横浜へドライブに行こう その2
俺、凪、逸美ちゃん、鈴ちゃんの四人で横浜ドライブの計画中――
探偵事務所のドアが開いた。
やって来たのは、作哉くんとノノちゃんだ。
逸美ちゃんは二人に予定を説明した。
「てことなの。どうかしら?」
「アイディアはぼくが出したんだよ」
凪は自分が行きたい場所を言って好きに提案していただけだったけど、案自体は二人共気に入ったのか、ノノちゃんは、目を輝かせる。
「逸美さん免許おめでとうございます! ノノ、ドライブ楽しみです! ドライブってほとんどしたことがないので」
「オレはバイクくらいしかねェからな」
作哉くんは、実はバイクに乗ることができる。たまに探偵事務所にもバイクで来ることもあるのだ。ワイルドな感じが似合うなと内心思っているけど、この年でこれ以上バイクにハマってもらっても困るし言わないでいる。
「でもよ、計七人だろ? 乗用車じゃ無理だろ」
「そうなのよねぇ」
「初心者にワゴンはきついぜ」
「だったら、ノノは作哉くんとバイクに乗ります!」
と、ノノちゃんは挙手した。
鈴ちゃんは腕を組んで、
「それなら、五人と二人に分かれますね。でも、いいの? ノノちゃん。車でドライブしたかったんでしょ?」
「はい。みんなで出かけるのが楽しみなので」
凪がノノちゃんの肩に手を置いて、
「バイクの後ろにはぼくも交代で乗るよ」
「いや、テメーだけはやめてくれ」
「なんでさ~。作哉くん、キミはぼくが一体なにをすると思ってるんだい?」
と、凪が腰に両手を当てて聞くと、
「なにすっかわかんねェからイヤなんだよ」
作哉くんにそう言われて、凪はやれやれと肩をすくめ、みんなが笑った。
このあと、凪が良人さんを探偵事務所に連れてきた。
さっきの話を良人さんにもすると。
良人さんが自分の胸をぽんとたたいた。
「運転ならボクに任せてよ。横浜でもどこへでも連れてっちゃうよ!」
「よっ! 未来のドライバー!」
「へへん」
凪におだてられて、良人さんは得意そうに胸を張る。
「プラスドライバーに負けるなよ」
「おう! マイナスドライバーだって汎用性が高いんだぞー! て、ボクそっちのドライバー?」
「やれやれ、乗りやすいんだから」
「凪くんが振ったんでしょっ」
あはははは、とみんなが凪と良人さんのおバカな漫才に笑っている。
逸美ちゃんが聞いた。
「みんな、予定はどう? いつなら平気?」
俺たちは一斉にカレンダーを見る。
結果、俺たちが打ち出した計画では、
「来週の土曜日に、横浜へレッツゴー!」
景気よく良人さんが言うと、俺たちは拍手した。
「楽しみね~」
「だね」
これは俺と逸美ちゃん。
「へッ、オレも久しぶりに腕が鳴るぜ」
「ノノ、おやつとかいろいろ準備しておきます!」
「オイ、ノノ。食べ歩きなんだ、ほどほどにしとけよ」
「そうでした。えへへ」
と、作哉くんとノノちゃん。
「先輩は遅刻しないでくださいね」
鈴ちゃんに言われても、凪は飄々と答える。
「ぼくがするわけないじゃないか。これまでぼくが遅刻したことなんてあったかい?」
「いつもしてるから言ってるんですっ」
「それより、当日に備えてちょっと下ごしらえしておかないとな」
「? なんの話ですか?」
「こっちの話さ」
凪は逸美ちゃんと良人さんに顔を向けて、
「とりあえず、当日乗る車とか保険とかの心配はいらないからね」
そう言われて、逸美ちゃんと良人さんは小首をかしげつつうなずいた。
「うん。わかったわ」
「了解。凪くん、ありがとう」
「おう」
凪は軽快に返答した。
ということで。
俺たちは、来週の土曜日、みんなでドライブに出かける。