Day 1-8 再び襲撃!
祭壇の間に戻り、学習処理を始めようとすると、またもプラグを抜かれた。
振り返ると、申し訳なさそうな顔をしたフィオナがいた。
「ごめんなさい。本当は続けてほしいだけどまた侵入者なの」
クソっ、よっぽど俺の邪魔をしたいやつがいるらしい。
「今度は何が来たんだ?」
「また勇者パーティよ」
また勇者かよ! 実力差ははっきり見せつけたつもりだが、こんなに早く再侵入してくるとは…アホなのか、対策を立ててきているのか。少なくとも今回はこちらにはマリアのゴーレムがないことはわかっているだろうから、先制攻撃、力押しをしてくる可能性が高いな。新しいメンバーを連れている可能性もあるだろう。
いずれにしても、戦闘が終わったら対策会議だな。これ以上妨害はさせられん。
フィオナとホールの迎撃ポイントに来ると、マリアも含め、他のメンバーも到着していた。
「ゴーレムの修理はまだかかる。マリアは参加させんでいいじゃろう?」
ブロックが言う。そりゃそうだろう。
「土魔法でも使えりゃゴーレムくらい生成できるだろうに。ほんとに使えねぇな。また邪魔されるかもしれねぇし問題ないけどよ」
相変わらずラズヴァンはマリアに厳しい。ヒト族全般に対してもそうなのだろうが。
「土のゴーレムとわしのミスリルゴーレムを比べるとは失礼じゃな」
「土魔法が使えてもヒト族じゃ役にたたねぇってことだな」
そう言って、ラズヴァンが笑う。
マリアは俯いて一言も発さなかった。
責めている場合ではない。相手の状況を聞かねば。
「今回は前回逃げた三人だけか?」
「いえ、また四人です」
マリアが顔を上げる。
「四人? もう新しいメンバーを補充したのか?」
「そうみたいです。でもオートマタとの戦闘には参加していないので、戦闘能力に関しては不明です」
不確定要素が増えるのは良くないな。先手を取ろうとしてくるのは間違いないだろう。
勇者たちの気配が近づく。
マリアは避難させる。
今回は俺がゴーレムの代わりをするしかないだろう。タンクとしてではなく、攻撃するけどね。攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。
扉が開く。10本の指を扉に向ける。
開き切る前にネメシスを起動。マナが指先に圧縮されていく。
弾幕で攻撃させる隙を与えない作戦だ。
が、発射しない! なんで!?
勇者のほうを見ると、先頭にフードを被った華奢な者がいて、身を守るような格好になっていた。
攻撃が来ないことに気づき、背後にいた勇者、剣聖の二人が突っ込んでくる。女神の加護により動作もかなり素早い。それにしても盾にするためだけに一人追加してきたのか…相変わらずクソ野郎たちだな。
「フィオナ、牽制してくれ」
フィオナが風の精霊を召喚し、鋭い風のナイフが切りかかる。勇者と剣聖が風を弾くことに集中し、侵攻が緩む。進歩がないな。
まだ距離はある。こちらにタンクがいない以上、こちらから畳み掛けるのが吉。
「ラズヴァン、魔導カノンだ」
「おう」
ついでに俺ももう一度ネメシスを起動する。
「退避だ!」
転移準備済みか。
俺の10本の指先から、凝縮されたマナの弾丸が一直線に飛び出す。
勇者たちに到達する一瞬前に勇者パーティは姿を消した。
マナの弾丸は壁に突撃するとそのまま世界樹の壁に吸収され、青く大きく光った。すごいマナ量。当たったら勇者たち消滅してたんじゃないの。
盾にされていた新メンバーもすでに逃げていたようだ。またオートマタに殺されてなきゃいいけど。
そんなことよりネメシス出るじゃん。なんだこれ。
やっぱり何か改竄されて隠された仕様があるだろう。
「会議室に行こう。話すべきことがいろいろある」
本当に話したいことがいっぱいあって困っちゃうな。
「そうね、会議室に行かないといけないわね」
うん? 行かないといけないとは言ってないけど?