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気の利く人 おまけ
気の利いたことはできないけど、気の利いたことを言う凪には困ったものだ。
「ぼくは《探偵王子》と呼ばれる開ほどの観察力もないしね。開みたいに周りが見えたら、もっと違うんだろうなぁ。ま、そういうことで、気配りはキミたちに任せるよ」
またうまいこと言いやがって。
「しょうがないやつめ」
腕を組む。
「開くんってば照れちゃって」
逸美ちゃんにそう言われて、俺はこほんと咳払いをする。
「全然だよ」
「でも、凪くんも開くんと鈴ちゃんのこと、ちゃんと見てるわよね~。普段からよく周りを見てないと言えないもんね」
凪は俺のマネをするみたいに腕を組んで、うんうんとうなずいた。
「ぼくもちゃっかり周りをよく見てるってことか」
「それを言うなら、しっかりだろ」
とはいえ。言われてみれば、凪の場合は「しっかり」というより「ちゃっかり」周りが見えているって言ったほうがそれっぽい気がする。
気の利く人は周りをよく見られているけど、気の利くことを言えるやつも、案外よく周りを見られているのかもしれない。見ているポイントがちょっと違うだけで。




