1話 真実の始まり
叶が目を覚ますとそこは自分の家の天井だった。物心ついた時からこの部屋に住んでおり天井のシミの形ですら覚えているほどだ。例え寝起きであろうと間違う事はありえない。
「なんだ夢かよ…くそッ…」
ついつい愚痴をこぼしてしまう。しかし、そこでふと気づく…服やベットは汗で濡れておりそして靴は履いたまま。
「??????」
そこで叶は初めて今しがた夢だと思っていたものが現実であったことを実感する。
だが何故逃げていたのか誰から逃げていたのか…それらが思い出せない…。まるで頭に靄がかかってしまったように…。
「一体全体なんなんだ…」
疑問を持ったまま顔を洗いさっぱりしようと洗面所に向かった。
そこで自分の顔を鏡越しに覗き込む。
叶は今年で17歳になる。身長は180前後、筋肉はほどほどについていているが少し細身である。所謂細マッチョ体型なのだ。髪色は青味がかった黒、顔は全体的に均等が取れていて少しシャープな骨格をしている。瞳は海の底をそのまま転写したような深い青色である。
叶の見た目は良くも悪くも普通の部類に属するのだがこの瞳の色のせいで人が寄ってこないのではないかと叶は考えている。
そんな無駄な事を考えつつ喉の渇きを癒す為に台所へ行きコップに水を注ごうと蛇口をひねる。
しかし、蛇口から水が出ない。気を取り直して部屋の電気を点けようと室内灯のスイッチを押すがこちらも点かない。
「チッ…どうなってるんだ…」
少しばかりの苛立ちをこめて舌打ちをし、外の光を取り込む為に窓を開けた…
するとそこには"荒涼とした大地"が広がっていた。見渡す限りの岩と砂の世界。そこに生物が住んでいる痕跡は全くと言っていいほどない。
「ッッ!!」
叶は思わず絶句した。叶が小さい頃から見慣れた街並みは欠片も残さず消え去っていたのだ。
ここで言っておくと叶には両親がいない。何故いないのかそれすらもわからない。物心ついた時から1人で生活してきたのだ。そういう経緯があるので滅多な事では驚かない自信が叶にはあった。
しかし、これは明らかに叶の理解できる範疇を超えていた。
「何が起こったん…だ???」
叶にはそう呟く事しかできない。呆然と立ち尽くし目の前の荒涼とした大地を見つめ続ける。
何分…いや何時間そうしていただろう。この現実の前では時間という概念すら怪しい。唯一頼りになりそうなのは太陽の高さくらいなものだ。
「このままでいても何もわからないか…」
叶はそう呟き意を決して部屋の外に出てみることにした。ドアノブに手をかけゴクリと息を飲む。そして一気にドアを開ける。
「ッッッッ!!!!」
するとそこには"叶の見たことも無い世界"が広がっていた。