表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

隴西李艾傳記

掲載日:2026/06/05

大曆十年秋,宦者程琳記隴西李艾事。

艾與琳同里,少相善。艾家貧,父早亡,母織以養之。艾性敏,讀書過人,常語人曰:「丈夫生世,當取功名,不可久困草澤。」里中人皆知其志高。

後數年,艾屢試不第。家益貧,妻王氏以織補助生計,日食不繼。艾猶讀書不輟,夜常至深。

鄰人有戲之者曰:「李秀才,書讀破萬卷,何不見功名?」

艾聞之,笑曰:「時未至耳。」

一夕,艾讀書方畢,忽室中金光自梁而下,如日入戶。妻驚起,欲呼,艾止之曰:「勿懼。」

艾視之良久,曰:「此天命也。」

自此,言語漸異。

或謂夢見天帝,授以金冊;或謂夜聞天鼓,命其誅妖。程琳聞之,以為心勞所致,書戒之。

未幾,艾書來愈急,辭氣怪甚。曰:「天門已開,金闕有人召我,命我西行泰山,誅千年妖物。」

程琳大驚,遣李福往視。

福至其家,但見門戶貼符甚多,朱墨雜亂,風動則微響。

入門,見艾披髮不冠,手執木劍,立庭中。

福曰:「李秀才何為如此?」

艾不答,忽仰天大笑曰:「天兵十萬,已在雲外,何不速下!」

聲震屋瓦。

福欲勸之,艾怒目視曰:

「汝一介凡夫,安知天機!」

遂逐福出。

福惶惶而還。

程琳聞之,遣醫者復往。

醫至,艾不納。醫問其疾,艾曰:

「我無疾,疾在世人。」

遂取藥碗擲地,曰:「此穢物,不可近我。」

醫懼而退。

自是,艾晝夜不食,或立庭中數日不動。

夜則書符,滿屋皆是。或對空語,或忽大笑。

妻王氏泣曰:「君若如此,家當如何?」

艾叱曰:「婦人之見,何足與語天道!」

鄰里畏之,不敢近。

其母哭曰:「吾兒已非昔人。」

艾聞之,笑曰:「我非人,我奉天命行事。」

一日,艾忽沐浴更衣,著黃冠羽衣,負一破囊。

出立門前,謂妻曰:

「天車已至,我當西行泰山。功成之日,自當接汝母子同登天界。」

妻抱子泣留之。

艾不顧,拂袖而去。

里人隨之,見其行甚疾,如履風上,不數步已入山中。

有追之者,至山口則失其所在。

後數日,有獵人言見山中一人,披髮誦咒,對空呼喝,若與人戰。

亦有言夜聞山頂如雷,如萬人行軍。

皆莫知其實。

其妻王氏,後攜子流落里中,乞食度日。

里人憐之,時有周給。

程琳在宮中聞之,久不語。

後歎曰:

「艾志本高,而失其所歸,遂至於此。」

因泣而書之。

大曆十年霜降夜記。宮燭欲滅,風動紙窗,若有馬蹄與呼號聲,自遠而來。



大暦十年の秋、宦官の程琳は、隴西の李艾のことを書き記した。


李艾と程琳は同郷の出身で、幼い頃から親しくしていた。李艾の家は貧しく、父は早くに亡くなり、母は機織りをして彼を育てた。李艾は聡明な性格で、人並み以上に学問に優れ、よく人にこう語っていた。


「男子たるもの、この世に生を受けたからには功名を立てねばならぬ。いつまでも片田舎に埋もれていてはならない。」


村の者は皆、その志の高さを知っていた。


数年後、李艾は何度も科挙を受けたが合格できなかった。家はますます貧しくなり、妻の王氏は機織りで家計を助けたが、その日その日の食事にも事欠く有様であった。それでも李艾は勉学をやめず、毎夜遅くまで書物を読んだ。


