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舞台 戦いの上にて

 法子の手には一枚の紙が握られている。

 そこには何も書かれていない。

 いきなりやって来た紙飛行機。

 こんな状況なのに。

 誰が飛ばしたかも分からない。

 でも何となく分かっている。

 この紙飛行機を誰が私にくれたのか。


 法子が病院の屋上を見る。

 当然そこには誰も居ない。

 けれど何となく、そこに居たんじゃないかとそう思う。

 解決してみせろと言った。強くなれと言った。

 隣に居られる位に。

 仲間だ。

 だから。


 でも。

 法子の周囲には沢山の敵が居る。

 その敵達を法子は睨み、ゆっくりと刀を構えた。


 時は僅かに巻き戻る。


「あれ?」

 敵をなぎ払い法子を助けて、皆が一息吐く中、法子が跳んできた紙飛行機を見て辺りを見回していると、摩子が突然呟いた。

 全員の視線が摩子に集中する。

 摩子は全く別の方角を見ていた。

 そこでは二人の魔術師が戦いを繰り広げている。黒い霧を出し、雷光を発し、戦い合っている。それだけだ。今この敷地内ではありふれた光景。摩子以外の誰も、摩子が何を見ているのか分からない。ただ摩子だけがその方角を見続け、そして駈け出した。

「たけちょん!」

 そうして走っていく。

「あ、摩子」

 法子がそれに追いすがろうとするが、それよりも早く摩子が走って行ってしまう。

 追いかけきれずに立ち止まった法子の横を元華が駆け抜ける。

「マコちゃんの事は私に任せて!」

 誰もが元華に何を任せれば良いのか分からない間に、元華は摩子を追って駆けていった。そのまま戦っている魔術師達をすり抜け向こう側へ消えていった。

 残された法子とエミリーとヒロシが呆然としているところへ、同じく残されたマサトの声が響いた。

「何であいつが?」

 法子がマサトを見る。マサトは何処か一点を見つめていて、その視線を追うと、やはりなんて事の無い、三人の魔術師の戦闘があった。

 嫌な予感がした。

 案の定、マサトは言った。

「悪い。ちょっとここで待っててくれ」

 そう言って、マサトは駆けていく。

 法子は予想していたのに動けなくて、やはり置いていかれて取り残される。

 ヒロシはしばらくマサトと法子達を交互に見比べていたが、何処か怯えた怯えた様な顔をしてマサトを追って、戦闘をすり抜け駆けていってしまった。

 あっという間に、仲間が居なくなってしまった。

 法子は不安になって、エミリーを見る。エミリーは法子と顔を合わせて、そうしてにっこりと笑った。

「あんな協調性の無い人達の事は放っておきましょう。私達は私達のする事をするのです」

「私達のする事?」

「勿論この病院を守って、獲物達を追い払って、そうしてやって来る標的を始末するのです」

 法子は頷いた。

 確かにその通りだ。後半の物騒な言葉は別にして、確かに自分はこの病院に居る人達を守ろうしていたのだから。皆の役に立つ為に。そしてヒーローになる為に。例え一人になったとしても、それをするべきだ。

