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養女になりましたージゼル視点ー

 パーティーが終わると、私はセドリック様にエスコートされ、王家の馬車に乗り込みました。


 王家の馬車の内装は豪華で、フワフワなクッションの座り心地は凄く良い。

 馬車の振動が気にならないもの。

 でも、外装は思ったより派手ではなかったわね。

 少しがっかりしたわ。


 少しして馬車は止まった。

 もう、王宮に着いたというの? 早すぎないかしら。


 そしてまたセドリック様にエスコートされ、馬車を降りた。

 そこは王宮ではなく、誰かは分からないが貴族の屋敷である事は分かった。


「ようこそ殿下。我が娘のために御足労いただき感謝致します」


 声がした方へ顔を向けると、そこに精悍な顔をした初老の男性が立っていた。


「あぁ。詳しい話は中で聞く」


 今まで気付きませんでしたが、セドリック様のお顔の色が悪い。


「セドリック様大丈夫ですか? 体調が優れないのですか?」

「大丈夫だ。心配をかけてしまってすまない。悪いがジゼルも一緒に話をしよう」

「ならいいのです。私はかまいませんわ」

「ランドール公爵。ジゼル・ミューラー伯爵令嬢だ。ジゼル、こちらはフレデリック・ランドール公爵だ」


 私は最近ちゃんと出来るようになったカテーシーをした。


「ジゼル・ミューラーです。以後お見知りおきを」

「ふむ……よろしく。それでは中へ」


 ランドール公爵に続き、セドリック様と私は屋敷の一室に通されます。

 ソファに座り、侍女が3人分の紅茶の入ったカップをテーブルに置くと、部屋から退室していきました。


 ランドール公爵が紅茶を一口飲んだ所で、私とセドリック様も紅茶をいただきます。

 うちの紅茶よりおいしいわ。きっとお高い茶葉ね。


 紅茶を味わっていたところで、ランドール公爵が話始めます。


「人払いは済ませてあります。殿下が聞きたいのはシュゼットの事でしょう」

「あぁ。ランドール公爵。なぜシュゼットをわざわざ()()させる必要があった。修道院送りが妥当だろう!」

「あれは使えぬ駒ですので、廃棄する必要があったのです。修道院に送った所で醜聞は醜聞。ならば、死んだ方がマシでしょう」

「話が違うではないか!」

「殿下。我が家の事に口出しするのはいかがなものか。殿下は()()()()とやらを貫き通したければ、ただ前だけを見ていればいいのです」

「しかし……」

「始めから分かっていた事でしょう。殿下程のお方が、決定事項を(くつがえ)すのなら、それ相応の余波は我々臣下に広がります。それで、人一人死んだからとどうだというのです。そんな事では王位は継げぬでしょう」


 ランドール公爵は、なんでもないような顔をして、紅茶を飲んでいます。


 そんなランドール公爵を、セドリック様は何も言わず、ただ睨んでいました。

 一旦話が切れた所で、今まで疑問に思っていた事を口にします。


「あの……シュゼット様はご病気だったのですか?」

「あぁ、不治の病だ。今日の夕方家に帰って来たかと思えばそのまま……」

「まぁ、そうだったのですか。お可哀想なシュゼット様」

「ジゼル嬢にそう思われて、あの世でシュゼットも喜んでいる事だろう」

「そう……ならいいですわね」


 悲しそうな顔を作るのは大変ね。

 本当はいい気味だと笑ってしまいたいんだもの。

 どうせ修道院に送られれば、一生会わないと思っていた。

 けれど死んだのなら、本当にあれが最後だったのね。


 シュゼット様の最後が、泣くのを堪えた顔なんて素敵じゃない。

 泣き顔だったらもっと素敵だったわ。


「シュゼット様に最後に一目会ってもいいかしら?」

「えぇ、後程でよければ。まだ話がありますので」

「それでお願い致します。話とは?」

「殿下との婚約にあたり、貴方には我がランドール家の、養女になっていただかねばなりません」

「それはなぜ? 伯爵家でも王妃になれるでしょう?」

「殿下が王太子でいるためには、我がランドール家の力が必要なのです。ランドール家以外では内乱が起きかねません」

「まぁ、それは本当なの?」

「あぁ、私の弟、第二王子派閥の力を抑えるには、ランドール家の力が必要だ。そのために、シュゼットと婚約していたのだから。でも私はジゼルを愛してしまった。ジゼル以外が私の隣に立つのは嫌なんだ」

「そこで殿下は私に話を持ち掛けたのだ。あれは、病気だったし調度いいだろう?」


 ランドール公爵は不適に笑みを浮かべました。

 笑うと意地悪そうな所がシュゼット様にそっくりね。


「そのお話喜んでお受けしますわ。だって、セドリック様こそが次の王様に相応しいもの」


 女性で最高位の地位である王妃になりたいのに、セドリック様がただの貴族になるなら、彼は用なしよ。

 見目が麗しいのは捨てがたいけど、私が欲しい物をくれない人は嫌なの。

 だから、セドリック様には何がなんでも王様になってもらわないとね。


「ジゼルすまない、私の事情に巻き込んでしまって。ありがとう」

「いいえ、いいのです。私は生涯貴方と共に生きていけるのなら、些末(さまつ)な事です」

「では、これで話は終わりですな。書類など手続きはこちらで済ませておきましょう」

「頼んだ。では、シュゼットに会いに行くとしよう」


 3人で部屋を出て、長い廊下を歩きます。

 突き当たりの薄暗い部屋に案内されました。

 その部屋のベッドルームへ通され、天蓋がついた豪華なベッドの上にシュゼット様が寝かされています。


「ただ眠っているだけみたいですね……」


 私はシュゼット様の頬に手をあてます。

 シュゼット様はまるで氷の様に冷たい肌をしていました。

 本当に死んだのですね。


 セドリック様は、血がでるのではないかという程手を握りしめ、シュゼット様を睨みつけていました。

 それほどシュゼット様の事を嫌っていたのですね……。


 お可哀想なシュゼット様。


 でも、安心して下さい。

 貴方の身分も、家族も、婚約者も全て私が戴くのですから。


 貴方なんかより有効に使ってあげるわ。









 


少し礼儀が身についたジゼルさん(;゜д゜)

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