10. れっど・でーた
雨が止んだ。そして、外を見たマダガスカルが騒いでいる。俺に何やら話しかけてきた。
「おい、あれ……、あのハト…… 」
鳩を見ただけで大騒ぎだ。
「ハトがどうしたか?」
「あの長い尾と赤い腹部は、……いや、北米原産のはずだし。まさかな」
訊いてやったのに、一人でぶつぶつ呟いている。何をごちゃごちゃ言っているのか。あれはただの鳩である。何があんなに珍しいというのか。
同じ鳩でもドードーを見たならあの反応もわかるが、あれはただのパッセンジャー・ピジョン、別名、リョコウバトである。
そう思っていたら、今度は他の鳥を見て、何やら騒ぎ始めた。注意力散漫なヤツである。
「おい、エレ。もしや、あれは、カロライナインコじゃ、」
惜しい。あれはカロライナパラキートである。たかが鳥一羽、ないし二羽で、何故ここまで騒げるのだろうか。
俺も鳥は好きだが、鳩や鸚哥を見たくらいであんなに騒いだりしない。
それに俺は、どちらかといえばドードーみたいな、地上性のものが好みである。鸚哥ならカカポ。地面を歩く小太りの鸚哥である。海鳥ならオオウミガラスが好きだ。よちよち歩く姿が可愛い。
だがこの話題をマダガスカルに振るのは、何だか面倒くさいことになる予感がしてやめた。
騒ぐマダガスカルを放っておき、俺はミエイさんちのヤギ、ブカルドの餌やりに行くことにした。林の奥で放牧されているのである。
ミエイさん宅で遊んでいて夢中になってしまい、仕事を忘れていた前科があるため、ミエイさんちにはしばらく近づけない。
だが、敷地外のヤギに、餌をやるくらいならいいだろう。
反省はしているのだ。カヴたちを連れて行ったのが、尚更まずかった。結果的に揃って仕事をさぼってしまい、あちらこちらに多大な迷惑をかけてしまったことは、申し訳なく思っている。
とりあえず出かける前にマダガスカルに声を掛けた。
「ヤギに餌をやりに行くけど、一緒に来るか?」
「いや、俺はさっきの場所に戻るよ」
迎えがくるから、と、マダガスカルはそう言って、家から出て壺の近くに戻っていった。
一体、どこから迎えが来るというのだろう?
とりあえず毛布とシーツは貸してやった。帰りに近くを通ったら、枯れ木を組み合わせたものにシーツを引っかけて野営の準備をしていた。器用だ。見てて飽きない。明日は更なる道具を提供してみよう。マダガスカルは道具を使いこなせるだろうか。何をやらかすか楽しみだ。
もうすぐ、夜が来なければならない時間だ。
しばらく見学してから、俺は仕事をしに出かけた。
カカポ、可愛いよカカポ。あの顔で花の香りがするなんてマジ天使。




