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これはホラーですか?いいえ、ファンタジーです。

いよいよです

「ねえ、ここって魔王結局何人いるんだっけ?」

前を歩く赤毛の槍闘士の女性が振り返る。

「7人だよ。正確には、7人を統括する8人めがいるってぇ話だな」

剣闘士の男性が答える。

「けど町の様子、おかしいよねぇ。魔王さまはいい人、魔王様は人間のことを考えてくれている人とかさ」

「いんじゃね?気にしなくて。俺達で、その8人狩っちまおうぜ」

剣闘士が顎をしゃくる。

その先には、もう魔王城が見えていた。


がさっ


草の音に反応して、二人は武器を構える。

しかしそこにいるのは、12~4歳ほどの子供。

「ンだよ脅かしやがって。ガキは帰った帰った」

「ちょっと待ちなよ、見なよこの子、モンスターじゃん」

「モンスターっちゃあモンスターだが、ガキをいたぶる趣味はねぇぞ?」

「そぉ?あたしは気にしないけど」

槍を向けられても、少女は全く気にしていない様子だった。状況が分かっていないのだろうか。

「おねえちゃんたち、どこにいくの?なにをするの?」

「あぁ?魔王をぶっ殺しに行くんだよ。だからガキには関係な…」

言葉が途中で途切れる。


少女―――マオの喉元につきつけられていた槍を、マオが握っただけで、パキンと簡単に砕けたからだ。


「うそっ!これ、魔法武器よ!?それなりの値段したしこれまでモンスターもこれで倒せてきたのに…あんたっ何者!?」

マオは華やかに微笑む。

「我は魔王。人間どもとの和平協定は結んでいるはずじゃが、なぜそなたたち冒険者ギルドの人間が魔王城へ来る?それに魔王を倒すじゃと?力不足も良いところじゃ。ギルドには、亜種を狩ることが最優先と言い聞かせておったのじゃがの」

「あんたが…魔王…!?」

「間違いねえっ、こいつが7人を率いてる本物だ!」

「ちょっ…離して!」

剣闘士は、槍闘士の女の手を握ると、魔王に背を向けて全力で逃げた。逃げて、逃げて、逃げた先の草原で、息を切らして二人共へたりこむ。

「じょーだんキツイわよ…なんで子供なのよ、しかも和平協定結んでるとか…魔王らしからぬ発言だし」

「追ってもこねえしなぁ、見逃してくれたんだろうよ。しかし、子供が相手じゃやりにくくてかなわん」

「同感。あたしもあれくらいの歳の子供がいるのよ。子殺しはさすがにちょっと…」

「力不足って言われちまったが、確かに背筋が凍ったぜ…」

「あたし槍をつきつけたのは、あの子に逃げて欲しくて演技だったのに…まさか魔王だなんて」

「あの子はちょっと…殺すのは可哀想だよな。人間との和平も結んでるみたいだし、噂通り平和主義者。それなら、他の7人、殺っちまわねえ?」

「それには賛成だけど、7人全員が子供だったらどうするのよ」

「いや、俺の仲間で一度倒された奴がいてな、そいつによると、7人は大人らしい」

「そう…、それならいいけど…。亜種狩りも飽きたしね。あのお嬢ちゃんの気を引いている間に魔王城に乗り込めないかしら」

「ちょっとまってな<レグルス/通信>よぉ、俺だ。何人か囮役で魔王城にワープしてこれねえか?ああ、それだけいれば充分だ。あと、魔法込めた上等な槍も頼む。代金はあとで払うからよ」

通信を切り、槍闘士の頭をくしゃくしゃと撫でる

さすがに、自慢の武器を片手で砕かれたのがショックだったのか、短い赤毛を撫でられるままに彼女は膝を抱えている。

「魔王の目的……なんだと思う?」

「人間との和平かねぇ…さっきの言葉が真実ならな。あと亜種の殲滅」

「亜種は経験を積むごとにどんどん強くなってる。しかも全員が。あのお嬢ちゃんに倒せるのかしら」

「おや、今度は魔王の心配か?」

槍闘士は首を傾げて剣闘士を見つめ、

「言ったでしょ。あたしにも同じくらいの娘がいるって」





「<スキル・レグルス/通信>王よ。人間どもが攻めてきたのはどういうことか説明願えるか?」

「なっ!?あれほど魔王さまに手を出すなと冒険者たちに言い聞かせていたのに!!…どの様な風貌だったかお聞きしても?」

「構わぬとも。槍を持った赤い短髪の女と、剣闘士の浅黒男には顔に刺青があった」

「それは…おそらくシェーラとリッパーという二人組ですな。王都でも決まりを守らず持て余していた者たちです。ただ、腕は確かで、ここ数日で亜種を数日狩っています。あの2人で騎士団に勝てるのではと言われる腕前で…」

「よう分かった。攻撃を受けぬ限り、こちらも殺さぬ。王座に飛ばさせて貰うが良いか?」

「はいっ!魔王さまの寛大なるお心に感謝致します」

「そなたは王であろう。わらわにその様な言葉遣いは不要じゃぞ?」




通信を終え、すっかり元気を取り戻したリベリアにマオは抱きつく。

「まぁ、ほんとの子供のようですわ、魔王さま」

その背を撫でる顔は慈愛に満ちているが、壁際の勇者の顔には<欲情してるだろ>と書かれていた。

魔王が、そっとリベリアの腕の中から抜け出す。

「魔王さま…?」

「人間が何人か来る。武装していることを考えれば攻めてくるかもしれない。それとも、この周辺の亜種を狩りに来たのかな…前者だった場合、勇者、説得できる?」

「まかせろ!伊達に勇者の名は背負ってないぜ」

そう言って自分の胸を叩く。魔王の後ろのリベリアが<ロリコンのくせに>という顔をした。

仲が良いのか悪いのか。で、分類するのなら、勇者にとってリベリアは、この魔王城で魔王の次に心許せるモンスターだった。

だから、じゃれあいなのだ。


「――――来る」

どぉ………ん



音を立てて、丸太か何かで豪奢な玄関を叩く音。

「ま、魔王さま」

「これは一体…」

「按ずるでない。<スキル・強化/パワード>これで、この扉は魔法を帯びた鋼鉄並の強度を保っておる。<レグルス・大/通信>我が門を破らんとせんとし者達よ、なにゆえそのような行動に出る?わらわは、そして眷属たちも、一人たりとも人間に危害を加えてはおらぬぞ」

だが、その声が聞こえないかのように、定期的に扉は叩かれる。

「これは……精神操作されてるにゃー…」

「魔王!大丈夫か!」

「勇者、外の人たち精神操作されてるみたいなんだけど、ボク、解除の魔法知らないんだ。上から別の精神操作したら廃人になりそうで心配だし…」

「任せろ!<おおらかな風に乗る者よ、我が名は尊き古き血を次ぐもの。我の命令を聞き届け…」

そこまで勇者が唱えた時、床からずるり、と黒い手が勇者の両足を掴んだ。

「なっ…なんだこいつ!」

「魔王城の中に潜入!?そんな馬鹿な!」

言って、右腕を刃に变化させてその手を切り落とそうとする。

「くっ・・・・・ああああああ」

「魔王さまあ!」「魔王!」

切り落とされたのは、逆にボクの手のほうだった。

勇者、勇者、行かないで!

「勇者、ボクに抱きついて!そしてボクは落ちた片手とともに、異空間に放り出されたのだった。


「魔王さま!魔王さまああああああ!」

泣き叫ぶ、リベリアを残して。

ついに次にネタバレ!乞うご期待!

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