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初デート?②

その後、私たちは服を着替えて、祭りが開かれている場所へ向かった。

一歩、賑やかな通りに足を踏み入れると、路面店がずらりと並んでいた。

焼き串の香ばしい匂い、甘いお菓子の香り、賑やかな笑い声。すべてが五感をくすぐる。


「美味しそう!」

「ソフィア!ちょっと待って!」

「アルベルト様、早く!」


私は、思わず焼き串の屋台の前で足を止めた。


「このお肉の串、いただいてもいいですか?」

「はいよ!お嬢ちゃん可愛いから負けてあげる」

「え〜!ありがとうございます!」


おじちゃんにお金を渡し、串を受け取ると、豪快にかぶりつく。


「う〜ん!美味しい!」

「貴方のような方が、出店で売られているようなものを食べるなんて…。肉が欲しいなら、いくらでもシェフに用意させますから」

「アルベルト様、わかってないですね。こういう場所で食べるから美味しいんですよ!」

「でも…」

「もう…!はい!」

「…!!」


私は心配そうなアルベルト様の口元に串を差し出す。彼は少し渋々ながら口にし、もぐもぐと味わう。


「美味しいでしょ?せっかくだし、楽しみましょうよ」


他にも行きたい店はたくさんある。

甘いものも、雑貨も見たい。日が暮れる前に、全部回らなきゃ。

そう思い、人混みに戻ろうとしたとき、後ろから腕を掴まれた。


「…!?」


アルベルト様は、ゆっくりと私の手を取った。


「“私と一緒に”祭りに来たかったんじゃないんですか?」

「…?」

「私のそばから離れないでください。それに、こういう場所は私の方が詳しい」


彼は手を引き、私たちは人混みの中を歩き始める。

頬が自然と緩み、後ろからそっと握られた手を、ぎゅっと握り返す。

彼の表情は見えないけれど、あの日のバラ園のように、

きっと真っ赤に染まっているのだろうかと、容易く想像できた。



店をいくつか回った後、広場に出ると陽気な音楽が流れ、老若男女が手を取り合って踊っていた。

舞踏会のような堅苦しさはなく、自由に笑いながら、ペアがころころ変わっていく。

――私もあの輪に混ざりたい。

王妃としての教育も受け直しているし、見よう見まねなら踊れそうだ。

隣のアルベルト様を見つめると、彼はやれやれと微笑んで視線を合わせる。


「…もしかして、踊りたいとか言わないですよね?」

「そのまさかです!」

「でも、あそこは…」

「いいですから、行きましょう!」


私は彼の手を引き、無理やり広場の中心へ。

賑やかな音楽に合わせ、見よう見まねでステップを踏む。

最初は戸惑っていたアルベルト様も、私の体を支えながら踊り始める。息がぴったり合う感覚に、胸が高鳴る。

その時、音楽が変わり、私の手は次の列にいた幼い少年に変わった。少年は少し照れながらも手を差し出す。


「よろしくお願いします、小さな王子様」


私は少年の手を取り、踊り続ける。

アルベルト様も目の端で私を見ながら、貴婦人の相手をしながら踊っている様子だった。

そんな彼から「ソフィア!」と呼ぶ声が聞こえるも、口パクで「また後で!」と伝え、

次々とペアを変え、夢中で踊った。


やがて音楽が止み、催しが終わったので、人混みの中からアルベルト様を探そうとしたとき、

ふと、ある骨董店に目を奪われた。

そこには、深い黒の宝石がはめられたペンダントが並べられていた。

それが目に入り、無意識に手に取る。

なぜか、胸の奥がときめき、理由もなく惹かれている自分がいた。


「それが気になるのかい?太陽の光に当ててごらん」


店主に言われ、光にかざすと、宝石はラベンダー色に輝く。

その瞬間、気づいた。

――このペンダントの色は、アルベルト様の瞳の色に似ている。


「これ、買います」

「恋人へのプレゼントかい?」

「…どうでしょう。恋人とは、ちょっと違うかもしれません」

「え?」

「知らぬ間に結婚していて、気づいた時には、当たり前のように彼がそばにいたんです。だから、近くにいるのが当たり前で。彼がいない時も、いつも彼を思い浮かべるんです」


私は、彼を頭に思い浮かべながら言葉を続ける。


「ああ、この花、彼がくれたな〜とか、このお肉、彼が美味しいって言ってたなとか。私の日常にずっといるんです。そんな人へのプレゼントです」

「今、嬢ちゃん、幸せで仕方がない顔をしているね」

「はい。本当に、毎日が幸せで、怖いくらいです」

「幸せで怖いって、贅沢な悩みだね。毎日不安に怯えるより、幸せな日々の方がずっといいだろう」


目覚めたばかりの頃は、自分のことさえわからない状況に、不安で胸が押し潰されそうだった。

でも、今は、毎日アルベルト様がそばにいてくれるおかげで、不安は消えつつある。

この生活が恵まれ過ぎて怖いくらいだ。


「だって、去年まではさ、不況が続いて、街のみんなが生きるのに必死だったんだ。花祭りも、もう何年も開けなかった。こんなに幸せな日々を迎えられるなんて、思いもしなかったよ。それも全部、アルベルト様のおかげだ」

「それって、どういう意味でしょうか…」

「ソフィア!!!」


店主の言葉の意図を聞こうとしたその時、後ろから叫ぶ声に、私は慌ててペンダントを隠した。

アルベルト様は息を切らしながら、私を探していた。


「まったく、目を離すと、貴方は、いつも私のそばからいなくなる。さっきも、貴方が楽しそうだから我慢していたけど…」


アルベルト様の言葉は勢いのまま止まることを知らない。


「あの、アルベルト様!」

「ソフィアの美しい手に、他の男が触れるのは嫌なんだ。私ですら、躊躇うのに…」


矢継ぎ早に言葉を続けるアルベルト様に戸惑いながらも、

「アルベルト様!」と制すると、彼はハッとして口を噤んだ。


「す、すまない。今のは、忘れてくれ…」


その様子を見た店主が、「若いっていいねえ」と言いながらニヤニヤと笑っていた。

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