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第14話 決戦の日曜日。

次の日曜の朝も村の小さな教会で祈りをささげる。

ランドルフは朝からそわそわしている。ちらちらと、並びに座っているマルちゃんを見ている。落ち着け。


キャンパーたちも何人か来ているようだ。

配っているチラシには教会の場所や雑貨屋の場所も書き込んであるから、こうして教会に顔を出す人もいる。

朝市を出している村人は、店を閉めてから来るらしい。


「楽しそうな仕事を始めたな?マル。」

「ええ。お兄様。皆さんいろいろな意見を出してくださって、力もお借りして、良い感じになりました。私一人ではできませんでした。」


マルちゃんの兄上、ヘンリック様とマルちゃんが話しているのが聞こえる。

朝市でクルトと買い出しをしてきた。お昼はクルトがご馳走してくれるらしい。荷物はもちろん、クルトに持たせた。

マルちゃんと兄上は並んでゆっくり歩きだす。ランドルフが少し離れてついてくる。先頭を歩く私とクルトは、何も聞こえない風を装って、聞き耳を立てる。


「良くランドルフと話し合えよ。一方的な婚約解消の申し出では納得はできないぞ?な?」

「……」

「なにか、あったのか?ランドルフと?」

「……」

「少なくともきっかけはあるんだろう?めんどくさがりのお前が、一年も行儀見習いをしたんだから。」

「…それは…これからの自分にとって必要なことだと思ったからです。」


マルちゃんは長く伸ばした髪を、邪魔にならないように高いところで一本に結んでいる。来た頃より、少し日に焼けて、筋肉質になったかな?子供も重いしな。今までより健康的に見える。


「これからのお前に…ランドルフは必要じゃない、ってことか?」

「そんなこと!そんなことは…」

「じゃあ…春の舞踏会で他の人になんか言われた?」

「…社交もできないような娘は、侯爵家でやっていけないだろうと…。ランドルフ様に必要なのは、社交もできて…交友関係の広い女性だと…。子爵家の引きこもりに務まることじゃない、って。」

「……」

「私…私自身が合理的だの、必要じゃないだの…さんざん言ってきたのに、じゃあ私は?って…ランドルフ様に必要じゃないんじゃないかって、そう思って…。だって、私、何もできないし。」

「ねえ、マル、ランドルフに正直に言ってごらん。あいつは聞いてくれるし、多分お前の求めている答えをくれると思うよ。」

「・・・そうでしょうか?」

「ああ。お兄ちゃんの言うことに間違いないさ。」

「まあ。うふふっ。お兄様ったら。」


クルトと顔を見合わせる。


「よく話し合ってくるんだよ?マル。」

私たちの家の前で、兄上に背中を押されて、こくん、とうなずくマルちゃん。もう自分で答えを見つけてるんじゃなのかな?


ランドルフがマルちゃんの後に続いて、森の管理小屋への坂道を登っていく。まあ…大丈夫そうだな。


「ところで、ヘンリック様?まずくないですか?二人で行かせるの。」

「え?」


見送っているヘンリック様にこそっと耳元で話しかける。


「100年の恋も冷めるほどの汚部屋だと思いますよ?お嬢さまの家。」

「あ。」

「まあ、婚約破棄する気なら、早めに現実を知るのも手ですがね?」

「いっ…まっ。」


ヘンリック様が、坂道を登り切った二人に手を伸ばす。聞こえませんよ?


「まあ、いいですかね?なるようにしかなりませんし。」

「……」


ヘンリック様が…二人の後姿に伸ばしかけた手を…ため息とともに下す。


「そうだな。あとは、神のみぞ知る、って感じか?」

「そうですね。でも、あの汚部屋を見てもくじけないほどの愛であってほしいですけどね?」


ニヤッと笑う。


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