 法子は頷いて、辺りを見回す。

 そして眉根を寄せた。

「何だか増えてる」

 いつの間にか法子達の居る中庭には沢山の魔術師達がやって来ていた。

 そしてあちらこちらでどんどんと戦いの炎が燃えたっている。

「何で」

「簡単な事です」

 法子の疑問にエミリーが答える。

「彼等は願いを叶える何かを探しているのでしょう。きっと人が集まり始めたこの場所に何かがあると思ってやってきたに違いありません」

 法子が感心してエミリーを見る。

 エミリーは嘲る様な顔をしていた。

「私に言わせれば浅はか」

 法子はぞっとする。

 この子はきっとこういった戦いの中に身を起き続けてきたんだ。

 そう気が付いた時、法子の体は震えていた。エミリーの背後にある戦いが目に浮かぶ様だった。

 けれどそれを押し隠す様にエミリーは笑って法子の手を引いた。

「さあ、行きましょう、神様。踊らされている獲物程厄介な敵はおりません」

 そうして何処かへ駆け出そうとした足は、横合いから聞こえた声の所為で止まった。

「さすがです、団長!」

 笑い声が聞こえてくる。

「まさか、ここに人が集まったのは全部団長のイリュージョンだったなんて」

 それを聞いて、法子に緊張が走った。ここに人を集めた張本人。それはもしかしてたら、今回の事件の首謀者かもしれない。

「じゃあ、もしかして願いを叶える何とかっていうのも」

「勿論その通り! 全部私のイリュージョンだ!」

 やっぱり。

 法子は恐ろしく思いながら、声のする方へ振り向いた。

 そこにはサーカス団が居た。

 中央には象に乗った燕尾服の男が居る。

 その脇に居るピエロが尋ねた。

「あ、もしかしてもしかして、この病院に居る人達って全員団長の」

「手下だ!」

「すげえ!」

 後ろに居るサーカス員達が歓声を上げた。

 この病院の全員が手下?

 あまりの事に、法子の気が遠くなった。

 だとしたら。

 法子は首を振る。

 勝てる。勝てる。勝てるって思わなくちゃいけない。どんな絶望的な状況でも。

 けれど実際、この病院に居る人々がたった一人の指揮の元に動いているのだとしたら。

 法子の喉がなった。

 団長の傍らの蛇を巻きつけた男が法子とエミリーを指さして団長に尋ねる。

「じゃあ、あそこに居る二人も団長の手下?」

「勿論だ!」

「すげえ!」

 後ろに居るサーカス員達が歓声を上げた。

 ん?

 何かがおかしいと法子は気が付く。

「じゃあ、俺、あの右の子が好みなんですけど、付きあわせてもらえますか?」

「勿論だとも! なあ、そこの君」

 団長が法子を指さして言った。

 法子は団長の指をしっかりと見る。どう見てもその指先は法子の方角を指し示している。

 法子は後ろを振り返る。そこには誰も居ない。

 法子は自分を指差す。団長は頷く。

 法子は首を振る。

「だ、団長! 話が違うじゃないですか!」

「手下じゃなかったんですか?」

 サーカス員達が口々に団長を責め始めたが、団長はそれを遮って言った。

「実は諸君を怯えさせぬ様に嘘を吐いた」

「怯える?」

「俺達は怯えませんよ!」

「モンゴルだってアメリカだって怖くないですよ!」

 サーカス員達の勇ましい言葉に促されて、団長は頷いた。

「実はあそこに居る二人が、今回の事件を影で操る黒幕なのだ」

「ええ!」

 な、なんだってーと法子は心の中で力無く呟いた。

 団長の言葉は続く。

「しかもかつて一度地球を支配した事のある超古代文明の生き残りだ」

「もしかして危険なオーパーツを?」

「数え切れない程所持している!」

「そんな!」

「その上、奴の中には大魔王が眠っている。十のブラックホールを操り銀河を壊滅させた大魔王だ」

「何だよ、それ!」

 サーカス員の一人、何故か大玉に乗っている男が怒りを漲らせた声音で団長に向かって抗議の声を上げた。

 法子は、その男が団長の馬鹿げた妄言を止めてくれるんじゃないかと期待する。

 大玉に乗った男が続ける。

「そんなの勝てる訳ねえじゃねえか」

 法子が肩を落とす。

 団長が大玉に乗った男を叱責する。

「馬鹿者!」

 険しい顔で更に怒鳴る。

「お前達、何であろうと怯えないと言っていたであろう」

「そうだけど」

「だったら何を怯えている。私達が負ければ、この銀河が滅ぶのだぞ!」

 サーカス員達ははっと気が付いた様な顔をして、象の上の団長を見上げた。

「私達が諦めてどうする!」

 団長の叱咤に、サーカス員達は湧いた。

「間違ってた! 俺、間違ってたよ、団長!」

「俺達は諦めちゃいけねぇ!」

「あたし達が銀河を守るんだね!」

 サーカス団のやり取りを呆れて見ていた法子だが、不意に恐ろしくなった。幾らふざけたやり取りをしているとはいえ、戦うと言っているのだ。こちらには二人しか居ないのに。向こうにはざっと数えても三十人以上居る。

