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いきなり目の前に現れた草原に一体なんなのか検討もつかない。
私はビジネスホテルに入ろうと一歩進んだだけだったのに、そこにあるのは草原だけだったのだ。
しかも荷物をもったまま。
前を見ても、後ろを振り返ってもただひたすらに草原。
とりあえず深呼吸をして落ち着いて辺りを見渡す。
でも、あるのは草原とその先にある道、それと少し向こうにある森だけだった。
「なんで? ビジネスホテルはどこへ行ったの!?」
思わず言葉が漏れてもしょうがないだろう。
私が行きたかったのはビジネスホテルなのだから。
茫然自失になり暫く突っ立っていると、向こうに見える道の先から何か来るのが見えた。
よく見てみると、それは馬に乗った男の人だった。
そしてだんだんとこちらへ近づいてくるのが見えた。
(ヤバイ!)
草原に一人ポツンと荷物をもった女。
それがどれほど奇妙に見えるか考えて咄嗟に思う。
それも、その男が近づいてくるにつれ不審に思う。
(何?この人の服は)
その男が来ていた服はどこか異国で見た騎士のような物だった。
でも、見た事のない服に頭を傾げる。
(こんな服あったっけ?)
そうは思うが、全ての国の騎士服を知っているわけではないので不思議に思ってもどうしようもなかった。
ただ、どこか違う・・としか。
その男は私の目の前までくると、ひらりと馬から飛び降りる。
そして、
「ここで何をしている。」
そう話しかけてきた。
そう。話しかけてきたのだ。
ゆりなの知らない言葉で。
だけど、ゆりなにはそれが何をいってるのかわかっていた。
それは何故だかわからないが、ただ、男の言っている言葉が理解できたのだ。