(おまけ)自作詰将棋の解説
第五十二話で登場した自作詰将棋「お千」の解説をさせていただきます。
不十分な点も多い駄作ですが、「曲詰」の魅力を感じていただければ幸いです。
(万全を期したつもりですが、不詰みや余詰めがございましたら御容赦ください)
問題図
(1)解答
▲9六龍 △同 玉 ▲9七香 △8六玉 ▲7五銀打 △7七玉 ▲7八と
までの七手詰め
(2)解説
詰将棋のルール上、攻め方は王手をかけ続けないといけません。
そこで、まずは王手になるような手を探してみます。
【一手目】攻め方 ▲9六龍
いきなり竜を切って王手をします!
(一番上に竜がありました。 四香同視!)
詰め将棋は、大駒(竜、馬、飛車、角)を切る手が正解になることが多いです。
ここさえ気づけばあとは並べ詰みなので、意外と簡単です。
【二手目】受け方 △同 玉
同玉と竜を取ります。
竜を取らずに7七に逃げる手は、7六竜として三手で早詰みとなるため、正しい応手ではありません。
詰将棋は、受け方が常に最長手数になるように逃げるか受ける必要があります。
【三手目】攻め方 ▲9七香
香車を打つことで、王が真後ろに逃げられなくなりました。
あれれ、少しずつ文字が浮かんできたような……。
【四手目】受け方 △8六玉
打った香車には7九の角が効いているので、取ることはできません。
ここは8六と真横に逃げることにいたしましょう。
【五手目】攻め方 ▲7五銀打
「銀打ち、下から打つか、上から打つか」
初手でゲットした銀を上側から打つことで、下側に玉をおびき寄せます。
もし、下側から銀を打つと王手はできますが、ただで銀を取られてしまって詰みません。なお、9五銀と打っても7七に逃げられてしまい詰みません。
【六手目】受け方 △7七玉
玉は下に逃げるしかありません。
ここまでくれば頂上はもうすぐそこです!
【七手目】攻め方 ▲7八と
最後は「と金」が上がって詰み!
玉将がどこにも逃げられないことを確認してみてください。
なんということでしょう!
盤上に「千」の文字が完成しました!
このように最終形が図や文字になる詰将棋を「あぶりだし」といいます。
(3)作意(作品を作るにあたっての前提条件)
・祝賀詰とすること。
祝賀詰:詰将棋界で昇段や結婚などの祝い事があったとき、名前などを織り込んだ曲詰を贈る風習のこと。
・文字は、家治の「十」と関連がある「数字」でかつ「女性名」、「千」とする。
・縁起の良い吉数の「七」手詰めとすること。
・本作のテーマを詰手順に盛り込むこと。
竜(大橋柳雪)が犠牲になって、最後は歩またはと金※(天野宗歩)で玉将(将棋家)を詰ますこと。
※最後は「歩」のほうが美しいのですが、最後に「歩」で詰ますことを考えると、打ち歩の禁じ手があるので突き歩詰めしかありえません。この点、「千」の文字において突き歩詰めによる「詰み形」を想定した場合、突き歩は必ず一マスの空間を生じさせます。よって、千の文字の一番下の部分に歩がある状態で詰ますしかないと考えました。そうすると千の文字全体を九段目から一段上に平行移動させる必要が生じてきます。これにより作成難易度が高まってしまいました。結果として「と金」で妥協しましたが、この問題については今後の課題にしたいと思います。
(4)初めて詰将棋を作成してみた感想
マニアックな将棋の世界の中でも、詰将棋の創作はかなりのマニアック。
江戸将棋と詰将棋創作の掛け合わせという超マニアックな世界にとうとう飛び込んでしまいました……。
今回初めて詰将棋を作成してみて、その難しさに発狂しそうになりました。
詰将棋は結構好きなので甘く考えておりましたが、解くと作るとでは大違い。
なんとか出来上がったと思って将棋ソフトに最終チェックさせると、余詰め(作者が想定していない別の詰み筋)が出るわ出るわ……。
配置する駒の種類を見直したり、最初から見直したりと七転八倒しましたよ……。
でも何かこだわりを持って作品を作る姿勢は、小説と通ずるものを感じます。
偉大な作品を世に輩出しておられる詰将棋作家の皆様に敬意を表します。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!