに、抜けない貴族としての立ち振る舞いに、言葉使い。
もう未練なんてないはずなのに、いつまでもシュゼット・ランドールを引きずっている。
自分の情けなさに腹が立つ。
情けなすぎて涙がでます。
シュゼット・ランドールはもう死んだのです。
私は今日、平民のシュゼットになり『復讐』を誓った。
それに甘さはいらない。
私は『魔物を統べる者』。
人々を地獄へ誘う者。
涙を拭い、拳を握りしめ前を見据える。
覚悟を新たに、私は暗い森を歩き出す。
早くざまぁしたかったですが、カットした所をやっぱり書きたくて
書き直しました。