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3話 青白い炎

 授業終わり。


 俺は、生徒たちに囲まれていた。


「ねぇねぇ! 使い魔になるってどんな気分?」


「何処からきたの?」


 等々質問責めだった。


「助けてくれよ。フィー」


「勝手にしなさい! 私は! アンタの主人じゃないんでしょう?」


 白状な。


 フィーは教室を後にした。俺を置いて行って。


「それよりもさ。俺、貴族もいない田舎からやって来たからさ、魔法に興味があるんだけど……。誰か教えてくれない?」


「はは! 平民なのに可笑しな奴!」


「いいわよ!」


 なんてノー天気な奴ら。


◇◆◇◆


 大体わかった。つまり、魂とかいう曖昧なものを正確に認識できる素養を持つものが貴族なんだな?


 俺は、2時間くらい経ってやっとフィーの部屋に戻った。


「遅いお帰りね!」


「興味深いことばかりだからね」


「普通、もっと戸惑うものではなくて?」


「仕方ない。元の世界に戻っても挽き肉になるだけだから」


「挽き肉? 何を言っているの?」


「俺は、馬車に轢かれてこの世界に転生したのさ」


 この世界の人間に分かりやすく伝えるなら。


「私は、馬車に轢かれるような間抜けを召喚したというの!?」


「その通り」


「ふざけないで!」


 彼女は、涙を流した。


「どうして? 折角公爵家の娘に産まれたのに私は!」


「魂の認識が甘いんだろう」


「アンタに何がわかるのよ!」


「わかるさ。魔法のこと」


◇◆◇◆


 俺は、右手から青白い炎を生み出してみた。ガスバーナーの火を調節するように。


「噓……!」


「噓じゃない」


「なんで、平民のアンタが魔法を使えるのよ!」


「君のクラスメートから色々と聞かされてね。そうしたらできるようになった」


「たった2時間で魔法を使えるようになったなんて聞いたことがないわ!」


「できたものは仕方ないだろう?」


「そんな! それじゃあ! 私の16年間は何だったのよ!」


◇◆◇◆


 いやぁ! 他人の絶望を見るのは気持ちがいいね! 進学校に落ちた同級生を思い出したよ!


「ミスターハク! ミスターハクはいますか!」


 壮年の女性の声が聞こえたのはその時。


「ジョゼット先生!?」


 フィーが声を上げた。そして、ドアを開ける。先程の講義をしていた教諭の姿があった。


「どうしたんですか!? こんな時間に! それも私の使い魔に!」


「用があるのは貴女ではありません! ミスヴァイストイフェリン!」


「な!?」


 ジョゼット先生は杖で俺を指差した。


「あ、貴方! 生徒か聞きました。魔法を使えるようになったというのは本当ですか!?」


「えぇ……。多少火を起こせる程度ですが」


 また青白い炎。


「完全燃焼の炎!? それは、高位の炎魔法使いにしか使えないはず!」


 俺の世界じゃ、ちょっと頭のいい小学生でもできる芸当ですが?


「と、とにかく来なさい!」


「来いってどこへ?」


「学園長室です!」


◇◆◇◆


「イェルディス・ヴァイストイフェリン公爵学園長閣下です」


 口上が長い長い。


 イェルディス様はフィーと同じ銀髪金眼の持ち主だった。


「ほう。其方が我が不詳の姪が呼び出した使い魔か」


「はい。そうです」


「聞けば、魔法を行使したそうだが」


「はい」


 俺は、また青白い炎を出した。


「ほう。報告は本当のようじゃ。どれ。ここは1つ試してみるかのぉ」


「い、イェルディス様!?」


 ジョゼット先生が慌てだした。


「何。少し魔力を起こすだけじゃ」


「ひ、ひぃぃぃ!」


「それいくぞ! かまえよ!」


 圧倒的な圧が俺に向けられた。


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