6話 公女の困惑
他方、フィーはスキュラを撫でるハクのその様子に絶望していた。
(え? 何? スキュラ? は?)
自分は平民を召喚したのに、その平民はスキュラ?
(わけがわからない!? 何!? 私は酷い夢でも見てる???)
普通、使い魔といったら、梟や鴉や鼠。いいところでサラマンダーやコカトリスなどの魔獣だ。
ごく一握りの人間がドラゴンやグリフォンといった幻獣を召喚する。
スキュラは神聖ではないが、そのレベルの魔獣だった。
(わ、私の評価どうなるの!? スキュラを召喚できる異世界人を召喚したから上がるの!? それともただ、ハクが評価されるだけ? いや、前者でもハクにおんぶにだっこじゃない!?)
フィーは、きつくハクを睨んだ。
(な、何が一緒に頑張ろうよ!? 置いてきぼりじゃない!)
◇◆◇◆
「ワン! ワン!」
「ぬお!? 舐めるな!」
「はっはっは!」
完全にでかい犬。
「なあお前、小さくなれたりしない?」
「なれますワン!」
すると、犬と魚が混ざったような下半身がみるみるうちに縮んで、人のそれになった。
全裸の巨乳少女の完成だが。
俺は、そっと外套をきせる
「ありがとうございますだワン!」
「後はその喋り方がどうにか」
「これは治りませんワン!」
あーそー。
というか、さっきからフィーの視線が痛い。
「なんか不満?」
「別に! 噓つき!」
噓つきって何のこと?
フィーは走り出していってしまった。
「ご主人様! ご褒美が欲しいワン!」
「えー。コスパ悪い」
◇◆◇◆
俺は、学長室の扉をノックした。
「なんじゃ」
「失礼しまーす」
「気軽に入るでないわ!」
フィーによく似た女性、イェルディス様に怒鳴られる。
「仕方ないじゃないですか。僕には貴方しか頼れる大人がいないんだから」
「子狡い言い方よのぉ。まぁ良い! 何が望みだ? スキュラの召喚者よ」
「やっぱり伝わってますよねぇ。それ」
「当たり前じゃ」
「そのスキュラのミルラに服を買ってやりたいんですが、宛がないんですよね」
「そんなことか」
すると、イェルディス様は金貨を数枚差し出した。
「フィーが貰っておる小遣い程度の金じゃ持ってゆくがよい」
「え!? いいんですか!?」
「スキュラという珍しい使い魔を召喚した褒美と思え!」
「やった! じゃあこれからも何か凄いことしたらお小遣い貰いに来てもいいですか!?」
「あ、厚かましいやつじゃの。よいぞ」
「やったー! 色々頑張りますね!」
モチベーションが上がってきたぞー!
俺は、学園長室を後にした。