ある時、近所の者がからかって言った。


「李秀才よ、本を万巻も読んだというのに、どうして功名が得られぬのだ?」


李艾はそれを聞いて笑い、


「まだ時が来ていないだけだ。」


と答えた。



---


ある夜、李艾が読書を終えた時のことである。


突然、部屋の梁の上から黄金の光が差し込み、まるで太陽が家の中へ入り込んだかのようであった。


妻は驚いて起き上がり、声を上げようとしたが、李艾は制して言った。


「恐れるな。」


彼はしばらくその光を見つめた後、


「これは天命だ。」


と言った。


その頃から、彼の言葉は次第に奇妙になっていった。


ある時は「夢の中で天帝に会い、黄金の書を授けられた」と語り、またある時は「夜に天の太鼓の音を聞き、妖怪退治を命じられた」と語った。


程琳はその話を聞き、心労によるものだと思い、手紙で戒めた。


しかし間もなく届いた李艾の手紙は、さらに異様なものとなっていた。


そこにはこう書かれていた。


「天門はすでに開かれた。金闕の宮殿より使者が現れ、私に西の泰山へ赴き、千年の妖物を討てと命じた。」



---


程琳は大いに驚き、李福を遣わして様子を見させた。


李福が家を訪ねると、門や戸には数え切れないほどの符が貼られ、朱と墨が入り乱れていた。風が吹くたび、それらはかすかな音を立てた。


中へ入ると、李艾は髪を乱し冠もかぶらず、木剣を手にして庭に立っていた。


李福が尋ねた。


「李秀才、なぜこのようなお姿なのですか?」


李艾は答えなかった。


突然天を仰ぎ、大声で笑って言った。


「十万の天兵はすでに雲の彼方に集っている! なぜ早く降りて来ぬのだ!」


その声は屋根瓦を震わせた。


李福が諫めようとすると、李艾は怒りに満ちた目で彼を睨みつけて言った。


「お前のような凡人に、どうして天の秘密が分かろうか!」


そして李福を追い出した。


李福は恐れながら帰り、その有様を程琳に報告した。



---


程琳は医者を派遣した。


医者が訪れると、李艾は中へ入れようとしなかった。


医者が病について尋ねると、李艾は言った。


「私に病はない。病んでいるのは世の人々だ。」


そう言うと薬碗を取り上げて地面へ叩きつけ、


「このような穢れた物を私に近づけるな。」


と言った。


医者は恐れて立ち去った。


それ以来、李艾は昼夜食事を取らず、時には庭に何日も立ち尽くしたまま動かなかった。


夜になると符を書き続け、家中が符で埋め尽くされた。


ある時は空に向かって話し、またある時は突然笑い出した。


王氏は涙を流して言った。


「あなたがこのようになってしまったら、家はどうなるのですか。」


李艾は叱りつけた。


「女の浅知恵で、天の道を語る資格があるものか!」



---


近所の者たちは彼を恐れ、誰も近づこうとしなかった。


母は泣いて言った。


「我が子は、もう昔の子ではない。」


李艾はそれを聞いて笑い、


「私はもはや人ではない。天命を奉じて行動する者なのだ。」


と言った。



---


ある日、李艾は突然身を清め、新しい衣服に着替えた。


黄色の冠と羽衣をまとい、破れた袋を背負うと門前に立った。


そして妻に言った。


「天の車はすでに到着した。私はこれより西の泰山へ向かう。功を立てた暁には、お前たち母子を迎えに来て、ともに天界へ昇ろう。」


王氏は子を抱きしめながら泣いて引き留めた。


しかし李艾は振り返りもせず、袖を払って去っていった。



---


村人たちは後を追った。


すると彼は風の上を歩くかのような速さで進み、わずか数歩のうちに山中へ消えていった。


追いかけた者もいたが、山の入口に着いた時には、すでにその姿を見失っていた。


数日後、ある猟師がこう語った。


「山中で髪を振り乱した男を見た。呪文を唱えながら空に向かって叫び、まるで誰かと戦っているようであった。」


また別の者は言った。


「夜、山頂から雷鳴のような音が聞こえた。まるで一万の軍勢が進軍しているようだった。」


だが真実を知る者は誰もいなかった。



---


その後、王氏は子を連れて村を流れ歩き、物乞いをして暮らした。


村人たちは哀れに思い、時折食べ物や金銭を与えた。



---


宮中にいた程琳は、この話を聞いて長い間何も言わなかった。


やがてため息をついて言った。


「李艾の志はもともと高かった。しかし、その向かうべき道を見失ってしまった。そして、ついにはこのような結末を迎えたのだ。」


そうして涙を流しながら、この出来事を書き記した。



---


大暦十年、霜降の夜の記録。


宮中の灯火は消えかけていた。


風が紙の窓を揺らす。


その音は、遠くから聞こえてくる馬の蹄の音と人々の叫び声のようであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