あなた
あなたはいつも笑っていたね。
いつも暖かな穏やかな笑顔で。
だけど、私は同じ笑顔を返す事は出来なかった。
どうしても出来なかったんだよ。
「どうして人を殺めてはいけないの?」
「はぁっ??」
あなたは驚いたような、呆れたようなそんな声だった。
「そりゃ法律で決まってるし人殺しなんかしたら人生が終わっちゃうじゃん。」
「ふぅ~ん。」
だけど法律は人を守ってはくれない。犯罪を犯した人の事は人権や更生を盾に守るけど、逆の立場の人は守ってなんかくれないんだよ。
「殺したい人でもいるの?」
「えっ!いないの??」
「普通はいないでしょう(笑)」
そうだね。
そうなのかもしれないね。
「じゃあ、私はどこかおかしい人間なんだね」
「本当にそうしたいと思ってる人がいるの?」
「うん。いるよ。いなくなってほしいと思ってる人。出来る事なら私が自分で削除してやりたいと思ってる人」
「また(笑)」
「本当に本気で消えてほしいと思ってる人達がいる」
怖かった。
「ごめんごめん。冗談だよ(笑)」
怖かったんだよ。
「そうなの?本気にしちゃうとこだったよ」
あなたが真剣な顔をして私を見つめていたから怖かった。もう、あの笑顔を私には向けてくれなくなりそうで・・・。
だから嘘をついた。
私はあなたに知られたくなかった。
自分の中にある本当の自分の事を。感情を。気持ちを。
もしもあの時本当の私を見つけてくれていてもあなたは変わらない笑顔でいてくれた?
ねぇ、今もしもあなたに会えたら
・・・あの笑顔を見せてくれる・・・?