 法子が刀の柄に手をかけた時、エミリーが法子の手に触れた。

「安心してください。私が守ります」

「え?」

「神様は、そこで休んでいてください」

 法子が見ている前で、エミリーはにっこり笑うとサーカス団に顔を向けた。

 法子の耳に、団長発する戦いの号令が聞こえてくる。その号令が終わる前に、エミリーの姿が消えた。

 法子がサーカス団へ目を向けると、そこには踊りこんだエミリーとそれを中心に出現した獣達に襲われるサーカス団員達が居た。サーカス団員達は意表をつかれた様で最初の内こそなすがままに蹂躙されていた。だが、すぐに一人また一人と戦闘態勢に入り、そうしてエミリーが飛び込んでからものの数秒でエミリーとサーカス団の戦いが燃え上がる。

 それを見て法子も戦いに加わろうとした。

 けれど足が止まる。エミリーがそこで休んでいてと言っていたのに、それを無視して動くのは悪い気がした。けれどエミリーの強さは分からないけれど、幾ら強くとも三十人以上の敵を相手にしては難しいだろう。

 どうすれば良いのか。

 けれど戦場はそんな些細な悩みすら認めない。

 頭で悩もうとしつつ、けれどその時には既に体が反応していた。

 その場を飛び退く。そして振り向くとエミリー達が戦っているのとは逆側に男が立っていた。

 新手。

 法子が警戒して、刀を構える。

 男は何も持っていない様子で、手をだらりと垂れ下げている。

『糸使い

 指の一本一本に繋がる十本の糸を操る。

 糸使いはロマン。

 評価:相手にならない』

 解析で弾きだした答えに従って、法子は駈け出し、男の腕の振りにあわせて見えない糸を避け、あっさりと男の糸をかいくぐって肉薄した。

 男が退がろうと重心を後ろにずらす。その時には法子は振りかぶっていて、男が逃げるよりも先に、男を刀で殴り倒した。

「やるじゃないか、お嬢さん」

 間をおかず横から声が聞こえる。

 法子がそちらを向くと、タキシードを来た男がシルクハットを脱いでお辞儀した。杖を突きながら、男が笑う。

「こんばんは」

『紳士

 戦いの中でも礼儀は忘れないナイスガイ。

 最近の悩みは結婚記念日に何を贈ろうか。

 難易度:楽勝』

 法子は即座に男へと跳びかかる。男は反応する事も出来ずに、法子の刀によって殴り倒された。

 弱い。

「やるな嬢ちゃん!」

 声のする方へ向くと、男達が居る。何か奇抜な格好をしているが、一目見て分かる。解析するまでも無い。

 法子は間を置かずに駆け寄り、瞬速で刀を振るい、男達がやられたと気がつく前に勝負を決した。

 昏倒した男達を無視して法子は苛立たしげに自分の握り拳を見つめた。

 弱い。

 弱い。

 相手が弱い。

 自分は強くなっている。

 その実感があった。

 今までずっとトレーニングをしてきた。今までずっと戦ってきた。少しずつ少しずつ強くなった。まだルーマには敵わないかもしれない。まだ摩子やマサトさんには敵わないかもしれない。

