超おいしい
「超おいしい」
花音がアイスクリームを食べて、幸せそうな顔で言った。
明智家のお茶の間では、凪とけーちゃんもいっしょにアイスを食べている。
けーちゃんは花音を見て、
「ちょっとおいしい」
マネをしている。
「あはは。ちょっとじゃなくて、超って言ったんだよ」
笑いながらそう教える花音だが、けーちゃんはうれしそに、
「ちょっとおいしい」
と繰り返す。
凪はまったりゆっくりアイスクリームを食べながら、
「最近、けーちゃんはやっと『ちょっと』って言えるようになったしね。そのうちちゃんと『超』も言えるようになるよ」
くすりと笑って俺もうなずく。
「そうだね」
「お兄ちゃん、もう食べ終わったの?」
アイスクリームの包みを捨てる俺を見て、花音は驚いている。
けーちゃんも俺を見て、花音そっくりの驚いた顔になった。
「ちょっとはやい……!」
ズコッと、俺と凪と花音がこける。
「ちょっとじゃなくて、超早いだよ」
あはは、と花音は笑っている。
「開はお母さんといっしょで、アイスを食べるのが早いからな」
俺とは反対に、そう言ってゆっくり食べる凪。
すると。
けーちゃんはアイスの包みを花音に手渡した。
「ぼぷも、ちょっとはやい」
なんと、口の周りにアイスをくっつけて、もう食べ終わっている(ちなみに、『ぼぷ』は『ぼく』という意味だ)。
これには、俺と花音も驚いた。
「けーちゃん、それこそ超早い、だよ」
「えぇー! いつのまに!」
凪はティッシュでけーちゃんを口を拭きながら言った。
「これは将来、お母さんや開みたいになるよ。さすが、血のつながりって怖いですな~」
けーちゃんは凪の言葉を聞き、俺を見て、そっとつぶやいた。
「ちょっとこわい」
思わず、俺はズコッとこけてしまった。
きっとしばらく、けーちゃんはなんにでも『ちょっと』をつけるんだろうな、と思った。




