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プロローグ
「ハァハァ…ハァハァ…」
タッタッタッタッと息を切らし走る。走り続ける。終わりなど見えない…知らない…知る術すらない。
否、知ってしまえば自分が正気を保てなくなることを直感的に本能的にわかっていて考えないようにしているのかもしれない。
「ゴホッ…ゴホッ…」
時折聞こえるのは咳き込む音。咳をすれば息が乱れ走るペースが乱れる。
しかし、咳を抑えることはできない。そこまで追い込まれる程に走り続けているのだ。
何分間…いや何時間走ったのだろう。それすらもわからない。自分は"逃げている"今はそれしか考えられない。
他の思考は意味をなさない。今、この時を生き抜かなければ自分は何も残すことができない…。
彼は必死で逃げる。水をバシャバシャと跳ね上げながらがむしゃらに走る。
そこに一筋の光が射した。彼はひたすらにその光を目指した。あと少し手を伸ばせば光に届く。
しかし、そこで彼の意識は途切れた。