 けれどこの程度の相手になら簡単に勝てる。

 自分は強くなった。

 それがどうしても納得いかなかった。

 良い事のはずなのに。何か違う。

 強くなっているのは嬉しい。でも。

 でも敵が弱いのは嫌だ。

 こんな弱いのと戦っても何の意味も無い。つまらない。

 負けたい訳じゃない。でもあっさりと勝ててしまってもつまらない。

 法子は手を開く。そこには紙飛行機だった紙切れが包まれている。

 多分ルーマの投げた紙飛行機。

 ルーマは強い。

 きっと今襲ってきた様なのとは別次元の強さに違いない。きっと敵わない。

 けれど戦ってみたい。

 面白そうだ。

 ルーマと戦うのは、きっと面白い。


 そして法子は首を振る。

 駄目だ。

 いけない。

 今、自分は何を考えてた?

 ルーマは仲間なのに。

 今、戦う必要なんてまるで無いのに。

 それなのにただ楽しそうだからという理由で、ルーマと戦いたいと思ってしまった。

 きっと自分は今、強さに酔っていた。戦いに酔っていた。まるで悪役の様に。まるで戦闘狂の様に。ヒーローとは掛け離れた、利己的な、しかも傍迷惑な思考。

 多分、これが力に呑まれるって事なんだろうなぁと法子は思う。

 そして気を引き締める。

 いけない。自分が目指すのはあくまでヒーロー。みんなを救うヒーローなんだ。

 そうして辺りを見回す。

 敵に囲まれている。

 法子の強さを見て、危機感を抱いた魔術師達が仮初の団結で法子と戦おうとしている。

 それ等を見て、法子は思う。

 つまらなそうだと。

 どれもこれも弱そうだと。

 そうして法子はまた首を振る。

 ルーマに言われたんだ。

 仲間であるルーマに。

 解決してみせろと言われた。強くなれと言われた。

 隣に居られる位に。

 きっとその強さは、自分の力に呑まれる様な安い強さじゃない。きっとそれは自分の力にも、周りからの力にも、全く媚びずに自分を貫く強さのはずだ。

 だからここで強さに溺れる事無く、辺りの魔術師を蹴散らして自分の強さを示す。

 あっさりと蹴散らして。何の面白みもなく蹴散らして。

 法子はルーマを思う。

 ルーマは強い。

 戦ってみたい。

 首を振る。

 戦う相手じゃない。

 仲間だ。

 その仲間に信頼されて託された。

 だから今は、この周りの敵を倒す。何も考えずに、平和の為に。

 そうして法子は刀を構える。

 その時声が聞こえた。

「あかんなぁ」

 声は敵達の中から聞こえた。法子が顔をあげる。すると法子の眼前に居る敵達は皆、後ろを振り向いていた。

 法子が何事かと思っていると、まるで猿の雄叫びの様な甲高い声が聞こえ、次の瞬間法子の周りの敵達が全員吹き飛んだ。

 そうして吹き飛んだ後には刀を振り下ろした男が立っていた。男は美しい顔に人懐っこい笑みを浮かべて法子に向いた。

「あかん、あかんよ」

 男は刀を肩に当てて法子へと歩いてくる。

 法子は何が悪いのか分からず混乱する。

「大阪?」

「ん?」

 男は驚いた様に法子を見た。

「あれ? 自分の言葉おかしい? もしかしてあんた関西の人?」

 法子が首を横に振る。

「ああ、そう。でも俺、ほら、ちゃんと自分の言葉が上手くなってるか気になってん」

「上手く?」

「俺、まだ関西弁覚えたてやろ? 三日前から勉強し始めたんやし。せやからちゃんと喋れてんのか知りたいんやけど」

「大阪の人じゃないんですか?」

「ちゃうちゃう。生まれも育ちも多分やけど東京や。せやけど、ほら、方言喋るとモテる感じするやん。ちょっと勉強してみよかなぁ思って」

 法子には良く分からない。

 この人の言っている事は良く分からないけれど、分かる事がある。

 強い。

 この人は強い。

 戦ったらきっと、面白い。

「それや、それ」

 男が法子の事を指差した。

「その笑顔」

 笑顔?

 法子は自分の顔に手を当ててみた。

 分からない。

 笑っていた?

 恐怖した。

 自分が、自分の意志に反して笑っていた事に。

「さっきみたいな弱そうな奴等と戦ってたらつまらんと思うし、俺みたいな強そうな奴を見たら楽しくなる。当たり前で自然な事や」

 私、今笑ってた?

 法子は慌てて首を振る。

 駄目だ。

 違う。

 そんな戦いを楽しんじゃ。

「なのにあんた、戦いを楽しんだらあかんと思っとるやろ?」

 法子の目が大きく開かれる。

 男は楽しそうに笑っている。

 この人、心を。

「心を読まれた思ってんやろ?」

 法子が口を引き結ぶ。

 この人は心を読んでる訳じゃ無い。

 読まれる位に自分の表情が出ているだけだ。

 男はとても楽しそうに笑っている。

「あかんよ、あかん」

 法子は萎縮しかけていた自分を押さえつけて、尋ねる。

「何が駄目なんですか?」

「戦いを楽しんだらあかんって考える事があかん」

「何で」

「戦いは楽しまなあかん」

「駄目です。戦いを楽しむなんて」

「何でや?」

 何でって。

 言い返そうとして、法子の口が止まった。

 理由は幾つか思い浮かぶ。けれど戦いの中に積極的に身を置こうとしている自分が説得力を持たす事の出来る理由が中々出てこない。

「俺はむしろ戦いを楽しまなおかしくなると思う」

「え」

「だってそうやろ? 例えば純粋に戦いだけを楽しんどる奴が人を殺そうとするか? 戦うのが楽しいんや。戦えれば満足だし、相手殺したら戦いの機会が減るやろ? けど戦いを楽しんでない奴は違う。戦って相手を制する事が目的。せやったら相手を制す一番の方法は何やと思う? 殺す事。せやろ?」

 法子は頷いていた。

 覚えがあった。

 摩子を殺そうとした覚えが。

 けれどその時は、戦いを楽しいとも楽しくないとも思っていなくて。けどもしも今、本当にぎりぎりで頭が働かなくなる位に追い込まれての戦いになったとしたら、自分は相手の命を気遣いながら戦えるだろうか。

 戦えない。

 それは以前に証明している。

 傷付ける気なんて全く無かったのに、力の加減をせずに思いっきり技を放って、そして純を切った。

 戦いを楽しむ、楽しまないという事が問題なんじゃない。

 戦いに没頭しすぎて、周りに気を遣えないのが不味いんだ。

 さっきの敵を蹴散らしていた自分は周りを気遣えていただろうか。

 いなかった。

「どや? 分かったか?」

 男の言う事は良く理解できた。

「はい」

 法子は頷いた。

 戦いの時に戦いの事だけを考えちゃいけない。

 周りを見なくちゃ駄目だ。

 さしあたってはまず。

「良く分かりました。それで、あなたはそれを私に教えてどうしたいんですか?」

 男がにっと口の端を吊り上げる。

「要は一緒に戦いをたのしみましょーって言う事やな」

 男は法子の目の前まで来て、法子の顔を覗きこんできた。

「ほら、どうせ戦うならやっぱり美人さんと一緒に戦いたいやろ? そっちも俺みたいなイケメンと戦った方が楽しい。間違いないで」

 法子は覗きこまれて身を引いたが、うっすらと笑う。

「そうやって誰にでも言っているんですね?」

 男が悪びれも無く笑う。

「そそ。老若男女構わず言ってたら大変な事になってもうて」

 男が笑う。何だか憎めない。

 丁度その時、男の背後に大量の敵が見えた。

 法子の視線に気が付いて、男も振り返る。

 沢山の敵を前にして、法子の隣に立って男を見上げると、男が笑いながら、自分を親指で指した。

「俺の名前は丈! ジョーって読んでくれ」

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